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降圧剤の国際的効果比較 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

昨日から色々あって夜の更新になりました。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
降圧剤の第一選択薬は?.jpg
2019年のLancet誌に掲載された、
降圧剤の第一選択薬についての論文です。

アメリカの現行のガイドラインにおいては、
高血圧の薬物治療の第一選択薬は、
サイアザイド系利尿剤、ACE阻害剤、アルドステロン受容体拮抗薬、
そしてカルシウム拮抗薬のいずれかで、
そこに特に順番はもうけられていません。
ヨーロッパの主要なガイドラインにおいては、
そこにβ遮断剤が追加されています。

それでは、実際にこれらの薬の中で、
どの薬が最も患者さんへの有効性が高いのでしょうか?

今回の検証は、
世界規模で健康保険や医療データベースのデータを集積し、
トータルで490万人という大規模な高血圧患者のデータから、
急性心筋梗塞、心不全、脳卒中の予防効果に絞って、
その有効性を比較検証したものです。

その結果、
現在最も広く使用されている降圧剤は、
ACE阻害剤でしたが、
病気の予防効果において最も優れていたのは、
サイアザイド系の利尿剤でした。

副作用などの安全性においても、
利尿剤は脱水や高尿酸血症など、
有害事象が多いと考えられがちですが、
今回の大規模データにおいては、
最も安全性に優れていたのも利尿剤でした。

どうしても臨床医は、
より新しい薬を第一選択にしてしまいがちですが、
その使用法には検証が必要であるものの、
降圧剤として最も優れているのは、
利尿剤であるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。


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興福寺南円堂(リニューアル) [仏像]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診ですが、
レセプト作業が追い込みで間に合わないので、
泊まり込みでクリニックにいます。
泣きそうです。

日曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
南円堂.jpg
これは興福寺の南円堂です。

先日奈良に行きましたが、
その主な目的な興福寺の南円堂でした。

興福寺には南円堂と北円堂という2つの対象的なお堂があり、
北円堂は毎年春と秋の一定期間開扉されていますが、
南円堂は1年に1回10月17日にしか開扉されません。

そのために南円堂は一度は拝観したいと思いながら、
ようやくそれが叶ったのは6年前で、
この時は特別に何か名目がついて、
一定期間開扉がされたのです。

とてもとても感銘を受けました。

今回はそれ以来のもので、
10月17日から11月上旬まで開扉されました。

北円堂は運慶工房による仏像が有名ですが、
南円堂は運慶の父の康慶が主導した諸仏で有名です。

本尊は不空羂索観音の巨像で、
それを取り巻くように、
四天王像と法相六祖像という、
名僧6人の座像が安置されています。

これは鎌倉時代に作られた時からの配置です。

ただ、法相六祖像に関しては、
かなり以前に国宝館に移されて展示され、
前回6年前の御開帳の時も、
既にお堂の中にはいらっしゃいませんでした。
それが今回はお堂の中に再び安置されているのです。
感涙ものですね。

また、四天王像については、
以前から運慶工房によると思われる像が安置されていて、
おそらく四天王像の最高傑作と思われる名像ですが、
その像が再興された中金堂に移り、
以前は中金堂にあった像が、
移動する形でこちらに移されています。
これが平成29年以降のことのようです。

これは最近の研究により、
中金堂像がもともとの南円堂像であったことが、
ほぼ確認されたためで、
おそらくは100年以上ぶりに、
南円堂の諸像は元の配置に戻った、
ということになる訳です。

その成果は素晴らしく、
6年前を超える興奮と感銘を、
今回は受けることになったのです。

興福寺は、
せっかく森の中に古堂が佇むという風情が良かったのに、
どんどん樹を切り倒して、
真新しい建築をドカドカ建てるという、
薬師寺方式は気に入りませんが、
仏像の見せ方については、
LEDによるライティングや仏像の配置の歴史を踏まえた変更、
なるべく間近で拝観出来るような工夫など、
仏像マニアの心をつかむ発想と実行力が素晴らしく、
これからも幾度も足を運びたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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「ドクター・ホフマンのサナトリウム」(ケラ新作) [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後は石原が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ドクター・ホフマンのサナトリウム.jpg
神奈川芸術劇場のプロデュース公演として、
ケラさんの新作が上演されています。

