お腹の症状は生活習慣の改善で治るのか? [医療のトピック]
こんにちは。
六号通り診療所の石原です。
今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
今年の日本内科学会雑誌に掲載された、
胃食道逆流症(逆流性食道炎)の治療についての論文です。
日本で行われた、
LEGEND研究という大規模臨床試験の、
サブ解析の結果をまとめたものです。
これは結果は何とも言えないところがあるのですが、
一般の臨床に直結するものなので、
大変興味深い論文です。
胃食道逆流症は、
胃酸が食道に逆流することにより、
胸焼けや吐き気、咽喉の刺激による咳、
などの症状が持続するものです。
その治療はプロトンポンプ阻害剤やH2ブロッカーと呼ばれる、
胃酸を抑制する薬を飲むことが、
第一選択の治療で、
薬剤でコントロールが困難な事例や、
患者さんが薬の長期の治療を希望しないケースなどでは、
胃の入口を縮めるような手術治療が考慮されます。
ただ、手術には色々な方法があり、
最近は特殊なリングを嵌めるような、
負担の少ない方法も開発はされていますが、
まだしっかりとした、
手術の治療における位置づけは、
確立されているとは言えません。
この病気が生活習慣と関連していることは、
ほぼ事実と考えられています。
典型的なケースは体重の増加で、
短期間で体重が急激に増加したために、
逆流症の生じた事例は、
診療所でもしばしば経験するところです。
また、夜遅くに食事を摂ることや、
脂っぽい食事を沢山食べること、
お酒はコーヒー、タバコなどが、
誘因となることも知られています。
更にはストレスも要因の1つとされています。
この病気になった方には、
従って、悪い生活習慣を改善しましょう、
というような指導が、
しばしば行われます。
しかし、それではそうした習慣をあらためることにより、
本当に胃食道逆流症が改善するのか、
という点については、
実際には精度の高い臨床研究で、
そうしたことが証明はされていないのです。
つまり、
生活習慣の改善が治療に有効だ、という根拠は、
現時点ではあまりないのです。
今回のデータは、
敢くまでプロトンポンプ阻害剤の有効性を検証する臨床試験において、
付随するものとして取られたものですが、
その点に切り込んだ、
初めての大規模な研究データだ、
というところがポイントです。
元になったLEGEND研究というのは、
胃食道逆流症において、
胸焼けのような症状以外に、
機能性ディスペプシアと言われる、
胃もたれや胃の痛み、膨満感などの症状が、
しばしば見られることに着目し、
ランソプラゾールというプロトンポンプ阻害剤に、
そうした機能性の症状も改善する効果が、
あるかどうかを検証した、
日本の大規模臨床試験です。
対象となり解析された胃食道逆流症の患者さんは、
12653例と大規模なものですが、
コントロールはなく、
全ての患者さんにランソプラゾールを使用して、
4週間の使用の前後で症状の変化を比較したものです。
一般の臨床医が数多く参加しているので、
手法としては厳密さには欠けるのですが、
日本の臨床試験では止むを得ないことなのだと思います。
主解析では、
機能性の症状にも、
ランソプラゾールにより一定の効果が確認されているのですが、
今回のサブ解析は、
この試験において、
生活習慣のリスク因子が治療の前後で問診により確認され、
それが指導により改善したかどうかも聞き取られているので、
そのデータを確認したものです。
全ての事例で薬剤は使用されていますから、
その上でたとえば喫煙者が禁煙し、
それが症状の改善に上乗せ的に有用であったとすれば、
生活習慣の改善が、
病状の改善に有効であった証拠になる訳です。
結論として多くの生活習慣の改善により、
若干ですが有意に、
胃食道逆流症の症状及び機能性ディスペプシアの症状が、
薬剤の上乗せで改善されたことが確認されました。
これは基本的に主治医へのアンケート、
というような性質のもので、
全ての患者さんに同じ指導が行われた、
というような性質のものではありません。
従って、これで必ずしも生活改善が奏功した、
とは言い切れないように思いますが、
臨床医としては、
患者さんの指導に対して根拠となるデータであり、
意義のあるもののように思います。
今後コントロールをおいて、
より生活改善の効果に特化した、
精度の高い臨床試験の実施を期待したいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
六号通り診療所の石原です。
