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乳がんの超音波検診の上乗せ効果(日本の臨床データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
乳がんの超音波検診.jpg
昨年11月のLancet誌にウェブ掲載された、
乳がんの超音波検診の効果についての、
日本発の臨床研究の結果を報告した論文です。

乳がん検診については、
先週も取り上げました。

現状50代から60代の女性においては、
マンモグラフィを1から2年に一度行なうことで、
乳がんによる死亡のリスクを下げる効果が、
精度の高い臨床データにおいて確認されています。

一方40代の女性については、
乳腺の密度が高いと、
マンモグラフィの正診率が下がり、
偽陽性が多くなることより、
マンモグラフィのみの検診では、
充分な効果が得られないことが分かっています。

このため、
マンモグラフィに別の検査を追加したり、
乳腺の密度が高い場合には、
最初から別の方法による検診を行なうなど、
40代での新たな乳がん検診を探求する、
多くの試みが行われています。

しかし、
現時点でそうした試みにより、
乳がんの死亡率が有意に低下した、
というようなデータは存在していません。

日本においても、
マンモグラフィ以外の検診は、
国においては推奨はされていませんが、
多くの医療機関や検診機関において、
超音波検査とマンモグラフィを組み合わせた検診が、
実際には行われています。

それでは、このような超音波検診の併用は、
マンモグラフィ単独の検診と比べて、
どの程度の違いがあるのでしょうか?

今回の研究は日本の複数施設において、
40から49歳の健康な女性トータル72998例を登録し、
くじ引きで2つのグループに分けると、
一方は通常のマンモグラフィを2年間に2回のみ行ない、
もう一方ではマンモグラフィに加えて、
もう2回の乳腺超音波検査を施行して、
乳癌の発見率や検査の精度を比較検証しています。

その結果…

マンモグラフィのみの群の感度、
すなわち癌と診断された患者さんのうち検診で陽性だった比率は、
77.0%であったのに対して、
マンモグラフィと超音波検査の併用では、
91.1%と有意に感度は高くなっていました。

その一方で、
癌でないと診断された対象者のうち、
検診で陰性だった比率である特異度は、
マンモグラフィのみの群で91.4%であったのに対して、
マンモグラフィと超音波検査の併用群では、
87.7%と、超音波検査を施行した方がより低値となっていました。

マンモグラフィのみ群では、
0.50%に当たる184例で癌が見付かったのに対して、
超音波検査併用群では0.32%に当たる117例で癌が発見されていて、
超音波の併用により、
有意に癌は多く発見されていました。
そして、ステージ0と1のより早期の癌が、
マンモグラフィのみ群では52.0%に対して、
超音波検査併用群では71.3%と、
より多く診断されていました。

この試験はまだ短期間の結果のみを見たものなので、
超音波検診の併用によって、
乳癌の死亡が減少するかどうかは、
実証はされていません。

また、こうした検診を複数回繰り返した場合に、
どのような影響があるのかも検証は出来ていません。
こうした検診は、
1回のみ行なった場合と、
それを定期的に複数回繰り返した場合には、
また別個の結果が得られるものだからです。

ただ、検査を行なうことにより検査の感度が上がり、
より多くの早期癌が発見されているという結果からは、
今後の観察により、
乳癌による死亡が減少するという可能性が示唆されます。

そんな訳で今回の結果は、
まだ中間報告に過ぎないものなのですが、
今後の超音波検診の有効性を、
期待させるものとなっています。
今後のデータの蓄積を期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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