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新型コロナウイルス感染症の再感染率(イタリアの疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療には廻ってから、
終日レセプト作業の予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナの再感染率.jpg
JAMA Internal Medicine誌に、
2021年5月28日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症の再感染率についてのレターです。

新型コロナウイルス感染症は、
一度自然感染しても、
再感染自体はあり得るという事実は、
ほぼ確立したものと言って良いと思います。

つまり、一生においては何度も感染します。

ただ、一度感染してしばらくの間は、
再感染はしにくいということも事実です。

それでは、一度新型コロナウイルスに感染した人が、
その後1年以内くらいの間に、
再感染する率はどのくらいでしょうか?

これは色々な報告があって、
必ずしも一定はしていません。

以前ご紹介したアメリカの海兵隊の新兵のデータと、
デンマークの一般住民の大規模疫学データにおいては、
感染後3か月以降で、
概ね2割が再感染していて、
再感染予防率が8割程度と算出されています。
ただ、その大多数は軽症か無症状です。

今回のデータはイタリアのロンバルディア州において、
2020年の第一波の流行期に施行された、
122007件のRT-PCR検査の結果を元に、
経過の追える事例を解析したものです。

一度感染してから90日以降で、
RT-PCR検査が再び陽性となった事例を、
再感染として定義しています。

その結果、
平均で280日の観察期間において、
1579名の登録時の陽性事例のうち、
再感染は5例に認められ、
再感染率は0.31%(95%CI:0.03から0.58)と算出されました。
その多くは医療施設関連で、
入院患者が1例、2例は医療機関勤務、1例は毎週輸血をしている患者で、
1例は老人ホーム入所の退職者でした。

登録時は陰性であった13496名のうち、
感染したのは3.9%に当たる528名でした。
1日人口10万人当たり15.1件の新規感染に対して、
再感染は1.0件で、
これを年齢、性別、人種などの因子で補正した結果、
一度感染することにより再感染は、
93%(95%CI:0.06から0.08)予防されるという数値が得られました。

93%という再感染予防効果は、
ほぼmRNAワクチンの有症状感染の予防効果と一致しています。

これはデンマークやアメリカ海兵隊の、
80%という結果とはかなり乖離がありますが、
おそらく無症状感染があまり捕捉はされていないという点や、
年齢による違いが解析されていない点、
変異株が殆ど見つかっていない時期の解析である点、
などが影響している可能性があります。

これまでのデータを見る限り、
無症状を含めての再感染予防効果は80%程度で、
変異株の性質によっては、
より再感染率は増加する可能性がある、
というように理解しておいた方が良さそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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ファイザー・ビオンテック社ワクチンの12から15歳への有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナワクチンの12から15歳での有効性.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2021年5月27日ウェブ掲載された、
12歳から15歳の年齢における、
ファイザー・ビオンテック社の新型コロナワクチンの、
有効性と安全性についての臨床試験結果をまとめた論文です。

ファイザー・ビオンテック社の新型コロナワクチンは、
世界的に16歳以上の年齢に限定して接種が開始され、
アメリカにおいては2021年5月10日、
その適応が12歳以上に拡大されました。
その結果を受けて6月1日より、
日本でも接種対象が12歳以上と変更されています。

その決定の元になっているのが今回の臨床試験結果です。

アメリカにおいて、
2260名の12から15歳の年齢の対象者を、
くじ引きで2つの群に分けると、
一方は通常通り3週間間隔でワクチンを接種し、
もう一方は偽ワクチンを接種して、
主に2回目の接種後の中和抗体の上昇を、
16から25歳の年齢のこれまでのデータと比較しています。

ワクチン接種後の副反応には、
12から15歳と16から25歳との間で明確な差はなく、
中和抗体の上昇(幾何平均抗体価という指標で比較)は、
16から25歳より12から15歳の方が、
1.76倍(95%CI: 1.47から2.10)有意に増加していました。
2回接種から7日以降において、
偽ワクチン群では16名が新型コロナウイルスに感染し、
実ワクチン群では感染者はいなかったので、
ワクチンの有効性は100%と算出されましたが、
これは感染者数も少なく、期間も短いことから、
参考値以上の意味はないと思います。

このように、迅速さ重視で、
有効性などについては今後の検証も必要ですが、
今回のデータを元にアメリカでは12歳以上の接種が承認され、
日本でも迅速な変更がなされた、
というのが現在の状況なのです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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新型コロナウイルス感染が通常医療に与える影響(デンマークの疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は終日レセプト作業の予定です。
新型コロナワクチンの2回目接種もあります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
COVID-19流行と他疾患死亡リスク.jpg
British Medical Journal誌に、
2021年5月24日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症の流行が、
他の病気の診療やその予後に与える影響についての論文です。

新型コロナウイルス感染症が急激に感染拡大に至ると、
病院の病床が不足して、
新型コロナウイルス感染症の患者のみならず、
本来は入院出来る筈の他の病気の患者が、
入院出来ない事態になる、
というようなことが良く言われます。