これはカフカが療養生活をして亡くなったオーストリア(多分)で、
カフカの未発表の最後の長編が記されたノートが発見され、
そのノートを巡るドタバタと、
その作品自体の物語が並行して描かれて、
現代の2人の男がカフカの時代に迷い込むことによって、
2つの時代が繋がります。

カフカ自身も登場し、
最後の長編の内容が自伝的なものでもあるので、
カフカの人生自体もそこに重ねあわされるという重層的な趣向です。

15分の休憩を挟んで3時間半と、
例によって長大なお芝居ですが、
今回はお話自体は基本的に分かり易くシンプルで、
幻想的で凝りに凝ったビジュアルと、
語り手的役割の渡辺いっけいさんと大倉孝二さんの、
軽快な掛け合いの魅力も相まって、
それほど時間を感じることなく楽しく観ることが出来ました。

振付の小野寺修二さんは、
僕はあまり好みではないのですが、
今回はオープニングなど、
かなり意識的に寺山修司の世界を再現していて、
懐かしくもありましたし、
その最新の舞台技術の粋を集めて、
現代の天井桟敷を再現した完成度の高さには、
素直に拍手を送りたい気分になりました。
寺山芝居のファンの方は必見です。

ただ、緊張感が濃密で純度の高いのは最初だけで、
次第に雰囲気はまったりした感じのものになります。
後半は同じことをやっていても、
明らかに緊張感はなく、
結局何がやりたかったのかしら、
とちょっと疑問に感じる点はありました。

また、意外にお話はあまりカフカ的ではありません。

たとえば、
この作品のカフカを、
チェーホフやトルストイに置き換えても、
そのまま成立してしまいそうな感じがあります。

以前ケラさんには「世田谷カフカ」という作品があり、
カフカの「失踪者」や「城」を素材にアレンジした、
カフカダイジェスト的なお芝居でしたが、
こちらの方がよりカフカ的なお芝居になっていました。

それが意図的なものだったのかどうかは分かりませんが、
ケラさんの作品の中でも今回はあまりシュールではなく、
重層的な構造の中に、
死と生の問題を深く読み解こうとするような、
真面目なお芝居になっていたように思います。

そんな訳で「カフカの発見されなかった長編」というには、
ちょっと方向性が違っていたかな、というようには思いますが、
ともかくその技術的な完成度は素晴らしく、
矢張りケラさんの今の舞台は、
現在日本の演劇作品の1つの頂点と言って、
過言ではないもののように思います。

個人的にはちょっと物足りない、
でも凄い芝居です。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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新規骨粗鬆症治療薬オダナカチブは何故開発中止されたのか? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
保育園の健診などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
オダナカチブ.jpg
2019年のLancet Diabetes & Endocrinology誌に掲載された、
新規骨粗鬆症治療薬の臨床試験結果をまとめた論文です。

骨粗鬆症の治療薬は、
最近長足の進歩を遂げていますが、
癌のリスク上昇の可能性や、
非定型的骨折や顎骨壊死と言った有害事象、
長期の安全性が未確立と言った問題はあり、
安全で有効と太鼓判を押せるような薬はないのが実際です。

端的に言えば、
骨量の減少に結び付く骨吸収を、
強力に抑える薬はあるのですが、
健康な骨を増やす、
と言えるような薬はないのが実際なのです。

そのため、現在でも多くの薬が研究され、
開発される途上にあります。

今日ご紹介するオダナカチブ(odanacatib)も、
そうした新薬候補の1つです。

オダナカチブは、
カテプシンK阻害剤と呼ばれる薬です。

カテプシンKというのは、
骨を壊す働きを持つ破骨細胞で産生されている酵素で、
骨の構成成分の1つである1型コラーゲンを、
強力に分解するような作用を持っています。

要するに骨を溶かす酵素です。

この酵素を阻害することにより、
破骨細胞の骨を壊す働きが弱まり、
結果として事粗鬆症の進行が予防され、
骨の量が増加する、
と考えられます。
この仕組みはこれまでの骨粗鬆症治療薬とは異なり、
破骨細胞自体を攻撃するものではないので、
骨吸収は抑えても、
骨の健康な新陳代謝は妨害せず、
骨形成にも影響を与えないと想定されました。

