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仕事の認知刺激の認知症予防効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で、
午前午後とも石田医師が外来を担当する予定です。

どうも腰は痛いし肩も痛いしという感じで、
身体はかなりボロボロでしんどい状態です。
何とか今日1日踏ん張れるか、という感じで、
日々を送っています。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
脳トレと仕事.jpg
British Medical Journal誌に、
2021年8月18日ウェブ掲載された、
仕事の質と認知症のリスクについての論文です。

どの職業が認知症になりやすい、というようなものは、
一般向けの面白トリビアとしては、
昔から結構あるのですが、
それほど科学的根拠のあるものではありません。
ただ、今回の検証は職業的ストレスモデルに基づいて、
仕事の区分けを行なって、
それを一種の「脳トレ」と考えている点がユニークで、
検証もこうしたものとしては、
精緻に行われているという印象です。

認知症予防には常に脳を使え、
というようなことは、
誰でも体感的にそうかな、と思うところですし、
実際に「脳トレ」のようなソフトが広く使用されているのも、
「脳を使うことによって認知症を防ぐ」
という目的があることは間違いがありません。

ただ、実際には信頼性の高い臨床研究において、
「脳トレが認知症の予防になる」という知見が、
得られたことはありません。

少数例の検証で、
脳トレをすることによって、
記憶力の指標が改善した、
というようなものはあるのです。

ただ、それは一時的な効果であって、
それが持続して認知症の予防に繋がる、
というようなことは言えないのですね。

こうした趣味的なものでは、
矢張り認知症の予防にまでは結び付かないのではないか、
というのが現状の認識なのです。

そこで注目されるのが「仕事」の効果です。

よく定年を迎えた仕事人間の男性が、
退職して間もなく認知症を発症する、
ということがあります。
これは仕事をしている状態で脳が刺激されていたのが、
仕事をしなくなることでその刺激がなくなり、
認知症の発症に繋がったのでは、
というような説明をされることが多いと思います。

つまり「仕事」には一定の認知症予防効果があるのでは、
ということをこの事実は示唆しているのです。

ただ、どんな仕事でもそうした効果があるのか、
と言う点については疑問です。

今回の研究では1つの仮説として、
仕事の要求が大きく、職務裁量も大きいような仕事を、
「認知刺激療法」として機能する仕事と仮定して、
それを仕事の要求も職務裁量も小さな仕事の従事者と比較し、
認知症の発症リスクの検証を行なっています。

これはJob Demand-Controlモデルと言われるものを元にしているのですが、
要求される仕事の量が多く、それをコントロール出来る裁量が、
職場で認められている仕事を「active job」として、
モチベーションの上昇する仕事とし、
逆に要求される仕事量も少なく、裁量も少ない場合を、
「passive job」として、
モチベーションは低下し、
ストレスにも過剰に反応しやすい状態になる、
と分析しているものです。

欧米の7つの疫学研究に含まれる、
トータル107896名の住民データを解析したところ、
モチベーションの高い仕事に従事していた住民では、
1万人当たり4.8人という認知症の罹患率に対して、
モチベーションの低い仕事に従事していた住民では、
1万人当たり7.3人という罹患率で、
ここから年齢などの因子を補正した結果、
モチベーションの高い仕事による認知刺激は、
認知症の発症を、
23%(95%CI:0.65から0.92)有意に低下させている、
という結果が得られました。
更に認知症の発症リスクになる、糖尿病などの疾患の影響を補正しても、
18%(95%CI:0.68から0.98)の低下が有意に認められました。

この認知症予防効果は、
登録後10年以内でも、
40%(95%CI:0.37から0.95)の低下が認められ、
10年以降では、
21%(95%CI:0.66から0.95)の低下が認められました。

更に認知症のリスクになると想定されている、
脳神経の再生(軸索形成やシナプス形成)を、
阻害する働きを持つ複数の蛋白質の血液濃度との関連を見ると、
モチベーションの高い仕事では低い仕事と比較して、
そうした蛋白の濃度は低下していて、
その高値と認知症の発症との間には関連が確認されました。

このように、
モチベーションの高い仕事には、
認知症の発症リスクを低下させる可能性があり、
確実とは言えませんが、
それが血液中の神経再生を阻害する蛋白の低下と、
関連している可能性が示唆されました。

今後長期的に考えると、
単純作業で指示の通りに業務をこなすだけのような仕事は、
ITやロボットなどの技術で人間の手から離し、
人間は負荷は大きくとも裁量も大きくて、
創造的でモチベーションの高い仕事に従事すれば、
それが認知症の予防にもなる、
ということになるかと思いますが、
何をもってモチベーションの高い仕事とするか、
というのはかなり恣意的な部分もありますし、
一歩間違えば職業差別に繋がるところもありますから、
その判断は非常に難しいところです。

