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新型コロナウイルス感染症の既往とワクチンの有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
新型コロナの既往とワクチン接種の有効性.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2022年2月16日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症の既往と、
その後に接種するワクチンの有効性についての論文です。

これは結論的には以前から指摘されていた事項を、
裏打ちする内容ですが、
臨床的に確認したという点で意義のあるものです。

今3回目の新型コロナウイルスワクチン接種が、
急ピッチで進められています。
クリニックでも連日接種を行なっていますが、
今はオミクロン株の大流行期でもあります。

そこで予約をされていても、
「昨日感染したので打つことが出来なくなりました」
のような連絡が入ることがしばしばあります。

それでは、実際に感染した場合にその後のワクチン接種については、
どのように考えれば良いのでしょうか?

以前には実際に感染した場合の免疫は強いので、
ワクチンをその後接種する必要はない、
という意見もありましたし、
1回のみの接種で問題ない、という意見もありました。

またワクチンを接種するにしても、
感染してからすぐに打つと副反応が強くなるので、
1ヶ月、もしくは3ヶ月以上間を開けて、
接種することが望ましい、という意見もありました。

ただ、現行の日本で行なわれている3回目接種では、
特に感染後のワクチン接種について、
どのくらい開けるべきかと言うような、
明確な規定はありません。

今回の検証はイスラエルにおいて、
大規模な医療データを解析したものですが、
新型コロナウイルス感染症に罹患して回復した149032名のうち、
56%に当たる83356名が感染から270日以内にワクチン接種をしていました。
ワクチンは全てファイザー・ビオンテック社のmRNAワクチンです。
このワクチン接種は全て感染者では感染3ヶ月以降に施行され、
初感染から100日以上経過後のRT-PCR検査陽性事例を、
再感染と定義しています。
すると、
ワクチン接種者のうち再感染は354名に生じており、
毎日10万人当たり2.46件と算出されました。
一方で感染後ワクチン未接種の場合、
再感染は2168名に生じており、
その頻度は毎日10万人当たり10.21件と算出されました。

これにより、感染後のワクチン接種の有効率は、
年齢が16から64歳では82%(95%CI:80から84)、
65歳以上では60%(95%CI:36から76)と算出されています。
この有効率にはワクチンの1回接種と2回接種で差は認めらませんでした。

これはデルタ株が主流に感染拡大している時期のデータですが、
実際の感染後においても、
その3ヶ月以降に少なくとも1回のワクチンを接種することにより、
一定レベルの再感染予防効果が、
自然免疫のみと比較して確認されています。
ただ、その免疫賦活の有効性は、
65歳以上の年齢層では減弱しているようです。

現行の新型コロナウイルス感染症は、
1回罹ればそれで終了、というようなものではなく、
再感染も稀ではないところに厄介さがありますが、
感染後であってもワクチンを少なくとも1回接種することにより、
その後の再感染抑制効果が高まることは、
事実として認識しておいて良いようです。
その場合のワクチンの回数や接種間隔、接種時期については、
もう少し明確な指針が作成される必要があると思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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