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極私的新型コロナウイルス感染症の現在(2022年2月13 日) [仕事のこと]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診ですが、
夜はいつものように、
昨日のRT-PCR検査の結果説明にクリニックに行く予定です。
昼には自宅療養者の健康観察の電話を掛けます。

それでは今日の話題です。

今日は新型コロナウイルス感染症の、
クリニック周辺の現況です。

オミクロン株の感染拡大が続いています。

2月の前半はこれまでで一番きつかったかも知れません。
ほとほと疲れましたし、
今も平静な状態ではありません。

幾つかのパートに分けて、
その状況をご説明したいと思います。

➀数字から見る現況
1月にクリニックで行なったRT-PCR検査は、
トータルで275例で、そのうち178例は陽性でした。
月の初めはまだ陰性者が多かったので、
中旬以降のみで見れば、
全体の8割以上は陽性という、
「風邪症状があれば殆ど陽性」
というような状態が続いています。

2月の初めに一時陽性率が50%くらいの日があったので、
これはピークアウトしたのか、
と少し希望的観測を持ちましたが、
たとえば2月10日は18例の検査をして16例が陽性でしたから、
その勢いはまだおさまっていない感じです。

全例に電話をして症状を聞き取り、
療養の説明をしてから、
HER-SYSに発生届けの入力をします。

陰性者が多ければ楽なのですが、
陽性者が殆どという状況なので電話にも時間が掛かり、
終わるのが夜中になるのが通常です。

②高齢者と小児への感染拡大
1月の下旬までは明らかに若年者が感染の主体でしたが、
1月末頃から高齢者施設でのクラスターが目立つようになり、
2月に入って保育園や学校を介する小児の感染が急増しています。

学校も1月のうちは中学や高校が主体だったのですが、
2月になると小学校と保育園、幼稚園にシフトしてゆきます。

幼稚園のクラスで感染者が出ると、
そのクラスの先生とクラスの園児全員が、
濃厚接触者になります。

園児の大半は無症状か極軽度の風邪症状なので、
今の基準だと必ずしも検査をしなくてもいいのですね。

ただ、感触としては、
クラスで1人の園児が感染すると、
ほぼほぼ全ての園児が感染している、
という想定をして間違いのない状態なのです。

感染したお子さんが家に戻ることで、
今度はその家族に感染がひろがります。

今のオミクロン株の感染力では、
これもほぼ家族の全員が感染しますから、
1人が2日後には5人になるというペースで、
感染者が急増するのは、
これはもう自然の経過なのです。

こうした状況をみると、
今の報告された感染者数は、
これはもう既に氷山の一角である、
という現実が見えて来ます。

これは結果論になりますが、
今回の感染拡大期においては、
高齢者の重症化を抑止するためには、
学校や保育園の一斉休校は、
1つの有効な選択肢ではあったのですね。

ただ、2020年に同様のことをして、
「やり過ぎで弊害も大きい」という指摘を受けたので、
今回はその反省を元に踏み込まなかったのですが、
これはオミクロン株の性質を見誤っていたように思います。

③高齢者の入院困難
クリニックでも90歳を超える高齢者の感染を2例経験していて、
そのうちの1例は以前記事にしていますが、
土曜日で行政の入院調整が入らないので、
救急隊が60カ所に電話をして受け入れ先が見付からず、
クリニックで探してどうにか、という事例でした。
もう一例は高齢者施設のクラスターで、
届け出をしてすぐに入院調整を保健所に依頼したのですが、
入院が実現したのは1週間後でした。
オミクロン株そのものの感染によると言うよりも、
発熱で食事がとれなくなり、
衰弱や脱水が進行するのが入院が必要となる主な要因です。

テレビなどで必ず出て来る訪問診療のクリニックがあり、
保健所の依頼で往診に来たのですが、
あそこは点滴などはしないのですね。
来て、診察して帰って、とただそれだけでした。

こうした状況では、
いずれこうした高齢者の重症化や死亡が、
急増することは明らかで、
もう既に地域によっては起こっているのだと思います。
行政による入院調整が、
もう少し効率的に機能する必要がありますし、
それが無理なのであれば、
それまでの待機施設的な場所が、
是非必要であるように思います。
高齢者は宿泊療養の対象にはならないのですね。
入院が前提なのでそうしたことになっているのですが、
入院がすぐには困難な状況であるのですから、
その受け皿が至急必要な状況であるのです。

④検査の渋滞と診断の混乱
昨年は「熱が37.5度以上の方はいきなり医療機関を受診せず、
必ず事前に連絡して下さい」
という張り紙などをして、
多くの医療機関は対応していたと思うのですが、
今は熱がなくても、
風邪症状があるだけで感染の可能性は高いので、
「ちょっと咳が出る」
というくらいの人もトリアージをして、
通常の患者さんと分けて診察する必要があります。

