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相棒と甲状腺癌 [ミステリー]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

風邪を引きました。
今日は1日だらだら過ごす予定です。

昨日、
相棒season7 元日スペシャルを見ていたら、
「甲状腺未分化癌」が、
工場の廃液から集団発生する、
という話があって、
ちょっとこれはあまりに無理な話だと思いました。

甲状腺の未分化癌というのは、
甲状腺の癌の中では、
1パーセント以下の非常に少ない病気ですが、
予後が非常に悪いことでも知られています。
原因は不明ですが、
化学物質で集団発生するという話は、
聞いたことがありません。

ほぼ有り得ないですね。

多分チェルノブイリの原発事故で、
甲状腺癌が集団発生したことを、
ヒントにしたのだと思いますが、
あれは放射性ヨードが、
高率に甲状腺に集まったための現象なので、
まるで理屈が違います。

相棒は好きなドラマなのですが、
総じて脚本家の方が、
皆科学の方面には弱いらしく、
科学のネタは「トンデモ系」が多いですね。

僕の好みは、
1st season の「人間消失」、
season2 の「二分の一の殺意」、
season3 の「ありふれた殺人」あたり。

まあ、トリッキーな話が好きなんです。

甲状腺未分化癌の話は、
また今度書きますね。

今日はこれだけです。
皆さんも良いお正月をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。

「バニー・レークは行方不明」 [ミステリー]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は休みでだらだら過す予定です。

休みの日は趣味の話です。

「バニー・レークは行方不明」は、
イヴリン・パイパーというアメリカのミステリー作家の、
1957年のサスペンス小説で、
1965年にイギリスで映画化されています。

映画はすぐに日本でも公開され、
意外な結末のあるミステリー映画として、
それなりの評価があったのですが、
リバイバルはされず、
ビデオにもならず、
僕は以前から是非見たいと思っていた映画の一本でした。

日本でのソフト化は、
未だにされていませんが、
スカパーで何度か放映され、
また先週はwowwowでHV放映されました。
それでようやく僕も見ることが出来ました。

筋立てはこうです。
アメリカ人の若い未婚の母が、
4歳の娘(これがバニー・レークです)と一緒に、
ロンドンへとやって来ます。
彼女が保育園に娘を初めて預けた当日、
迎えに行くと娘の姿はありません。
そればかりか、その娘の存在を、
覚えている人すら誰もいないのです。
娘は警察を呼び、
一緒にイギリスに来た自分の兄と一緒に、
娘を探し求めます。
しかし、娘は見付からず、
それどころか、娘の実在を示す証拠さえも、
次々と消えて行くのです。

どうですか。なかなか魅力的な筋立てでしょ。

ただ、結末をつけるのは、
難しいですよね。

シンプルに考えれば、2通りしかない訳です。
娘は実在しなくて、
母親の妄想だったというものか、
それとも何らかの陰謀があって、
娘の存在を消す必要があった、
とするか。
どちらにしても、
単純にそれだけの結末では、
見る方もがっかりしてしまいます。

そこにどういう趣向を凝らすかが、
作る側の腕なのですが、
その意味でこの作品、
抜群とは言えないですが、
なかなかうまく考えていると思います。

原作は映画とは、
全然違う結末になっているんです。
どちらを先に見ても読んでもOKという、
これは結構稀有の例ですね。

原作は最近になって、翻訳が出版されました。
映画はアメリカ人がイギリスへ行く話で、
原作はイギリス人がアメリカへ行く話です。
この辺もちょっと面白いですね。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。

T.S.ストリブリング「ポジオリ教授の冒険」 [ミステリー]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は家族の集まりがあって外出し、
今帰って来たところです。
午前中は老人ホームに呼ばれて一度出動しました。

皆さんは如何お過ごしでしょうか。

ええと、今日はミステリーの話です。

T.S.ストリブリングは、
20世紀前半に主に活躍したアメリカの作家で、
ミステリーだけを書いた訳ではありませんが、
特色のある短編ミステリーを多く残し、
その代表作が3冊の本になって、
翻訳されています。

