クロロキン製剤治療の新型コロナウイルスに対する有効性(患者レジストリ解析) [医療のトピック]
(注意)本記事で紹介している論文は、
2020年6月4日撤回されています。
(2020年6月7日午後5時記載追加)
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
Lancet誌に2020年5月22日にウェブ掲載された、
クロロキンとヒドロキシクロロキンによる、
新型コロナウイルス感染症治療の有効性を、
大規模な患者レジストリ解析という手法で、
世界規模で検証した論文です。
患者レジストリ解析というのは、
疾患により登録した通常臨床のの患者データを、
ある治療の有無などで分けて解析する手法で、
主に厳密な介入試験などの実施が困難な場合に、
その代替として施行されるものです。
新型コロナウイルス感染症は、
まだその予防や治療法が確立しておらず、
急激に悪化して死に至る事例もあるので、
偽薬を使うような介入試験を行うことは困難で、
そのため治療の評価としては、
この患者レジストリ解析が主流になるようです。
クロロキンとヒドロキシクロロキンは抗マラリア薬ですが、
新型コロナウイルスに対する抗ウイルス作用と免疫調整作用が期待され、
単独もしくは免疫調整作用のあるマクロライド系抗菌剤との併用で、
その試験的な使用が世界的に行われています。
ただ、その実際の有効性については、
これまでにも何度か記事にしたように、
あまり明確な有効性が示されていません。
また、特にマクロライドとの併用により、
重篤な不整脈の発生のリスクも危惧されています。
今回の検証では世界6大陸の671の登録施設における。
トータルで96032名の新型コロナウイルス感染症の入院事例を、
患者レジストリ解析の対象としています。
そのうち14888名は治療群で、
その内訳は1868名はクロロキン単独、
3783名はクロロキンとマクロライドの併用、
3016名はヒドロキシクロロキン単独、
6221名はヒドロキシクロロキンとマクロライドの併用です。
クロロキン製剤未使用のコントロール群は81144名です。
性別年齢体格などの因子を補正して解析した結果、
コントロール群の死亡率(9.3%)と比較して、
クロロキン群の死亡率16.4%は1.365倍
(95%CI:1.218から1.531)、
クロロキンとマクロライド併用群の死亡率22.2%は1.368倍
(95%CI:1.273から1.469)、
ヒドロキシクロロキン群の死亡率18.0%は1.335倍
(95%CI:1.223唐1.457)、
ヒドロキシクロロキンとマクロライド併用群の死亡率23.8%は1.447倍
(95%CI:1.368から1.531)、
それぞれ有意に増加していました。
要するに未治療と比較して、
クロロキン製剤を使用する治療を行った方が、
入院中の死亡リスクが高く、
マクロライドとの併用でそのリスクはより増加する、
という結果です。
この原因として想定されるのは、
心臓への影響に伴う致死性の不整脈ですが、
入院中の新規発生の心室性不整脈の発症リスクが、
コントロール群(0.3%)と比較して、
クロロキン群では4.3%で3.561倍
(95%CI:2.760から4.596)、
クロロキンとマクロライド併用群では6.5%で4.011倍
(95%CI:3.344唐4.812)、
ヒドロキシクロロキン群では6.1%で2.369倍
(95%CI:1.935から2.900)、
ヒドロキシクロロキンとマクロライド併用群では8.1%で5.106倍
(95%CI:4.106から5.983)、
それぞれ有意に増加していました。
これをもって、
単純に不整脈の発症と死亡リスクの増加を結び付けることは出来ませんが、
いずれにしてもクロロキン製剤を新型コロナウイルス感染症に使用する試みは、
今後余程肯定的なデータが出ない限り、
今回の発表をもってほぼ完全に治療の選択肢からは除外された、
と言って間違いはないようです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
Lancet誌に2020年5月22日にウェブ掲載された、
クロロキンとヒドロキシクロロキンによる、
新型コロナウイルス感染症治療の有効性を、
大規模な患者レジストリ解析という手法で、
世界規模で検証した論文です。
患者レジストリ解析というのは、
疾患により登録した通常臨床のの患者データを、
ある治療の有無などで分けて解析する手法で、
主に厳密な介入試験などの実施が困難な場合に、
その代替として施行されるものです。
新型コロナウイルス感染症は、
まだその予防や治療法が確立しておらず、
急激に悪化して死に至る事例もあるので、
