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帝王切開とお子さんの肥満との関連について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
カイザーと肥満の関係.jpg
今月のJAMA Pediatrics誌に掲載された、
帝王切開とお子さんの肥満との関連を検証した論文です。

帝王切開は膣からの通常分娩が、
何らかの理由で困難な場合に、
下腹部から子宮の一部を切開して、
そこから赤ちゃんを取り出す手術です。

最も広く施行されている手術ですが、
手術である以上、
母体には血栓症や感染などのリスクがあります。

取り出される赤ちゃんにも、
呼吸障害などのリスクがあることが知られています。

そして、命に関わるような合併症ではないのですが、
以前から通常分娩と帝王切開との違いとして、
複数の報告があるのが、
帝王切開で生まれた子供には肥満が多い、
というちょっと不思議なデータです。

2013年と2014年にメタ解析の論文が発表されていて、
帝王切開での肥満のリスクは経膣分娩の1.22倍、
というようなデータが発表されています。

ただ、元になっている臨床データは比較的少数例のものが殆どで、
母体のBMIなどの影響する因子が、
両者できちんと補正されていないなど、
メタ解析としての信頼性は、
それほど高いものとは言えませんでした。

そこで今回の研究では、アメリカにおける。
お子さんの成長についてのコホート研究の大規模データを活用して、
帝王切開と経膣分娩のお子さんの肥満への影響を解析しています。

15271名のお母さんが出産した、
トータルで22068名のお子さんを対象としていて、
そのうち4921名が帝王切開での出産となっています。
肥満の有無は、
お子さんが9歳から14歳の時と、
20歳から28歳の時に評価されています。

その結果…

観察期間の終了時に肥満であるリスクは、
母体のBMIなどの因子を補正した結果として、
経膣分娩と比較して帝王切開では、
15%(1.06から1.26)有意に高いというデータが得られました。

同一家族内の検索においては、
帝王切開したお子さんは、
経膣分娩の兄弟姉妹と比較して、
64%(1.08から2.48)有意に肥満のリスクが増加していました。

つまり、
帝王切開児が思春期までの肥満のリスクを、
一定レベル上げることは間違いがないようです。

それでは、
何故帝王切開は肥満になりやすいのでしょうか?

現時点で一番有力な仮説は、
腸内細菌叢の発達と関連があるのではないか、
というものです。
経膣分娩では母体の膣の常在菌や、
腸管の常在菌に胎児が接触しつつ分娩されるのに対して、
帝王切開では、
より無菌的に分娩され、
皮膚や外界の菌との接触が主体になるので、
それにより腸内細菌叢の組成が変わり、
肥満のリスクの差になるのでは、
という仮説です。

ただ、何となくありそうな説である反面、
本当に短時間の接触の違いで、
そんな腸内細菌叢に差が生じるのか、
という点はまだ実証はされていないと思います。

いずれにしても、
分娩の形態の違いが、
青年期までの肥満の有無に影響を与えるという知見は興味深く、
今後の研究の推移にも注視したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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