最初に書いたシリーズが、
「カリブ諸島の手がかり」で、
それに続く時期の作品が、
最近出版された「ポジオリ教授の冒険」です。
今日読了しましたが、
なかなか面白かったですね。

探偵役のポジオリ教授は、
心理学者なんです。
結構有名人で、あちこちで様々な事件に巻き込まれ、
その解決を任されます。
こう書くと、名探偵の活躍するタイプの、
普通のミステリーのようですが、
そうではありません。
結局解決されない事件もありますし、
犯人がまんまと逃げてしまってから、
その真相に気付くようなこともあります。

たとえば収録されている「つきまとう影」という一編では、
ポジオリ教授は、魔術師の助手だった男から、、
殺されるから助けて欲しい、と頼まれます。
彼が魔術師の妻を寝取ったので、
魔術師から追われている、
と言うのです。
魔術師はその助手の上着のポケットの中に、
毎朝「おまえの命はもう3日」、
みたいなメモを入れて行きます。
ところが、閉ざされた部屋の中に、
メモを残すことなど、
不可能な筈なのです。
そうこうしているうちに、
その魔術師自身の姿が、ポジオリ教授の前にも現われ、
不可能な状況での殺人事件が起こります。

皆さんはこの事件が、
どのように解決されると思いますか?

何となく予想のつく方もあると思います。
しかし、そうなりそうで、
そうはならないんですね。
ある意味尻切れトンボとも言える、
ちょっと異様な結末が待っています。
もしご興味のある方は是非お読み下さい。
ただ、僕は結構感心しましたけれど、
腹を立てる人もいるかも知れません。

ストリブリングの小説の面白さはね、
何よりミステリーには少ない大人の小説だ、
ということなんです。
大恐慌直前の混沌とした不条理な状況など、
現在に通じるものがあります。

心理学者が警察に協力して犯罪を捜査するなど、
荒唐無稽だと思われる方がいるかも知れません。

でも、これには実例があるんですね。

20世紀の初め頃、
ユング博士は連想実験という方法で、
犯罪捜査に協力し、一定の成果を上げました。
これはある言葉に対して、
初めて頭に浮かんだ言葉と、
その言葉を思い付くために要した時間を記録し、
それからその人物のコンプレックスを探る方法です。

ストリブリングは勿論このことを知っていたので、
彼の後半生の作品には、
明らかにユング心理学の影響が見て取れます。
この辺りも、僕には面白かったですね。

それでは今日はこのくらいで。

明日はまた医療の話題をお届けします。

石原がお送りしました。



チーム・バチスタの栄光 [ミステリー]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は休みなので、
ミステリーの話などします。

2年前のベストセラーを今更なんですけど、
テレビドラマも始まるので重い腰を上げて、
先週の仕事の合間に読みました。

前半は主人公のキャラはブレ気味だし、
現在形を多用したライトノベルみたいな薄味の文章だし、
「医療過誤」への取り組みなど、
ちょこっと社会問題を入れて、
真面目読者の気を惹く所など、
どちらかと言えば反感を感じつつ読んでいたのですが、
ミステリーとしての仕掛けは、
意外に巧みに出来ていて、
重要人物のある秘密が、
明らかになる辺りで、
なるほど、と思い、
ラストの盛り上げも、
定石通りですがなかなかでした。

しゃくですけど、
確かにうまく出来ていますね。

ただ、
「キャラが立っている」という批評が多いんですが、
それはどうかな、と思います。

探偵役2人のキャラは、あまり上出来ではないですね。
特に田口公平という人物に関しては、
設定も苦しいし、前半と後半では、
明らかに性格も変貌してしまっています。
一貫した性格に描き切れなかったんですね。

その意味では、主人公を女性に変えた、
映画の脚色はクレヴァーだと思いますし、
さすがですね。

白鳥という名探偵役に関しては、
明らかに「トリック」の阿部寛をモデルにしていて、
結果的にそのままのキャストで映画になったのですから、
その意味では作者の見立ての勝利なんでしょうね。
ただ、ちょっとあざとい気はします。

