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2型糖尿病の治療法とその違い(2016年のメタ解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
2型糖尿病治療の効果のメタ解析.jpg
今月のAnnals of Internal Medicine誌にウェブ掲載された、
2型糖尿病の治療法とその効果と安全性についての論文です。

現状の2型糖尿病の治療は、
欧米のガイドラインにおいては、
第1選択薬がメトホルミン(商品名メトグルコなど)という薬で、
メトホルミンが使用困難であったり、
充分量を使用しても血糖の低下が充分ではない場合に、
単独もしくは上乗せとして使用される第二選択の薬として、
SU剤、チアゾリジン系の薬剤、インスリン注射などが使用されます。

その後にDPP4阻害剤やGLP1アナログの注射薬、
そして、尿に糖を多く排泄する薬であるSGLT2阻害剤などの新薬が、
続々と発売されていますが、
そのデータはまだ一般臨床においては少なく、
メトホルミンと比較してその効果を云々したような報告は、
まだあまりありません。

そこで今回の研究では、
2015年までの文献を幅広く集めて、
それをまとめて解析する手法で、
新薬を含めた糖尿病治療薬の比較を行なっています。

その結果…

2型糖尿病において、
長期予後で最も問題になるのは、
網膜症などの小血管合併症と、
心血管疾患の発症及びその生命予後です。

ただ、実際には多くの糖尿病の治療の試験は、
短期間の血糖の低下の程度のみで判定されていて、
より長期の有効性や安全性についての知見は、
それほど多くはありません。

今回の検証において、
SU剤との比較ではメトホルミン単独療法は、
より心血管疾患の死亡リスクを低下させていました。
ただ、全死亡のリスクや心血管疾患の発症リスク、
そして、小血管合併症のリスクについては、
その比較には不充分なデータしか存在していませんでした。

HbA1cの低下効果については、
メトホルミン、チアゾリジン、SU剤の単独治療は、
相互の比較で明確な差はなく、
DPP4阻害剤はその効果においてやや劣っていました。
メトホルミンにSGLT2阻害剤やGLP1アナログ、DPP4阻害剤を含む、
他の薬剤を上乗せした治療同士の比較においては、
どれが特に優れている、
という明確な差は認められませんでした。

体重はメトホルミン、DPP4阻害剤、
GLP1アナログ、SGLT2阻害剤では、
減少もしくは維持されていて、
SU剤、チアゾリジン、インスリンでは、
体重は増加していました。

有害事象では、
低血糖はSU剤でより多く、
吐き気や下痢などの消化器系の合併症は、
メトホルミンとGLP1アナログで多く認められました。
SGLT2阻害剤では性器の真菌感染症の増加が認められました。

最近一部のSGLT2阻害剤で、
心血管疾患のリスクの低下が報告されていますが、
まだこうしたメタ解析では、
そうしたデータは反映はされないようです。

現時点での判断としては、
矢張りメトホルミンが第一選択で、
SU剤はその使用は極力限定し、
メトホルミン単独で不充分である場合には、
SGLT2阻害剤とGLP1アナログ、チアゾリジンが、
通常は併用療法として有用性があります。
DPP4阻害剤も上乗せの選択肢としては有用ですが、
血糖降下作用は他の薬剤に劣るので、
概ね欧米では評価は辛いようです。

欧米の2型糖尿病は、
肥満の比率が高く、
インスリン抵抗性が病変の主体である一方、
日本では初期からインスリン分泌が低下する、
肥満のない2型糖尿病が多いので、
メトホルミンよりDPP4阻害剤を第一選択とすることが妥当ではないか、
という見解もあながち誤りとは言い切れません。

基本的には欧米のガイドラインと知見を基本として、
そこに適宜患者さんの特性や、
医療の社会的な状況に合わせて、
修正を加えてゆくのが、
現状では最善であるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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