もしそれが本当であれば、
これまでにない画期的な骨粗鬆症治療薬となる筈です。

初めてのカテプシンK阻害剤であるオダナカチブの開発は進められ、
臨床試験が開始されました。

ところが…

2016年にオダカカチブの臨床開発は中止されました。

行なわれていた第3相臨床試験において、
骨折予防効果と骨量増加の効果は認められたものの、
偽薬と比較して脳卒中の発症率が、
有意に増加していることがその理由とされました。

臨床試験自体はそのまま継続され、
その結果をまとめた論文が今日ご紹介するものです。

臨床試験は世界40か国の388の医療機関において、
閉経後5年以上を経過した65歳以上の女性で、
椎骨の骨折の既往があるか骨量が減少している16071名で、
対象者にも施行者にも分からないように、
くじ引きで2つのグループに分けると、
一方はオダナカチブを1週間に一度経口で50mg使用し、
もう一方は偽薬を使用して、
延長期間を含め中間値で47.6か月の経過観察を行なっています。

その結果、
偽薬と比較してオダナカチブ投与群では、
椎骨の骨折のリスクが54%(95%CI: 0.40から0.53)、
椎骨以外の骨折のリスクも23%(95%CI: 0.68から0.87)、
大腿骨頸部骨折のリスクが47%(95%CI: 0.39から0.71)、
それぞれ有意に低下していました。

その一方で脳卒中のリスクは、
32%(95%CI:1.02から1.70)有意に増加していました。

何故オダナカチブで脳卒中が増加したのか、
そのメカニズムは不明ですが、
コラーゲンは血管においても重要な働きがあり、
それが影響した可能性は否定出来ません。

確かに骨折予防効果は認められていますが、
現行使用されている複数の薬剤を、
明確に凌駕しているというほどではなく、
有害事象が否定出来ないということであれば、
この薬の臨床使用が中止されたことは、
当然の結果であったようにも思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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妊娠中のアセトアミノフェンの使用と胎児への影響 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
アセトアミノフェンの妊娠中の影響.jpg
2019年のJAMA Psychiatry誌に掲載された、
現状妊娠中に最も安全に使用可能と考えられている、
解熱鎮痛剤のアセトアミノフェンに、
胎児の自閉症などの発達障害を増加させるリスクがあるのでは、
という気になる報告です。

アセトアミノフェンは、
妊娠中の発熱や疼痛の治療薬として、
世界的に広く使用されている薬剤です。

その安全性はほぼ確立されていると考えられていましたが、
最近幾つかの疫学データにおいて、
妊娠中のアセトアミノフェンの使用と、
自閉症スペクトラム障害や注意欠陥多動性障害(ADHD)との関連が、
指摘されて問題となっています。

アセトアミノフェンは胎盤を通過することが確認されていて、
胎児への神経毒性や、
胎児の男性ホルモン産生を阻害するような働きが、
実験的にはあることも報告されています。

ただ、これまでの疫学データにおいては、
単純に妊娠されている女性への聞き取りで、
アセトアミノフェンの使用が推測されているだけなので、
実際に胎児がどの程度薬剤の影響を受けているのかについては、
確実であるとは言えませんでした。

今回の研究はアメリカにおいて、
996名の母親と子供のペアを対象とし、
出産時の臍帯血における、
アセトアミノフェンの代謝物の濃度と、
その後の自閉症やADHDの発症リスクとの関連を検証しています。

その結果、
アセトアミノフェンの臍帯血濃度を3分割すると、
最も少ない濃度と比較して、
最も多い濃度ではADHDと診断されるリスクは、
2.86倍(95%CI: 1.77から4.67)有意に増加していました。
自閉症スペクトラム障害についても、
同様に3.62倍(95%CI: 1.62から8.60)、
アセトアミノフェンのが代謝物が最も多い群で有意に増加していました。
2つの病気とも、
アセトアミノフェンの曝露量が多いほど、
そのリスクが増加するという関係が見られたのです。

今回のデータは薬剤の曝露量を、
臍帯血で確認している分信頼性の高いもので、
今後妊娠中のアセトアミノフェンの使用については、
その量を含め適切な使用のガイドライン作りが急務であるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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