そんな訳で風邪症状のある人は、
必ず事前に電話で連絡の上、
受診して頂くようにお話をしているのですが、
今は電話もひっきりなしに掛かって来て、
その多くは発熱者や濃厚接触者の相談や、
新型コロナワクチンのブースター接種の相談なので、
どうしても通話時間も長くなります。

電話は2回線あるのですが、
両方の電話に出ていると、
結果として診療が成り立たなくなってしまいます。
電話にスタッフが出ている間は、
そのスタッフは他の仕事は出来ないからです。

そのために全ての電話に対応することは出来ず、
結果として「何度電話をしても繋がらない」という状態になるので、
しびれを切らした患者さんは、
結果として直接クリニックに来てしまう、
という悪循環になります。

発熱外来と検査に使用しているブースは、
1人もしくは1家族しか使用出来ないので、
飛び入りの方がそこにお見えになると、
ブースが開くまで外で待って頂くしかなくなります。

クリニックの入り口の外はビルの共用部分の廊下で、
そこで仕方なくそうした患者さんに待ってもらっていたのですが、
他の借り手の方から、
大家さんを通じてクリニックにクレームが入り、
「感染者が通路を塞いでいて怖い」
「感染したらどう責任をとってくれるんだ?」
というようなお話でした。
具合の悪い方が勿論マスクをして通路にいて、
その横を通ることで感染が成立することがあるのだろうか、
それほど忌避の感情が強いのかしら、
というようには思ったのですが、
通路が共用部であることは事実で、
ご迷惑をお掛けしていることも事実なので、
丁重にお受けして対応することにしました。

「患者は通路ではなく、待つ必要があるなら外で待ってもらえ」
ということだったので、
それからは極力外で待ってもらうことにしました。

それがこの前の雪の日でしたか、
そうした飛び入りの方がお見えになって、
ちょっと外でお待ちください、ということになり、
それはもう苦渋の決断でしたが外で待ってもらったところ、
すぐにお怒りになって、
捨て台詞を残してお帰りになりました。

ブルーになります。

検査はなるべく可能な範囲でお受けしたい、
と思っているのですが、
かかりつけは他にあって、
そこに相談したらPCR検査はしていないと言われたので、
こちらに相談しています、
と言われたり、
かかりつけに連絡したら、
PCR検査は混んでいるので1週間後になります、
と言われたのでこちらに相談しています、
と言われたりするので、
最近はそうしたご依頼は、
なるべく「もう一度かかりつけに相談して下さい」
と大変申し訳ないのですが、
そうお話するようにしています。
1週間後というのは明らかな嘘なんですね。
同じクリニックで即日で検査をされたような方も、
他にいることを知っているからです。
かかりつけの患者さんの発熱であれば、
今はPCRセンターも稼働していますし、
幾らでも対応の余地はある筈です。
正式な紹介であるなら勿論お受けしますが、
それもなく「他の医療機関に行け、と言われたから来た」
というのはあまりに無責任ではないでしょうか?
でも、結局は患者さんからお叱りを受けるのはこちらなのです。

ブルーになります。

また近隣の小児科のクリニックですが、
3歳未満の子どものRT-PCR検査は対応していない、
と言って、
乳幼児の検査をこちらに廻して来るんですね。
勿論正式な紹介などではなく、
患者さんが探して連絡をされるのです。
そりゃないよね、何のための小児科なのかしら。
途中からはそのクリニックは、
濃厚接触者で子供が熱を出したと言うと、
連絡を受けただけで、
見做し陽性で発生届を連発するようになったのですが、
聞くとただちょっと咳や鼻水が出る程度のお子さんが、
皆見做し陽性で検査せずに届が出されています。
さすがに全てがコロナというのは無理がある状態で、
見做し陽性がこのように、
単に診察したくない、検査もしたくない、
という患者さんや医療機関の都合だけで、
科学的裏付けなく連発されている現状は、
あまりに酷いと思います。

⑤まとめ
現場は混沌としていて疲弊しています。

クリニックでもスタッフがもう2人、
お子さんの濃厚接触者で休んでいる状態です。

どうにかやりくりして仕事は続けていますが、
通常の業務以外に、
感染者の届け出や健康観察など、
以前は保健所が担っていた業務の多くを、
担わされている状態なのは、
とても理不尽に感じます。

現状を混乱させている元凶は、
軽症者が多く感染力が非常に強いという、
オミクロン株の特性に合った対策がないからで、
デルタ株の時の対策に、
オミクロン株の水際対策時の対策が乗っかって、
一時的に非常に厳しい対策になったのですが、
その後市中感染に移行したということで、
その上乗せの対策のみがなくなったのですね。
そうすると、結局はデルタ株の時の対策が、
そのまま適応される状態が続いているのです。
これが全ての元凶のように個人的には思います。

一刻も早くオミクロン株に合致した対策に、
シフトチェンジをして頂きたいと思います。

まだまだ書き残したところはあるのですが、
長くなり過ぎましたので、
今日はこのくらいにしたいと思います。

皆さんは良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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