たとえば、急に脳梗塞で倒れた患者さんが、
救急車を要請しても、
コロナの患者で病床は一杯で、
受け入れてくれる病院が見付からないので、
適切な治療を受けられずに死亡してしまう、
というようなケースです。

特に問題になるのは、
知的障碍のある方や認知症の高齢者などの急変のケースで、
こうした方は通常の時期でさえ、
入院や救急診療を断られるケースが多く、
それがコロナの流行時期ともなると尚更で、
僕が嘱託医としている老人ホームでも、
普段は患者さんを受け入れてくれる病院の多くが、
「一切受け入れは出来ません」と、
最初から言われてしまうケースが多くありました。

このように、
コロナ禍の医療体制に多くの問題が生じることは事実ですが、
その一方で、
本来必要性の高くない医療行為や入院が、
自然と制限されるために、
むしろ多くの病気の罹患率は減る、
というような現象もまた報告されています。

実際海外でのロックダウンのような状況では、
不必要に出歩くことがなくなり、
感染対策にも注意をするので、
コロナ以外の感染症は激減しますし、
脳卒中や喘息の急性増悪、心筋梗塞などの急性疾患も、
風邪などの感染症をきっかけとして起こることが多いので、
そうした病気の発生も減少する可能性があります。

ロックダウンのような人流を制限する政策は、
それが長期化すると経済的にも心理的にも、
多くの悪影響をもたらし、
従来ではそれほどなかった病気の増加などにも繋がりますが、
短期間であって、経済的な補償なども適切に行われれば、
むしろ公衆衛生上メリットとなる可能性もある訳です。

このように、
新型コロナウイルス感染症の流行や、
それに対するロックダウンなどの政策の、
トータルな医療や健康に与える影響は、
それほど単純なものではありません。

今回のデータは国民総背番号制の敷かれているデンマークのもので、
デンマークでは2020年3月11日から4月15日までに最初のロックダウンが、
12月16日以降で2回目のロックダウンが施行されています。
このロックダウンとそれに挟まれた時期の、
コロナと他の疾患の入院件数の推移と、
その予後についてを疾患別に比較検証しています。

その結果、
コロナ感染拡大以前の時期では、
1週間人口10万人当たり204.1人が入院していたのに対して、
最初のロックダウン施行後には、
これが1週間人口10万人当たり142.8人と、
70%(95%CI:0.66から0.74)に減少し、
ロックダウン解除後は徐々に元の水準に戻りましたが、
2度目のロックダウン後には、
1週間人口10万人当たり158.3人と、
78%(95%CI:0.73から0.82)に再び低下しています。

つまり、トータルな入院数はロックダウンで低下し、
ロックダウン後に元に戻っています。

次に入院後30日以内の死亡リスクを見てみると、
初回のロックダウン後に1.28倍(95%CI:1.23から1.32)、
2度目のロックダウン後に1.20倍(95%CI:1.16から1.24)と、
通常の時期と比較して高くなっていて、
特にコロナ以外による呼吸器疾患、
癌、肺炎、敗血症による死亡リスクは、
ロックダウン解除後の時期も含めて、
持続的に高い水準となっていました。

このように、
ロックダウンを行なうと、
コロナ以外で病院を受診することは減りますから、
コロナによる入院は増加しても、
トータルでは入院や病院の利用は減少しますが、
医療資源の多くがコロナ対応に振り向けられ、
患者さん自身も受診を控えるようになるので、
その生命予後は悪化することが想定されます。

ただ、これは勿論デンマークの個別のケースで、
仮にもっと爆発的なコロナ患者の増加が起これば、
より明確な医療崩壊となって、
入院自体も増加するケースもあり得ます。

日本においてもこのような検証は必要ですし、
特にどのような患者さんにとって不利益が生じるのか、
その点にはかなり偏りがあると想定されるので、
その点の検証も是非必要ではないかと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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モデルナ社新型コロナウイルスワクチンの遅発性局所性過敏症反応 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
モデルナワクチンの皮膚病変.jpg
JAMA Dermatology誌に、
2021年5月12被ウェブ掲載された、
モデルナ社のインフルエンザワクチンに特徴的な、
皮膚症状についての論文です。

モデルナ社の新型コロナウイルスワクチンは、
ファイザー・ビオンテック社と同じmRNAワクチンで、
日本でも国主導の集団接種において、
その使用が開始されています。

このワクチンの有効性や安全性は、
ファイザー・ビオンテック社製ワクチンと、
ほぼ同等と考えられていますが、
モデルナのワクチンに比較的特徴的な副反応として、
接種後少し遅れてから生じる、
アレルギー性の皮膚反応が報告されています。

これは以前2021年3月のthe New England Journal of Medicine誌に、
解説記事が発表されていて、
それについては発表の時点でブログ記事にしています。

