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新型コロナウイルス抗原自宅検査のリスクについて [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

毎日バタバタの状況でありまして、
不定期の更新になっていることをお許し下さい。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナ抗原試験のピットフォール.jpg
JAMA Internal Medicine誌に、
2022年1月31日ウェブ掲載された、
新型コロナの抗原検査を、
家で施行する場合の問題点を、
心理的な実験で検証した論文です。

現状新型コロナウイルス感染症の診断のスタンダードは、
遺伝子の特徴的な部分を増殖して判定する、
RT-PCR検査です。

ただ、検査には時間が掛かるため、
迅速な診断には向いていないことが難点です。

抗原検査キットは、
専用のキットを使用すればその場でも、
簡単に結果が出せる点が利点です。

そのため、感染症の流行が拡大して、
全ての感染者や感染が疑われる人が、
医療機関や検査センターを受診して、
検査を受けることが困難な場合には、
自宅で自分で検査をして、
その結果を元にその後の方針を立てることが、
国内外を問わず行なわれています。

ただ、抗原検査は万能ではありません。

検体の採取は通常鼻腔から行ないますが、
鼻の中に綿棒を入れて自分で鼻水や粘液を採取することは、
かなり抵抗のあることなので、
鼻の中が乾燥していて傷みがあるような時には、
検体が適切に採取出来ないこともしばしばあります。

また検査は一定の抗原量がないと陽性にはなりませんから、
はっきり発熱などの症状がある時には、
抗原量も多いことが多く、
感染していれば陽性になることが多いのですが、
無症状やそれに近い状態では、
感染していても陰性になることも想定されます。

実際、クリニックにおいても、
鼻腔からの抗原検査では陰性で、
それでも症状はコロナの可能性が高い、
というような事例で、
RT-PCR検査を施行してこちらは陽性、
というようなケースを多く経験しています。

従って抗原検査は、
発熱などの症状があって感染機会もあり、
接触歴も疑われるような人で、
陽性の結果が出た場合には、
「ほぼ感染している」と判断して良いのですが、
感染を疑わせる症状があっても陰性の場合には、
感染の可能性が否定された訳ではないと考えて、
適切な隔離や療養を行なう必要があります。
また、症状がなく、感染機会も想定されない時に、
抗原検査も陰性であれば、
積極的に隔離を行なう必要はない、
という判断は出来るのです。

それでは、一般の方が自宅で抗原検査を自分で行なった場合、
どの程度適切な判断が下せるのでしょうか?

今回の研究はアメリカにおいて、
18歳以上の360名の一般住民に、
色々な条件で自宅で抗原検査を施行し、
それが陽性だったり陰性だったりした時の、
個人の反応をシミュレーションして検証を行っています。

実際に検査をするのではなく、
たとえば、ワクチンを接種していなくて、
発熱した時に、抗原検査が陰性であったら、
どのようにしますか?
というような質問に答えてもらうのです。

その結果、
抗原検査が陽性、という情報があると、
その状況が感染リスクが高いかどうか、
症状があるかどうかにはかかわらず、
95%の方が自分は隔離が必要という判断をしていました。

その一方で、
臨床的に感染リスクが高く、
実際には検査が陽性であっても陰性であっても隔離が必要、
と臨床的には思われるケースであっても、
一旦検査が陰性という情報があると、
何の指示も受けていない人の24%、
公的機関の指導のみを受けた人の33%、
より具体的な感染防御についての指導を受けた人でも14%は、
隔離の必要性を認識していない、
という結果が得られました。

つまり、検査には限界があり、
隔離の必要性の有無は、
検査と臨床症状や感染リスクを、
総合的に判断した上で考えるべきだと、
そうした説明を事前に受けていても、
検査が陰性であると、
無視できない確率で、
隔離の必要性を否定する人が存在する、
ということになります。

その一方で検査が陽性であると、
指導を受けているかいないかに関わらず、
大多数の人が隔離の必要性を理解して行動するようです。

上記研究では通り一遍の説明ではなく、
より具体的な感染防御についての指導を受けていると、
検査陰性の感染者が感染を広げてしまう、
というリスクを、
一定レベルは回避出来ると想定されていて、
そうした教育が感染防御には不可欠であるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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