ただ、1つ言えることは、
一番人間が時間を割いて行っている、
「仕事」というものは、
それが上手く機能してくれれば認知症の、
最も効果的な予防になるという事実で、
この事実が労働環境の問題を含めて、
「仕事と健康」という問題を、
より良い方向に進めるきっかけになることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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新型コロナウイルス感染症と心血管疾患リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
新型コロナウイルス感染症と心血管疾患リスク.jpg
Lancet誌に2021年7月29日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症と心血管疾患との、
関連についての論文です。

新型コロナウイルス感染症は、
当初は重症肺炎を来す病気という認識でしたが、
その後全身の血管に炎症や血栓を来すような、
血管の病気という認識に変わりました。

急性心筋梗塞や脳梗塞(虚血性梗塞)は、
この感染症の重症化のリスク因子であると共に、
この感染症の予後を左右する、
重要な合併症でもあるのです。

今回の検証はスウェーデンにおいて、
86742名の新型コロナウイルス感染症の患者を、
感染前後とそれ以外の時期との比較で検証した方法と、
348481名の感染していないコントロールと比較した方法とで、
感染から4週間程度の期間における、
心筋梗塞と脳梗塞の発症リスクを比較検証しているものです。
検証期間はまた、感染症状出現当日を含む場合と、
含まない場合とに分けて解析を行なっています。

その全ての検証において、
新型コロナウイルス発症から特に2週間の間で、
心筋梗塞と脳梗塞の両者の発症リスクは有意に増加していました。

複雑になるので1解析パターンのみ示しますが、
コントロール群との比較で発症当日を含んだ場合、
急性心筋梗塞の発症リスクは6.61倍(95%CI:3.56から12.20)、
脳梗塞の発症リスクは6.74倍(95%CI:3.71から12.20)、
感染発症後2週間で有意に増加していました。

このように、
新型コロナウイルス感染症発症から4週間くらいの時期は、
心筋梗塞や脳梗塞の新規発症が明確に増加しており、
それが感染症自体の予後にも大きな影響を与えています。

従って、その治療には感染そのもののコントロールと共に、
併発する心筋梗塞や脳梗塞への対応も、
同時に行なってゆく必要があるのです。

この感染症の厄介さは、
こうしたところにもあるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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男性の女性ホルモンが血栓症リスクに与える影響について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日で、
診療は午前中で終わり、
午後は産業医面談などで都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
性ホルモンと静脈血栓症.jpg
the Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism誌に、
202年年8月8日掲載された、
男性ホルモンと女性ホルモンのバランスについての論文です。

男性では精巣から、
男性ホルモンのテストステロンが分泌されますが、
その一部はアロマターゼという酵素により、
女性ホルモンであるエストラジオールに変換されます。

一方で女性では卵巣から女性ホルモンが分泌されますが、
この時最初に出来るのは男性ホルモンで、
それが酵素により女性ホルモンに変換されるのです。

また、男女を問わず副腎では、
少量ながら男性ホルモンと女性ホルモンとが分泌されています。

勿論生殖年齢の男女では、
男性では男性ホルモンが優位で、
女性では女性ホルモンが優位な状態なので、
優位な性ホルモンの影響を考えれば、
基本的にはそれで良いのですが、
女性では更年期以降は、
卵巣由来のホルモン分泌はほぼなくなるので、
性ホルモンのバランスはそう単純なものではなくなります。

男性でも年齢と共に、
精巣からの男性ホルモンの分泌は減少し、
そうなると、アロマターゼにより変換された女性ホルモンが、
比率的に無視出来ないものになります。
実際、閉経後の女性に血液中の女性ホルモン濃度より、
高齢男性の血液中の女性ホルモン濃度の方が高いのです。

男性で男性ホルモンが低下すると、
心筋梗塞などの心血管疾患のリスクが増加することが、
これまでの疫学データから明らかになっています。

ただ、このメカニズムはあまり明確ではありません。

仮に女性ホルモンと男性ホルモンとのバランスが問題であるとすると、
男性ホルモンの数値のみでの議論は、
あまり意味のないものであるという可能性もあります。

そこで今回の検証では、
アロマターゼという男性ホルモンを女性ホルモンに変換する酵素の、
活性に関連する遺伝子変異の有無を比較することで、
その因果関係の有無を解析しています。