些細なことなんですが、
田口公平という人物が、
先輩の手を付けた研究を、
続けるようにと言われるのに、
やる気がなく放り出してしまい、
研究データも燃やしてしまう、
という件があります。

これはちょっとひどいな、
と僕は思いました。
作者の研究というものに対する悪意を感じましたね。

先輩の書いた動物実験のデータを、
焼却炉にくべて、
それが動物への供養だ、
という感性には、
違和感を覚えます。

しかも、別に動物愛護の精神でそうする訳ではなく、
その時の気分でそうするだけなのです。

僕の知っている大学病院の医局というのはね、
良くも悪くも研究馬鹿の集団でした。
この小説にはそうした雰囲気は微塵もないんですね。
まあ、フィクションなんですから、
どうでもいいことなのかも知れませんが、
この小説を読んで、
ああ大学病院とはこういう所なのか、
と思う人がいるとしたら、
それは間違いなので、
そのことだけはここで強調しておきたいと思います。

臨床と研究とはね、
この作者の言うように対立するものではないんです。
科学的思考を純粋化したものが実験で、
臨床においては、
常に実験に対する時と同じ、
研究心と科学的思考とを、
持たなければならないんです。
それが、科学者としての医者というものです。

何となく、お分かり頂けるでしょうか。

「流星の絆」と同じように、
これも二時間ドラマで充分な内容なので、
多分色々と手は入れるのでしょう。
原作の良さは保った作品になればな、
とは思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんもいい休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。

「流星の絆」 [ミステリー]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

昨日からちょっと遠出をして、
今戻って来た所です。

行き帰りの電車の中で、
東野圭吾の「流星の絆」を、
一気読みしました。

前から買ってはあったのですが、
クドカン脚本でドラマになるので、
その前にと思って読んだのです。

うーん、ちょっと「薄味」の作品ですね。
「白夜行」をライトノベルにしたような感じで、
前半は宮部みゆきみたいだな、
と思っていたんですが、
後半はもう赤川次郎みたいでした。
ミステリーとしての仕掛けも、
最近の赤川次郎レベルです。

そんなに乗って書いた仕事ではないと思います。
人物の設定や心の動きも、
分かっていて、敢えて薄っぺらにしている感じで、
ドラマ化を想定して、
設定もある程度、
出版社の意向に沿って書いたのではないか、
と僕は思いました。
前にも書いたように、
この人はもっと意地が悪い筈です。

勿論一気に読ませる筋運びは巧みで、
東野圭吾の作品でないと思えば、
時間潰しには悪くないんですけどね。
「鳥人計画」や「ブルータスの心臓」、
そして何より「秘密」に感銘を受けたので、
この力の抜き加減は正直残念でした。
「白夜行」は好きじゃなかったんですが、
「流星の絆」の後では少し評価を変えました。

内容は2時間ドラマで充分くらいのものなので、
脚本のクドカンが、
どの程度内容を変えて、
膨らませてくれるのかが、
ちょっと楽しみではあります。

今日はこれだけです。

皆さんもいい休日を。

石原がお送りしました。

「秘密」 [ミステリー]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は休みで、今起きたところです。
昨日はちょっとワインなど飲んだので、
頭はまだ重い感じです。

今日はちょっとミステリーの話などします。

東野圭吾という人は、
エンジニアで、乱歩賞でデビューしたんですが、
売れない時期がかなり続きました。

初期は屈折した青春小説に推理が絡む、
みたいな作品が多くて、
「魔球」などがその代表でしょうか。
それから技巧的なミステリーを手懸けます。
「鳥人計画」とか、「ブルータスの心臓」辺りが、
僕は気に入っていて、何故注目されないんだろう、
と不思議に思っていました。
それから「変身」みたいなSFタッチのものに移って、
僕はしばらく読まないでいました。
こんなことを言うと失礼ですけど、
多作で如何にも手を抜いた、
みたいな作品も多いんです。

