上部消化管病変とパーキンソン病との関連 [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
JAMA Network Open誌に、
2024年9月5日付で掲載された、
パーキンソン病と上部消化管病変との関連についての論文です。
パーキンソン病は、
筋肉の硬直や手の震え、歩行困難などを症状とする難病で、
その原因は脳の黒質という部分における、
ドーパミンという神経伝達物質の欠乏によることが分かっています。
このドーパミンの欠乏は、
αシヌクレインという異常タンパク質が、
神経細胞に蓄積することにより起こります。
このαシヌクレインの異常構造物がレビー小体と呼ばれるもので、
認知症の1つであるレビー小体型認知症は、
同一の原因による病気なのです。
このαシヌクレインは、
胃や腸の粘膜に分布する神経叢にも出現しています。
近年胃や腸の神経叢に出現するαシヌクレインが、
自律神経の迷走神経を介して脳に伝わり、
それが沈着することでパーキンソン病を起こすのではないか、
という仮説が提唱されて注目を集めています。
勿論以前から、
パーキンソン病では便秘や胃腸の運動の低下など、
胃腸症状が伴うことが知られていました。
それは脳の病気に付随する症状と考えられていたのですが、
実は脳神経症状が出現する前から、
胃腸粘膜に分布する神経細胞へのαシヌクレインの沈着は認められていて、
それこそがパーキンソン病の大元で、
脳の症状は胃腸から自律神経を介して広がったものではないか、
という逆転の発想です。
ただ、たとえばパーキンソン病ではピロリ菌の感染が多い、
というような知見はあるものの、
実際に胃粘膜などの病変が、
その後のパーキンソン病の発症と関連しているのか、
というような点については、
まだ臨床的なデータは限られています。
そこで今回の研究ではアメリカにおいて、
検査の時点でパーキンソン病の既往のない、
9350例の胃内視鏡検査の受診者のデータを後から解析する手法で、
内視鏡検査で確認された胃炎などの粘膜障害と、
その後のパーキンソン病の発症との関連を比較検証しています。
その結果、
平均で14.9年の観察期間において、
上部消化管の粘膜障害が認められた人は、
そうでない人と比較して、
その後にパーキンソン病を発症するリスクが、
関連する他の因子を補正した上で、
1.76倍(95%CI:1.11から2.51)
有意に増加していました。
つまり、胃や十二指腸の粘膜病変が、
何らかの機序で粘膜に分布する神経細胞に、
異常タンパクの蓄積を招き、
それが迷走神経などの自律神経を介して、
パーキンソン病の原因となったのではないか、
という仮説を補強するデータです。
この結果はまだ推測的なものに過ぎませんが、
胃や腸の粘膜の状態とパーキンソン病が関連している、
という臨床データは非常に興味深く、
今後のより実証的な検証に期待をしたいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
JAMA Network Open誌に、
2024年9月5日付で掲載された、
パーキンソン病と上部消化管病変との関連についての論文です。
パーキンソン病は、
筋肉の硬直や手の震え、歩行困難などを症状とする難病で、
その原因は脳の黒質という部分における、
ドーパミンという神経伝達物質の欠乏によることが分かっています。
このドーパミンの欠乏は、
αシヌクレインという異常タンパク質が、
神経細胞に蓄積することにより起こります。
このαシヌクレインの異常構造物がレビー小体と呼ばれるもので、
認知症の1つであるレビー小体型認知症は、
同一の原因による病気なのです。
このαシヌクレインは、
胃や腸の粘膜に分布する神経叢にも出現しています。
近年胃や腸の神経叢に出現するαシヌクレインが、
自律神経の迷走神経を介して脳に伝わり、
それが沈着することでパーキンソン病を起こすのではないか、
という仮説が提唱されて注目を集めています。
勿論以前から、
パーキンソン病では便秘や胃腸の運動の低下など、
胃腸症状が伴うことが知られていました。
それは脳の病気に付随する症状と考えられていたのですが、
実は脳神経症状が出現する前から、
胃腸粘膜に分布する神経細胞へのαシヌクレインの沈着は認められていて、
それこそがパーキンソン病の大元で、
脳の症状は胃腸から自律神経を介して広がったものではないか、
という逆転の発想です。
ただ、たとえばパーキンソン病ではピロリ菌の感染が多い、
というような知見はあるものの、
実際に胃粘膜などの病変が、
その後のパーキンソン病の発症と関連しているのか、
というような点については、
まだ臨床的なデータは限られています。
そこで今回の研究ではアメリカにおいて、
検査の時点でパーキンソン病の既往のない、
9350例の胃内視鏡検査の受診者のデータを後から解析する手法で、
内視鏡検査で確認された胃炎などの粘膜障害と、
その後のパーキンソン病の発症との関連を比較検証しています。
その結果、
平均で14.9年の観察期間において、
上部消化管の粘膜障害が認められた人は、
そうでない人と比較して、
その後にパーキンソン病を発症するリスクが、
関連する他の因子を補正した上で、
1.76倍(95%CI:1.11から2.51)
有意に増加していました。
つまり、胃や十二指腸の粘膜病変が、
何らかの機序で粘膜に分布する神経細胞に、
異常タンパクの蓄積を招き、
それが迷走神経などの自律神経を介して、
パーキンソン病の原因となったのではないか、
という仮説を補強するデータです。
この結果はまだ推測的なものに過ぎませんが、
胃や腸の粘膜の状態とパーキンソン病が関連している、
という臨床データは非常に興味深く、
今後のより実証的な検証に期待をしたいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。