これは何度かこれまでにも紹介したことのある、
メンデル無作為化解析という手法です。

遺伝子の変異の型というのは、
無作為に生じるものなので、
それにより異なった現象が生じているとすれば、
因果関係に踏み込んだ解析が出来る、
という考え方です。

世界規模の遺伝子情報を収集しているUKバイオバンクの、
臨床データを活用して解析したところ、
男性で女性ホルモンが増加する変異があると、
静脈血栓塞栓症の発症リスクが減少していました。
その一方で男性で男性ホルモンが増加する変異があると、
静脈血栓塞栓症のリスクは増加していました。
また男性の女性ホルモン分泌を増加させる変異は、
虚血性梗塞の発症リスク低下と関連していましたが、
心筋梗塞の発症リスクとは関連していませんでした。

このように、
通常女性ホルモン補充療法で増加するとされる、
静脈血栓塞栓症のリスクが、
意外にも男性においては、
女性ホルモンを増加させるような遺伝子変異で低下していて、
心血管疾患のリスクも、
同様に低下することが推測されました。

つまり、単純に男性ホルモンが低下すると、
心血管疾患が増加するのではなく、
内因性の女性ホルモンとのバランスが、
そこに大きく影響しているという可能性があるのです。

この考え方は非常に興味深く、
今後の検証に期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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妊娠中の新型コロナウイルス感染症のリスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
妊娠中の新型コロナウイルス感染症のリスク.jpg
JAMA Pediatrics誌に、
2021年4月22日ウェブ掲載された、
妊娠中の新型コロナウイルス感染症のリスクを、
比較検証した論文です。

妊娠中の新型コロナウイルス感染症が、
母体にも胎児にも悪影響を与え、
大きなリスクになるという推測は、
その流行の当初から指摘はされていました。

しかし、実際には少数の感染事例のみで、
そうした推測がされていただけで、
信頼のおける多数例の実証的な検証は、
殆どされてはいませんでした。

今回の疫学データは、世界18カ国の43の研究機関が協力したもので、
トータル705名の妊娠中新型コロナウイルス感染事例を、
1424名の感染していない妊娠女性と比較して、
そのリスクを検証しているものです。
その結果、妊娠中に感染した女性は感染していない女性と比較して、
重症感染のリスクが3.38倍(95%CI:1.63から7.01)、
集中治療室に入室するリスクが5.04倍(95%CI:3.13から8.10)、
母体の死亡リスクは22.3倍(95%CI:2.88から172)、
胎児についても重症の合併症や死亡のリスクを、
2.14倍(95%CI:1.66から2.75)有意に増加させていました。

つまり、妊娠中の女性への新型コロナウイルス感染は、
特に母体に大きな悪影響を及ぼします。
最も深刻な重症化要因である、
という言い方をしてもそう間違いではないと思います。

今のデルタ株主体の新型コロナウイルス急拡大を見る限り、
このリスクの高い妊娠された女性を感染から守ることは、
最重要のポイントの1つであることは間違いなく、
多くの人が感染拡大のリスクに無責任かつ無防備になっている現状では、
守るべき対象をクローズアップすることも、
重要な視点の1つではないかと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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妊娠中の新型コロナウイルスワクチンの安全性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
妊娠中のワクチン接種.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2021年4月21日ウェブ掲載された、
妊娠中の新型コロナウイルスワクチンの安全性についての論文です。

妊娠中のワクチン接種の安全性というのは、
非常に微妙な問題で、
簡単にその善し悪しが明言出来るようなものではありませんが、
何故か最近のメディアでは、
「妊娠中のワクチン接種を断られた」というような、
妊娠されている女性の声が、
頻繁に取り上げられていて、
ワクチンの接種をしない医療従事者や行政の担当者を、
非難する意見が「正義」として紹介されています。

それを受けてということなのか、
日本産婦人科学会も8月14日に「妊産婦のみなさまへ」、
という声明を出していて、
そこには妊娠の時期に関わらず、
ファイザー・ビオンテック社もしくはモデルナ社の、
新型コロナウイルスワクチンの接種を、
強く推奨するものになっています。

ただ、実際にそこで根拠として引用されているのは、
査読を受けた論文としては今回ご紹介するものだけで、
それ以外はアメリカなどの関係機関の提言のみです。

上記論文は2020年12月14日から2021年2月28日に、
妊娠中でワクチン接種を受けた、
トータル35619名の妊娠経過と副反応の有無を検証した、
アメリカの疫学データで、
それによると接種部位の痛みは妊婦の方がより多い傾向があった一方、
頭痛、筋肉痛、寒気、発熱については、
妊婦の方が少ない傾向が見られています。