今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
今年の日本内科学会雑誌に掲載された、
胃食道逆流症(逆流性食道炎)の治療についての論文です。
日本で行われた、
LEGEND研究という大規模臨床試験の、
サブ解析の結果をまとめたものです。
これは結果は何とも言えないところがあるのですが、
一般の臨床に直結するものなので、
大変興味深い論文です。
胃食道逆流症は、
胃酸が食道に逆流することにより、
胸焼けや吐き気、咽喉の刺激による咳、
などの症状が持続するものです。
その治療はプロトンポンプ阻害剤やH2ブロッカーと呼ばれる、
胃酸を抑制する薬を飲むことが、
第一選択の治療で、
薬剤でコントロールが困難な事例や、
患者さんが薬の長期の治療を希望しないケースなどでは、
胃の入口を縮めるような手術治療が考慮されます。
ただ、手術には色々な方法があり、
最近は特殊なリングを嵌めるような、
負担の少ない方法も開発はされていますが、
まだしっかりとした、
手術の治療における位置づけは、
確立されているとは言えません。
この病気が生活習慣と関連していることは、
ほぼ事実と考えられています。
典型的なケースは体重の増加で、
短期間で体重が急激に増加したために、
逆流症の生じた事例は、
診療所でもしばしば経験するところです。
また、夜遅くに食事を摂ることや、
脂っぽい食事を沢山食べること、
お酒はコーヒー、タバコなどが、
誘因となることも知られています。
更にはストレスも要因の1つとされています。
この病気になった方には、
従って、悪い生活習慣を改善しましょう、
というような指導が、
しばしば行われます。
しかし、それではそうした習慣をあらためることにより、
本当に胃食道逆流症が改善するのか、
という点については、
実際には精度の高い臨床研究で、
そうしたことが証明はされていないのです。
つまり、
生活習慣の改善が治療に有効だ、という根拠は、
現時点ではあまりないのです。
今回のデータは、
敢くまでプロトンポンプ阻害剤の有効性を検証する臨床試験において、
付随するものとして取られたものですが、
その点に切り込んだ、
初めての大規模な研究データだ、
というところがポイントです。
元になったLEGEND研究というのは、
胃食道逆流症において、
胸焼けのような症状以外に、
機能性ディスペプシアと言われる、
胃もたれや胃の痛み、膨満感などの症状が、
しばしば見られることに着目し、
ランソプラゾールというプロトンポンプ阻害剤に、
そうした機能性の症状も改善する効果が、
あるかどうかを検証した、
日本の大規模臨床試験です。
対象となり解析された胃食道逆流症の患者さんは、
12653例と大規模なものですが、
コントロールはなく、
全ての患者さんにランソプラゾールを使用して、
4週間の使用の前後で症状の変化を比較したものです。
一般の臨床医が数多く参加しているので、
手法としては厳密さには欠けるのですが、
日本の臨床試験では止むを得ないことなのだと思います。
主解析では、
機能性の症状にも、
ランソプラゾールにより一定の効果が確認されているのですが、
今回のサブ解析は、
この試験において、
生活習慣のリスク因子が治療の前後で問診により確認され、
それが指導により改善したかどうかも聞き取られているので、
そのデータを確認したものです。
全ての事例で薬剤は使用されていますから、
その上でたとえば喫煙者が禁煙し、
それが症状の改善に上乗せ的に有用であったとすれば、
生活習慣の改善が、
病状の改善に有効であった証拠になる訳です。
結論として多くの生活習慣の改善により、
若干ですが有意に、
胃食道逆流症の症状及び機能性ディスペプシアの症状が、
薬剤の上乗せで改善されたことが確認されました。
これは基本的に主治医へのアンケート、
というような性質のもので、
全ての患者さんに同じ指導が行われた、
というような性質のものではありません。
従って、これで必ずしも生活改善が奏功した、
とは言い切れないように思いますが、
臨床医としては、
患者さんの指導に対して根拠となるデータであり、
意義のあるもののように思います。
今後コントロールをおいて、
より生活改善の効果に特化した、
精度の高い臨床試験の実施を期待したいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
2015-05-20 07:51
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