そこでは、
こうした遅延性アレルギー反応は、
初回接種の0.8%で報告されていて、
そのうちの12例が解説されていました。

今回の論文では、
前述とは異なるアメリカの単独施設において、
報告された16事例がまとめられています。

16事例のうち、
81%に当たる13例は女性で、
14名は白人種で2名はアジア人種です。
16名のうち13名は医療従事者です。
今回のモデルナワクチン接種以前にも、
ワクチン接種後の皮疹が認められたのは1名のみでした。
15名は初回接種時に病変が出現しています。
初回ワクチン接種後、
中間値で7日後に、
接種部位周辺にかゆみや痛みを伴う、
限局性の皮疹が出現し、
皮疹は中間値で5日間持続して改善しました。
ただ、3週間持続したケースも認められました。

16名中2回目の接種後に同様の皮疹が出現したのは12名で、
接種後中間値で2日で症状は出現していました。

つまり、
1回目の接種では1週間ほどしてから、
皮疹が出現していますが、
2回目の接種ではそれよりずっと早く、
症状が出現しています。

皮膚の生検を施行すると、
血管周囲に強いリンパ球と好酸球主体の炎症が認められ、
遅延性過敏症反応に合致した所見でした。

典型的な事例の画像をお示しします。
モデルナワクチンの皮膚病変の画像.jpg

このように、
モデルナ社の新型コロナウイルスワクチン接種後に、
初回接種後1週間程度経ってから、
かゆみや痛みを伴うアレルギー性の湿疹が出現し、
それが5日程度持続することがあります。
通常軽症であるので大きな問題はありませんが、
時に3週間持続するような事例もあるので、
そうした現象があるという認識は、
持っておく必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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新型コロナウイルスに対する中国製不活化ワクチンの有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナウイルス不活化ワクチンの有効性.jpg
JAMA誌に2021年5月21日ウェブ掲載された、
中国で開発された新型コロナウイルス不活化ワクチンの、
臨床試験結果をまとめた論文です。

新型コロナウイルスワクチンには、
現在日本で接種が行われている、
2種類のmRNAワクチン以外に、
アストラゼネカ社などで開発された、
複数のウイルスベクターワクチン、
ノババックス社のナノパーティクルワクチン、
不活化ワクチンに区分される、
中国製などの複数のワクチンなどがあり、
現在実際に使用されています。

今回のデータは、
中国で開発された2種類の不活化ワクチンの、
第3相臨床試験の中間報告的なものです。

この2種類のワクチンは、
WIV04とHB02と命名されていて、
その由来するウイルスの系統が少し異なるだけで、
その製法自体は同じワクチンです。
培養細胞にウイルスを感染させて増殖させ、
それをβプロピオラクチンという薬品処理で不活化して、
感染力を持たないようにしたものです。

現行の季節性インフルエンザワクチンは、
スプリットワクチンと言って、
ウイルスの一部の抗原のみを使用するものですが、
論文の記載を読む限り、
今回の不活化ワクチンは、
不活化したウイルスをそのまま使用する、
全粒子ワクチンというタイプに近いもののようです。

利点としては安定性が高いので、
2度から8度程度の低温で長期間保存が可能で、
今のインフルエンザワクチンと同じような管理が可能であることです。

ただ、インフルエンザワクチンでも、
全粒子ワクチンはかなり発熱などの副反応は多く、
アナフィラキシーなどの発症も、
現行のスプリットワクチンよりは多かったので、
この新型コロナウイルス不活化ワクチンが、
他のmRNAワクチンやウイルスベクターワクチンと比較して、
安全性に優れているとは言い切れません。

今回の臨床試験は、
中東のアラブ首長国連邦とバーレーンにおいて2020年に行われたもので、
2種類の不活化ワクチンのいずれかを、
1回以上接種した40382人を対象とし、
2回の接種を終えて14日後以降の、
有症状の新型コロナウイルス感染症の発症リスクを、
添加物のアルミニウムのみの偽ワクチンと比較検証しています。

その結果、
偽ワクチンと比較した不活化ワクチンの有効率は、
WIV04ワクチンで72.8%、HB02ワクチンで78.1%と算出されました。
有害事象は主に接種部位の痛みなどで、
重篤なものの報告は偽ワクチン群と差はありませんでした。

つまり、mRNAワクチンの、
95%という有効率には及びませんが、
他のウイルスベクターワクチンなどと比較すれば、
遜色のない有症状感染の予防効果と言って良い結果です。

ただ、
この臨床試験の実施時期には、
当該地域で変異株の感染は主体ではなく、
これは従来株への効果で、
変異株への有効性は未知数です。
観察期間の中間値も77日ですから、
それほど長いとは言えません。

いずれにしても、
これだけ多彩なメカニズムのワクチンが、
1つの感染症に対して用いられたことは、
歴史上にも例のない事態で、
今後その安全性の比較を含め、
科学的な検証の結果を注視したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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