それから、本当に久しぶりに手にしたのが、
「秘密」ですね。

この作品で東野圭吾はブレイクした訳ですし、
ベストセラーにもなったので、
今更僕が言うこともないんですが、
素晴らしかったですね。

読んだのは2004年の冬で、
ラストは二子玉川の駅前のケンタッキーで読みました。
同じ年にデセイ様が来日して、
生まれてから最も感動した、
という実感がまだ生々しくあったので、
全然比較の対象とはならないんですけど、
それに次ぐ感動に揺さぶられた気がしたのです。

アイデアは、大したことはないんですよね。
別に前例もない訳ではないと思いますし。
でも、このアイデアだけで、
迷いなく長編にしてしまうところが凄いんです。
余分なものの何もない、
純粋な結晶体のような作品ですね。
ネタばれになるので詳しくは書けませんけど、
主人公は同じ愛する人を、
3回失うのです。
失う度に、愛情は高まり、そのために喪失の感情も、
より強くより純粋になっていくんですね。

かなり作者のパーソナルな記憶に結び付いた作品なのじゃないか、
という気が僕にはしました。

それで、「白夜行」とか、
幾つかの読んでいなかった作品を読んだんですが、
あまりグッとは来ませんでした。

今度映画が公開になる、
「容疑者Xの献身」は、比較的刊行後すぐに読みました。

これもちょっと癖のある作品ですね。

彼は割りと屈折した倫理観を持っているんですね。
あと、かなり意地が悪いと思います。
読者に安易に感情移入されるのを嫌うんですね。
作品の出来の割りに評価の低い時期が長かったですし、
「どうせ分かりゃしないんだろ?」、
みたいな感じが強かったのかも知れません。

でも、「秘密」だけはそうではないんですよね。
自分の意地の悪い部分を、
敢えて封印して、
自分の記憶の核にある喪失感を、
純粋に形にしたような気がします。

それが、読者の心を強く揺さぶるのです。

それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。

「幽霊の3分の2」 [ミステリー]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は休みで、
基本的には1日家にいるつもりです。

「33分探偵」というドラマをやっているでしょ。
堂本剛がミステリーマニアの私立探偵、
という趣向のコメディなんですが、
毎回小ネタで、古典のミステリーの話が出てくるんです。

何回か前に、アメリカの女流作家へレン・マクロイの書いた、
「幽霊の3分の2」の話が出て来たので、
驚きました。

何故かと言うと、
この作品はね、今最も入手の難しい、
絶版本の1つなんです。
1950年代に文庫本で翻訳が出たんですが、
その後再販はされず、
現在に至っています。

ネットオークションにたまに出ますが、
5万円以下で入手するのは難しいですね。

まあ、ただの文庫本なんですから、
古書マニア以外の方には、
馬鹿みたいな値段ですよね。

僕は勿論持っていません。

ドラマではその作品のトリックについて、
不意に堂本剛が話し出すんです。
見ていて思わず耳を塞ぎました。

一生読めないかも知れない作品ですけど、
でも反則ですよね。

ドラマ自体はあまり上出来ではないですね。
「詰らない事件を放送時間分もたせる」、
という発想自体が、
ちょっと安易だったという気がします。

以前の「時効警察」は、
同じような一発アイデアではありましたけど、
「時効になった事件を趣味で捜査する」、という、
プロットが斬新でしたね。
昔だったら、成立しなかった企画だと思うんです。
殺人を犯した犯人が分かっても、
罰を受けないんですから。
でも、それが今の時代に合っているんですよね。
いいドラマというのは、非現実的に見えても、
きれいに現代を切り取っていますね。
ただ、内容はミステリー心があまりなくて、
その点はちょっとがっかりでした。

中学の時は結構暗くて、
家に帰ってミステリーを読むことだけが、
楽しみだったことがありました。
朝、帰ってから続きを読むことだけを思い描いて、
いやいや学校へ行くんですね。

でも、今思うと、そんなに暗くもなかったんですよね。
いじめもありましたけど、
今と比べるとほのぼのした感じでした。

今仕事に行く方が、
辛いと言えば辛いですかね。
将来が制限されて、
道は段々と狭まって行くでしょう。
「将来の何かのために生きる」、
ということが、次第に出来難くなって行くんですね。

