SSブログ

ロベール・トマ「罠」(2024年深作健太演出版) [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
罠.jpg
ロベール・トマの推理劇の古典的傑作「罠」が、
この作品の演出では定評のある深作健太さんの演出で、
大手町よみうりホールで上演されています。

僕は推理劇が大好きで、
推理劇だけを毎日上演している劇場があれば、
毎日通い詰めても良いと思っているのですが、
実際には優れた推理劇というものは、
滅多に存在しているものではありません。

過去有名な傑作推理劇と言えば、
アガサ・クリスティーの「ねずみとり」と「検察側の証人」、
トマの「罠」、
シェーファーの「スルース」、
アイラ・レヴィンの「デストラップ」くらい。

そして、その中でも孤高の傑作と言って良いのが、
この「罠」なのです。

失踪した新妻を探し求める男の前に、
別人の女性が、
自分が失踪した妻だと名乗って現れ、
その後二転三転するという物語で、
その見事なプロットは、
多くの小説やドラマ、映画などに流用されています。

僕自身もこのプロットは、
1980年代に製作されたアメリカのTVムービーで、
観たのが最初です。
舞台をアメリカに移して、
時代も新しくしたヴァージョンでしたが、
とても驚かされたことを鮮やかに覚えています。

如何にもフランスミステリ的な趣向で、
この作品が最初とは言い切れないのですが、
先行作があったとしても、
歴史的に最も有名なのがこの「罠」であることは間違いがありません。

今回初めて、オリジナルの舞台を、
生で観ることが出来ました。

非常に面白かったですし、
演出もキャストも良く、
勿論筋書きは最初から知っていたのですが、
それでもとても面白く観ることが出来ました。

これ、イタリアのジャーロを思わせるような、
とても煽情的でドロドロするスタイルの作品なんですね。
発表された1960年というのは、
イタリアやフランスの、
ミステリーと残酷趣味のホラー映画の全盛時代なので、
そのムードを濃厚に受け継いでいる作品だと思います。

全編物凄く芝居掛かっていて、
段取りもとても仰々しく凝っているんですね。

ラストのネタばらしがあっても、
「そうだとしても、何もそこまでやるかな」と思うところですが、
こうした作品はそれを言ってはお終いで、
その芝居掛かった仰々しさを、
実際に生の役者がお芝居で目の前で演じる、
という醍醐味を味わうのが主眼なのです。

そのため、この作品のプロットを流用した多くの関連作では、
プロット構成はもっとスッキリしていて、
オリジナルのような仰々しさはありません。

それはそれでリアリティは増しているのですが、
その一方でこのオリジナルの持つ大時代的な感じは、
個人的にはとても楽しく好ましく感じました。

今回演出の深作さんはそうした点を熟知していて、
舞台を古城のような雰囲気に設定し、
後ろの引き戸を重々しく開く感じなど、
最初からジャーロの雰囲気を演出しているのが素晴らしく、
途中で拳銃が移動する段取りなども、
非常に巧緻に再現していました。
役者は出来には濃淡はあるものの、
皆作品の本質を理解したお芝居で、
内容を予め知っていても、
充分に楽しめる仕上がりになっているのはさすがでした。

そんな訳で大いに楽しめる「罠」になっているので、
推理劇のお好きな方は、
是非足をお運びください。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
nice!(3)  コメント(0)