偽薬を使うような介入試験を行うことは困難で、
そのため治療の評価としては、
この患者レジストリ解析が主流になるようです。
クロロキンとヒドロキシクロロキンは抗マラリア薬ですが、
新型コロナウイルスに対する抗ウイルス作用と免疫調整作用が期待され、
単独もしくは免疫調整作用のあるマクロライド系抗菌剤との併用で、
その試験的な使用が世界的に行われています。
ただ、その実際の有効性については、
これまでにも何度か記事にしたように、
あまり明確な有効性が示されていません。
また、特にマクロライドとの併用により、
重篤な不整脈の発生のリスクも危惧されています。
今回の検証では世界6大陸の671の登録施設における。
トータルで96032名の新型コロナウイルス感染症の入院事例を、
患者レジストリ解析の対象としています。
そのうち14888名は治療群で、
その内訳は1868名はクロロキン単独、
3783名はクロロキンとマクロライドの併用、
3016名はヒドロキシクロロキン単独、
6221名はヒドロキシクロロキンとマクロライドの併用です。
クロロキン製剤未使用のコントロール群は81144名です。
性別年齢体格などの因子を補正して解析した結果、
コントロール群の死亡率(9.3%)と比較して、
クロロキン群の死亡率16.4%は1.365倍
(95%CI:1.218から1.531)、
クロロキンとマクロライド併用群の死亡率22.2%は1.368倍
(95%CI:1.273から1.469)、
ヒドロキシクロロキン群の死亡率18.0%は1.335倍
(95%CI:1.223唐1.457)、
ヒドロキシクロロキンとマクロライド併用群の死亡率23.8%は1.447倍
(95%CI:1.368から1.531)、
それぞれ有意に増加していました。
要するに未治療と比較して、
クロロキン製剤を使用する治療を行った方が、
入院中の死亡リスクが高く、
マクロライドとの併用でそのリスクはより増加する、
という結果です。
この原因として想定されるのは、
心臓への影響に伴う致死性の不整脈ですが、
入院中の新規発生の心室性不整脈の発症リスクが、
コントロール群(0.3%)と比較して、
クロロキン群では4.3%で3.561倍
(95%CI:2.760から4.596)、
クロロキンとマクロライド併用群では6.5%で4.011倍
(95%CI:3.344唐4.812)、
ヒドロキシクロロキン群では6.1%で2.369倍
(95%CI:1.935から2.900)、
ヒドロキシクロロキンとマクロライド併用群では8.1%で5.106倍
(95%CI:4.106から5.983)、
それぞれ有意に増加していました。
これをもって、
単純に不整脈の発症と死亡リスクの増加を結び付けることは出来ませんが、
いずれにしてもクロロキン製剤を新型コロナウイルス感染症に使用する試みは、
今後余程肯定的なデータが出ない限り、
今回の発表をもってほぼ完全に治療の選択肢からは除外された、
と言って間違いはないようです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
2020-05-26 05:52
nice!(4)
コメント(1)
このブログをよく読ませて頂いている者です。
門外漢ですが、日本の新型コロナウィルス感染がかなり抑えられている要因の一つと思われるものに気付きました。新型コロナウィルス関連ということでコメントさせて頂きます。
発熱から4日間の自宅待機という、日本の隔離対策で、発症者からの二次感染が、隔離しない場合の半分程に低下したということです。
ここの最近の記事からは、二次感染が起こるのは、発症の2日前から7日後の間で、感染ピークは症状出現の0.7日前、二次感染の44%は症状出現前に起こると想定できます。発症から4日過ぎれば、感染ピークから離れて感染能力がかなり(ピークの~1/4?)低下した状態になるようなので、発熱から最低4日間自宅待機させると、二次感染は隔離しない場合の半分近くに低下すると推定されます。
さらに、診察が発熱5日目以降になるため、ウイルスの感染能力は相当低下しているか、ほぼ無くなっていて、診察行為での二次感染も低くなると予想されます。
発熱から4日間の自宅待機という隔離は、広範囲なPCR検査と隔離に比較すると、発症者に関しては、ほぼ同等の抑制効果があったと思われます。
ただし、10万人当たりの死亡者数は、韓国を上回って、東アジアの主な国のなかでトップになっています。超過死亡を含めると死亡率が倍以上になるとの見方もあり、発熱から4日間の自宅待機という、日本の放置隔離対策の当然の結果と言えるでしょう。
by gions (2020-05-26 14:10)