「明日のためでなく、今日のために生きろ」、
みたいなことを言う人がいますね。
「今日何か自分にとって大切なことを1つしなさい。
美しいと思うものを、1つ見なさい。
他人のためになることを、1つしなさい」、
みたいな。

僕もそんな意味のことを、
患者さんに話すこともあります。
まあ、1つの真実ではあるんでしょう。
でもねえ、それだけじゃ人間は生きていけないですね。
多分…

「イキガミ」という漫画は、
そんな意味合いの話ですね。
設定は目茶苦茶なんですが、
ともかく、かっきり24時間後にあなたは死にます、
という通知が届く訳です。
それも突然に。
24時間後に死ぬなら何をするか、
という推論のドラマですね。
結構好き嫌いが分かれるようで、
僕は嫌いですね。

「死のタイムリミットを設定して、生きることの意味を問う」、
という意味合いだと思うんですが、
その発想はね、
「明日自殺するわ」、
と友達にわざわざメールする女の子と一緒ですよ。

生を意図的に短縮したって、
その意味合いは変わらないんです。
そこに価値を見出そうとするのは、
危険なことだと僕は思います。

100パーセントの死というのは、
フィクショナルにしか成立しないんです。
90パーセントの死と10パーセントの生、
その方が余程怖いですよ。
昔赤紙を受け取った人も、
今末期癌と戦っている人も、
そうした世界を生きている訳です。
そこには多分、生の本質に繋がる何かがある筈です。
でも、自殺や自爆テロや特攻には、
それはありませんね。
どれも人間の傲慢な意志が生み出したものです。
それを混同したら、まずいのではないか、
というのが僕の考えなんです。

後半は何かちょっと内省的な話になりました。
すいません。
何となく、そんな気分なので。

それでは今日はこのくらいで。
明日はまた医療の話をします。

皆さんは良い休日をお過ごし下さいね。

石原がお送りしました。

「緑は危険」 [ミステリー]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

朝からコンピューターのリカバリをしたのですが、
それでもネットにだけ繋がりません。
また業者に電話をして、
色々訊いて設定を変えたりしたのですが、
それでも今のところ改善されません。
今日はそれだけで1日が暮れそうです。

さて、今日はちょっとミステリーの話です。

福岡の病院で、
救急患者の搬送の際に、
酸素の吸入をする代わりに、
二酸化炭素の吸入をして、
問題になった事例がありましたね。

酸素は黒いボンベで、
二酸化炭素は緑のボンベに入っています。
これは世界共通なんですね。
その緑と黒とを間違えてしまった訳です。

このニュースを見て、すぐ思い出したのは、
古典的なミステリー小説の「緑は危険」です。
ミステリーファンの方は、よくご存知だと思います。
イギリスの女流ミステリー作家、クリスチアナ・ブランドの、
代表作の1つです。

ええと、ちょっとネタばれに近い記述になりますので、
未読で、全く予備知識なく読みたい方は、
この先は読まないで下さい。
勿論犯人を明かしたりはしませんけど。

よろしいでしょうか。

これは、戦後すぐに出版された作品で、
戦時中の軍の病院が舞台です。
作者のブランドは、
実際に従軍看護婦として働いていたので、
手術の場面など、かなりリアルに描かれていて、
そういう意味でも面白い作品です。

詳しくは、ネタばれになるので書きませんが、
題名の「緑は危険」というのは、
二酸化炭素の緑のボンベのことなんですね。
福岡の事件に近い状況が、
ミステリーのトリックとして使われています。

母国の評価では、
文章はうまい人らしいのですが、
日本語には馴染まないようで、
翻訳で読むとあまり読みやすくはありません。
しかし、内容は精緻に出来ていて、
犯人の造形など印象的で心に残ります。

改めて読むと、医療過誤で患者を死なせた医者の心理なども、
極めて丁寧に描かれていて、
最近の日本の医療ミステリーなどより、
余程考えさせられるし、リアルな出来栄えです。

ご興味のある方は是非。

今日はちょっと趣向を変えて、ミステリーの話など、
お届けしました。
一時は結構、のめり込むほど好きだったんです。

それでは今日はこのくらいで。
皆さんは良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。

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