体脂肪と慢性疼痛との関連 [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療と産業医面談で都内を廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
BMJ系列のRegional Anesthesia & Pain Medicine誌に、
2024年9月10日付で掲載された、
身体の脂肪が痛みに与える影響についての論文です。
腰痛や膝の痛みなどの慢性の身体の痛みは、
体脂肪の量と関連のあることが報告されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30021590/
肥満があるとその体重の負荷で、
腰や膝に負担の掛かることは想定出来ますから、
これは体重増加の影響と考えることは出来ます。
ただ、体重にはあまり関連のなさそうな部位の痛みも、
体脂肪量と関連があるとする報告もあるので、
単純に体重の影響とは言い切れません。
また体脂肪には内臓脂肪と皮下脂肪とがあり、
たとえば動脈硬化や糖尿病などのリスクは、
皮下脂肪より内臓脂肪の影響をより受ける、
という報告もあります。
それでは、内臓脂肪と皮下脂肪が慢性疼痛に与える影響には、
何か違いがあるのでしょうか?
これまで、あまりそうした事項を検証したデータはありませんでした。
そこで今回の研究では、
大規模な遺伝情報を含む医療データとして有名な、
イギリスのUKバイオバンクのデータを活用して、
腹部MRI検査で計測した、
腹部の皮下脂肪量と内臓脂肪量と、
慢性疼痛との関連を比較検証しています。
その結果、
男女とも内臓脂肪、皮下脂肪、
皮下脂肪に対する内臓脂肪の比率と、
身体での疼痛部位との間には、
有意な関連が認められました。
女性においては、
内臓脂肪量が1標準偏差増える毎に、
2.04倍(95%CI:1.85から2.26)、
皮下脂肪量が1標準偏差増える毎に、
1.60倍(95%CI:1.50から1.70)、
皮下脂肪に対する内臓脂肪の比率が1標準偏差増える毎に、
1.60倍(95%CI:1.37から1.87)、
疼痛部位の数がそれぞれ有意に増加していました。
同様に男性においては、
内臓脂肪量が1標準偏差増える毎に、
1.34倍(95%CI:1.26から1.42)、
皮下脂肪量が1標準偏差増える毎に、
1.39倍(95%CI:1.29から1.49)、
皮下脂肪に対する内臓脂肪の比率が1標準偏差増える毎に、
1.13倍(95%CI:1.07から1.20)、
疼痛部位の数が有意に増加していました。
つまり、内臓脂肪量も皮下脂肪量も、
いずれも多いほど慢性疼痛が悪化していて、
特に女性でその傾向が強かった、
という結果です。
それでは、
何故体脂肪と慢性疼痛との間に、
こうした関連があるのでしょうか?
上記文献の記載では、
脂肪細胞由来のサイトカインなどの炎症性物質が、
慢性疼痛の誘因となっており、
それが女性ホルモンの影響を受けることなどが、
仮説として提唱されています。
ただ、それはまだ仮説に過ぎませんし、
今回のデータは痛みの重症度ではなく、
痛みの場所の数が指標となっている点には注意が必要ですが、
痛みと脂肪が関連しているという知見は非常に興味深く、
今後より実証的な検証に期待をしたいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療と産業医面談で都内を廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
BMJ系列のRegional Anesthesia & Pain Medicine誌に、
2024年9月10日付で掲載された、
身体の脂肪が痛みに与える影響についての論文です。
腰痛や膝の痛みなどの慢性の身体の痛みは、
体脂肪の量と関連のあることが報告されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30021590/
肥満があるとその体重の負荷で、
腰や膝に負担の掛かることは想定出来ますから、
これは体重増加の影響と考えることは出来ます。
ただ、体重にはあまり関連のなさそうな部位の痛みも、
体脂肪量と関連があるとする報告もあるので、
単純に体重の影響とは言い切れません。
また体脂肪には内臓脂肪と皮下脂肪とがあり、
たとえば動脈硬化や糖尿病などのリスクは、
皮下脂肪より内臓脂肪の影響をより受ける、
という報告もあります。
それでは、内臓脂肪と皮下脂肪が慢性疼痛に与える影響には、
何か違いがあるのでしょうか?
これまで、あまりそうした事項を検証したデータはありませんでした。
そこで今回の研究では、
大規模な遺伝情報を含む医療データとして有名な、
イギリスのUKバイオバンクのデータを活用して、
腹部MRI検査で計測した、
腹部の皮下脂肪量と内臓脂肪量と、
慢性疼痛との関連を比較検証しています。
その結果、
男女とも内臓脂肪、皮下脂肪、
皮下脂肪に対する内臓脂肪の比率と、
身体での疼痛部位との間には、
有意な関連が認められました。
女性においては、
内臓脂肪量が1標準偏差増える毎に、
2.04倍(95%CI:1.85から2.26)、
皮下脂肪量が1標準偏差増える毎に、
1.60倍(95%CI:1.50から1.70)、
皮下脂肪に対する内臓脂肪の比率が1標準偏差増える毎に、
1.60倍(95%CI:1.37から1.87)、
疼痛部位の数がそれぞれ有意に増加していました。
同様に男性においては、
内臓脂肪量が1標準偏差増える毎に、
1.34倍(95%CI:1.26から1.42)、
皮下脂肪量が1標準偏差増える毎に、
1.39倍(95%CI:1.29から1.49)、
皮下脂肪に対する内臓脂肪の比率が1標準偏差増える毎に、
1.13倍(95%CI:1.07から1.20)、
疼痛部位の数が有意に増加していました。
つまり、内臓脂肪量も皮下脂肪量も、
いずれも多いほど慢性疼痛が悪化していて、
特に女性でその傾向が強かった、
という結果です。
それでは、
何故体脂肪と慢性疼痛との間に、
こうした関連があるのでしょうか?
上記文献の記載では、
脂肪細胞由来のサイトカインなどの炎症性物質が、
慢性疼痛の誘因となっており、
それが女性ホルモンの影響を受けることなどが、
仮説として提唱されています。
ただ、それはまだ仮説に過ぎませんし、
今回のデータは痛みの重症度ではなく、
痛みの場所の数が指標となっている点には注意が必要ですが、
痛みと脂肪が関連しているという知見は非常に興味深く、
今後より実証的な検証に期待をしたいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
2024-09-27 09:58
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