妊娠の経過を観察した3958名中、
全妊娠経過が判明しているのは827名で、
そのうちの13.9%に当たる115名は、
死産もしくは流産になっていて、
86.1%に当たる712名は出産しています。
流産した104名のうち大多数の96名は、
妊娠13週未満での流産でした。
一方で出産した712名のうち大多数の700名は、
妊娠28週以降に初回のワクチンを接種していました。

今回のデータでは、
実際にコントロールと妊婦のワクチン接種後の予後を、
比較している訳ではありませんが、
通常の妊娠経過との比較において、
妊娠中のワクチン接種は、
明確な悪影響を来してはいないと判断されています。

ただ、出産した事例の多くは妊娠の比較的後期に接種されていて、
妊娠初期の接種が流早産の増加や胎児奇形の増加に繋がっていないと、
明確に言い切ることは難しいと思います。

上記の論文においても、
この知見で妊娠中のワクチン接種の安全性が実証された、
というようなことは書かれていません。
それは敢くまで検討中の事項なのです。

現時点での個人的な考えとしては、
妊娠中の新型コロナウイルスワクチンの接種は、
出産直前や妊娠早期(12週前)以外であれば、
本人の意思により接種可としていますが、
妊娠12週前や出産直前では、
場合により妊娠経過に影響を与えるリスクが高いと判断して、
産婦人科担当医の許可を求める方針としています。

妊娠中のワクチン接種は、
それ以外の条件での接種と、
そのリスクにおいて同じとは言い切れないと思うのですね。

従って、通常のワクチン接種とは、
矢張り分けて考えるべきではないかと考えます。
集団接種会場でたとえば問診の内科医が、
その場でその可否を判断せよ、というのは、
無理筋ではないかと個人的には思います。
産婦人科学会もワクチン推奨の提言を出すのであれば、
産科主治医がワクチンを許可する旨の文書を作って、
それを集団接種時に添付するような仕組みを作って欲しいと思います。
そうした具体的な取り組みがあれば、
混乱は防げるのではないでしょうか?

これはまた別の試みですが、
たとえば品川区では、
妊娠されている女性専用の接種機会が、
設けられるようになっています。
それほど日数は多くないのですが、
産婦人科医が問診を行なうという態勢になっているようです。

出来ればこうした機会をより多くして頂いて、
妊娠された女性が、
安心してワクチン接種を受けて頂くような、
そうした取り組みに繋げて頂きたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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東京都梯子を外す [仕事のこと]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

今日は休みですが仕事の話題です。

8月14日にこんなニュースがありました。
職場や会食での感染 周囲への濃厚接触者調査は行わず 東京都 2021年8月14日 11時18分

新型コロナウイルスの急激な感染拡大で保健所の業務がひっ迫しているため、東京都は、保健所が行う感染者の濃厚接触者などの調査の縮小を決めたことが関係者への取材で分かりました。各保健所は患者の健康管理により重点を置くとしています。

急激な感染拡大に伴い、入院調整が難航して自宅待機の患者が増え続けていて多くの保健所ではその対応に追われるなど、業務がひっ迫しています。 この状況を受けて、東京都は、各保健所では患者の病状や重症化リスクを把握して、速やかに適切な医療につなげることに重点を置き、濃厚接触者や感染経路を調べる積極的疫学調査は「優先度を考慮して効果的かつ効率的に行う」とした文書を今月10日付けで都内の保健所宛てに出していたことが分かりました。 都の関係者によりますと、積極的疫学調査の対象は、感染者と同居する家族のほか、学校、医療機関、それに高齢者施設などにとどめ、職場や会食などで感染した場合には、周囲への調査は行わないということです。 積極的疫学調査は、感染の可能性がある人に自宅で待機してもらうなど、大きなクラスターを作らない対策に役立てられてきましたが、感染の拡大に伴う業務のひっ迫で埼玉県も縮小を決めています。 こうした対応について東京の中央区保健所の吉川秀夫健康推進課長は「自宅療養で呼吸困難を訴える患者への対応で手一杯で、やむをえない判断だと思う」と話していました。

これは実際東京都からの文書が、
医師会経由で8月10日より前に出ていたと思います。

ただ、それよりかなり前の時期から、
職場などの濃厚接触者の調査や認定については、
現実的にはあまり行なわれていなかったのですね。

たとえば今年の3月くらいの時期だったと思いますが、
僕が産業医をしている会社で感染者が出たのですが、
隣の席で一緒に働いていた社員でも、
保健所から聞き取りや連絡がある、ということはなく、
1時間を超えるような会議が、
密閉度の高い会議室であって、
幾らマスクはしていたと言っても、
感染リスクは高いと想定される状況でも、
保健所からの検査の指示はありませんでした。

