ウィーン国立歌劇場2016年日本公演 [オペラ]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は祝日でクリニックは休診です。
今日は祝日なので趣味の話題です。
今日はこちら。
先月から今月に掛けて、
ヨーロッパを代表する歌劇場の1つ、
ウィーン国立歌劇場の来日公演が行われました。
演目はシュトラウスの「ナクソス島のアリアドネ」と、
ワーグナーの「ワルキューレ」、
そしてモーツァルトの「フィガロの結婚」です。
ウィーン国立歌劇場の来日公演は、
これまでに多くの名演を聴かせてくれましたが、
今は圧倒的なスター歌手は不在なので、
最近は物足りなく感じることも多いのが実際です。
今回は結局ムーティ指揮の「フィガロの結婚」が一番良かったのですが、
極め付けの名演出とは言え、
これまで何度も見た同じポネルのセットで、
幾らなんでも凄い骨董品を持ち出して来たな、
という感じがありました。
僕自身もこの舞台は3回は観ています。
ウィーン国立歌劇場のモーツァルトというのは、
何と言っても特別の意味合いがありますし、
演奏は抜群でムーティの目配りも随所に感じられました。
この演目における僕の不満はズボン役のケルビーノで、
正直あまり良くありませんでした。
これは昨年の野田秀樹演出のヘンテコな舞台があったのですが、
ケルビーノをビジュアルは無視でカウンターテナーに歌わせていて、
裏声の美声はとても斬新で、
「これが正統だ」という感じを強く持ちました。
あの役は、普通のズボン役のメゾが歌うと、
どうもアンサンブル的に詰まらなくなるように思います。
それ以外のキャストはまずまずで、
ソロはともかくアンサンブルは極上で堪能しました。
ただ、これは今回は演出を変えて、
少し新鮮な感じを見せて欲しかったと思いました。
「ナクソス島のアリアドネ」は、
如何にもウィーンという演目ですが、
過去にシノーポリ指揮でグルヴェローヴァがツェルビネッタを歌った、
圧倒的な名演があって、
これは実際に聴いて今も耳に焼き付いています。
今回の上演は演出としては一番洒落ていましたし、
悪くない上演ではあったのですが、
前にも一度聴いたことがあるファリーという若手のソプラノは、
ツェルビネッタには如何にも安全運転で、
面白みがなくガッカリしました。
ツェルビネッタには悪魔的な技量がないと、
この作品は駄目だと思います。
今回最も期待していたのは、
ウィーンの来日では初めてのワーグナー「ワルキューレ」で、
演出も映像を使った斬新なもの、
という触れ込みで期待をしていました。
ただ、演出は実際にはかなり安っぽいもので、
おそらくは海外公演用に簡略化されていたのではないかと思いますが、
映像はオープニングにちょこっと、
それからラストの岩山の炎にちょこっと、
という感じでしか使われず、
ぼやけた炎が白い壁に映るだけなので、
プロジェクションマッピングとも言えないような、
ひと昔前の技術で、
とてもとてもガッカリしました。
演奏はともかくとして、
今年新国立で上演された「ワルキューレ」は、
ヨーロッパの歌劇場の演出のもらい物ですが、
非常に考え抜かれた美しく素晴らしいもので、
新国立の舞台機構が良く活かされていました。
それと比較すると今回の上演は、
非常に安っぽくかつ古めかしいもので、
大変ガッカリさせられました。
1幕はまあ悪くなかったのですが、
2幕は同じ平場で天上の場面と下界の場面をそのまま演じるので、
何をやっているのが全く分からないような感じになり、
ブリュンヒルデがジークムントに死の告知をするところも、
2人が同じ平場で触れ合ったりするので、
神秘的な感じがまるでありませんでした。
貧相で本当にガッカリです。
3幕の岩山も白い壁に囲まれたただの部屋で、
そこに馬のオブジェが並んでいるだけのセットです。
ワルキューレ達が、
本物の眼の上に偽物の眼を描いているメイクも、
遠くからでは全く分からないのでどうかと思うセンスのなさですし、
白い背景でそのまま演じて、
最後にそこに炎の映像が映されて終わるだけでは、
これまた安っぽくで元気がまるで出ないのです。
呆れた演出でした。
演奏はさすがに精度の高いものでしたが、
荒々しい迫力のようなものはないので、
ウィーンにワーグナーは矢張りあまり向いていないな、
という感じを持ちました。
歌手はボチボチで、
ブリュンヒルデのニーナ・シュテンメは、
雰囲気はとても良いのですが、
歌は高音が不安定で、
最初のワルキューレの歌からオヤオヤという感じでした。
ジークリンデのラングは良かったと思います。
そんな訳で、
ちょっとモヤモヤした来日公演でした。
なかなか名演は成立はしにくいもののようです。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は祝日でクリニックは休診です。
今日は祝日なので趣味の話題です。
今日はこちら。
先月から今月に掛けて、
ヨーロッパを代表する歌劇場の1つ、
ウィーン国立歌劇場の来日公演が行われました。
演目はシュトラウスの「ナクソス島のアリアドネ」と、
ワーグナーの「ワルキューレ」、
そしてモーツァルトの「フィガロの結婚」です。
ウィーン国立歌劇場の来日公演は、
これまでに多くの名演を聴かせてくれましたが、
今は圧倒的なスター歌手は不在なので、
最近は物足りなく感じることも多いのが実際です。
今回は結局ムーティ指揮の「フィガロの結婚」が一番良かったのですが、
極め付けの名演出とは言え、
これまで何度も見た同じポネルのセットで、
幾らなんでも凄い骨董品を持ち出して来たな、
という感じがありました。
僕自身もこの舞台は3回は観ています。
ウィーン国立歌劇場のモーツァルトというのは、
何と言っても特別の意味合いがありますし、
演奏は抜群でムーティの目配りも随所に感じられました。
この演目における僕の不満はズボン役のケルビーノで、
正直あまり良くありませんでした。
これは昨年の野田秀樹演出のヘンテコな舞台があったのですが、
ケルビーノをビジュアルは無視でカウンターテナーに歌わせていて、
裏声の美声はとても斬新で、
「これが正統だ」という感じを強く持ちました。
あの役は、普通のズボン役のメゾが歌うと、
どうもアンサンブル的に詰まらなくなるように思います。
それ以外のキャストはまずまずで、
ソロはともかくアンサンブルは極上で堪能しました。
ただ、これは今回は演出を変えて、
少し新鮮な感じを見せて欲しかったと思いました。
「ナクソス島のアリアドネ」は、
如何にもウィーンという演目ですが、
過去にシノーポリ指揮でグルヴェローヴァがツェルビネッタを歌った、
圧倒的な名演があって、
これは実際に聴いて今も耳に焼き付いています。
今回の上演は演出としては一番洒落ていましたし、
悪くない上演ではあったのですが、
前にも一度聴いたことがあるファリーという若手のソプラノは、
ツェルビネッタには如何にも安全運転で、
面白みがなくガッカリしました。
ツェルビネッタには悪魔的な技量がないと、
この作品は駄目だと思います。
今回最も期待していたのは、
ウィーンの来日では初めてのワーグナー「ワルキューレ」で、
演出も映像を使った斬新なもの、
という触れ込みで期待をしていました。
ただ、演出は実際にはかなり安っぽいもので、
おそらくは海外公演用に簡略化されていたのではないかと思いますが、
映像はオープニングにちょこっと、
それからラストの岩山の炎にちょこっと、
という感じでしか使われず、
ぼやけた炎が白い壁に映るだけなので、
プロジェクションマッピングとも言えないような、
ひと昔前の技術で、
とてもとてもガッカリしました。
演奏はともかくとして、
今年新国立で上演された「ワルキューレ」は、
ヨーロッパの歌劇場の演出のもらい物ですが、
非常に考え抜かれた美しく素晴らしいもので、
新国立の舞台機構が良く活かされていました。
それと比較すると今回の上演は、
非常に安っぽくかつ古めかしいもので、
大変ガッカリさせられました。
1幕はまあ悪くなかったのですが、
2幕は同じ平場で天上の場面と下界の場面をそのまま演じるので、
何をやっているのが全く分からないような感じになり、
ブリュンヒルデがジークムントに死の告知をするところも、
2人が同じ平場で触れ合ったりするので、
神秘的な感じがまるでありませんでした。
貧相で本当にガッカリです。
3幕の岩山も白い壁に囲まれたただの部屋で、
そこに馬のオブジェが並んでいるだけのセットです。
ワルキューレ達が、
本物の眼の上に偽物の眼を描いているメイクも、
遠くからでは全く分からないのでどうかと思うセンスのなさですし、
白い背景でそのまま演じて、
最後にそこに炎の映像が映されて終わるだけでは、
これまた安っぽくで元気がまるで出ないのです。
呆れた演出でした。
演奏はさすがに精度の高いものでしたが、
荒々しい迫力のようなものはないので、
ウィーンにワーグナーは矢張りあまり向いていないな、
という感じを持ちました。
歌手はボチボチで、
ブリュンヒルデのニーナ・シュテンメは、
雰囲気はとても良いのですが、
歌は高音が不安定で、
最初のワルキューレの歌からオヤオヤという感じでした。
ジークリンデのラングは良かったと思います。
そんな訳で、
ちょっとモヤモヤした来日公演でした。
なかなか名演は成立はしにくいもののようです。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
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- 作者: 石原藤樹
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2016-11-23 09:13
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