一方で同時期に近隣の小学校で、
学童の感染者が確認された時には、
同学年の生徒全員と教職員全員に、
濃厚接触者としてRT-PCR検査が公費で施行されました。

この時点で既に、
保健所は濃厚接触者の検査を、
学校などにかなり絞り込んでいる、
ということが分かります。

これは実際問題として、
保健所の能力のキャパを超えている、
ということが最大の理由で、
それに加えてこれだけ感染が市中に拡大してしまうと、
濃厚接触者をトレースして感染者を特定しても、
それだけでは感染自体の抑止には繋がらない、
という科学的知見にもよっています。

その代わりに職場には、
産業医や医療機関と提携して、
積極的に濃厚接触者を独自に認定し、
その検査を行なうことが同時に求められています。

これまでは、無症状の濃厚接触者の認定は、
敢くまで保健所がするということになっていたのですね。
勝手に医療機関が公費で検査することは許されてはいなかったのです。
クリニックに「感染者と接触したので心配」と受診される方がいて、
僕がこれは濃厚接触者だと判断しても、
保健所がその認定をするまでは、
公費での検査をすることは出来なかったのですね。

それが今回掌返しとなったのです。

保健所は一切濃厚接触者の職場などでの認定をしないので、
それは職場や産業医、市囲の医療機関で勝手にやってくれ、
ということなのです。

これはやむを得ない変更ではあると思うのですが、
その段取りはあまりに乱暴だと思います。

実際には数ヶ月前から、
そうした状況はあったにも関わらず、
あまり明確な方針転換の説明はなく、
今回はただのファックス1枚で、
関係各所に唐突に連絡がされているからです。

芸能人やセレブとされる方が、
最近とても沢山感染されていますよね。

これ、以前であれば、
「職場に濃厚接触者と認定された人はいませんでした」
というような報道があるのですが、
今は全くそうした報道はありません。

これは要するに保健所は今は、
職場の濃厚接触者について、
何ら調査はしていない、という意味なのですね。

でも、実際には職場や職場の産業医には、
その認定の義務はあるので、
積極的に認定をして、
遺伝子検査を行なわなければいけない筈です。

それがどの程度行なわれていて、
どのような結果になっているのかについては、
テレビ局などは報告する義務があるように思いますが、
そうしたことは行なわれている形跡はありません。

仕方のないこととは言え、
こうした濃厚接触者の認定が、
現場に任されてしまうと、
熱心に検査をする職場もあれば、
殆ど手を付けない現場もある、
ということになり、
殆どそれによる感染のコントロールは見込めない、
ということになります。

家族内感染の抑止については、
こちらも早期の隔離が困難な状況で、
家族個人に任されているという状況です。

つまりは、これまで行なわれていた、
感染拡大抑止のための対策が、
今は全て機能していないのが実際なのです。

今後この状況をどう改善すれば良いのか、
名案などすぐ浮かぶ訳もありませんが、
少しずつ感染が収束に向かうことを信じつつ、
検査と診療を個人的には地道に続けるしかないのかな、
というように思っています。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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抗体カクテル療法の新型コロナウイルス家族内感染予防効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で、
午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
抗体カクテル療法の家族内感染予防効果.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2021年8月4日ウェブ掲載された、
日本でも最近臨床導入された、
抗体カクテル療法の新しい使用法についての論文です。

抗体カクテル療法というのは、
カシリビマブとイムデビマブという、
新型コロナウイルスの2種類の中和抗体を、
注射薬として使用するもので、
これまでの外来患者に対する臨床試験において、
総死亡や入院のリスクを約70%低下させ、
ウイルス量を速やかに減らし、
症状持続期間を短縮させる効果が確認されています。

現行日本においては、
国の管理のもとに応急的な使用が行なわれ、
入院患者に限ってその使用が許可されています。
(8 月13日から宿泊療養にも適応拡大となったようです)

ただ、そもそも抗体カクテル療法は、
病気の初期に使用してこそ意味のあるもので、
感染の拡大や重症化の予防がその目的ですから、
今の日本の使用方法は、
あまりこの薬の特徴に適合したものとは思えません。

感染の蔓延地域においては、
重症化して初めて入院になることが多いので、
その時点ではもう、
抗体カクテル療法は手遅れの可能性が高いからです。
今後宿泊療養者にどのように使用されるのか、
その経緯を注視する必要がありそうです。

今回の臨床試験はアメリカとルーマニア、モルドバの複数施設において、
新型コロナウイルス感染症の患者と、
接触してから96時間以内の家族1505名を登録し、
くじ引きで2つの群に分けると、
一方は抗体カクテルを1回の皮下注射で投与し、
もう一方は偽薬を同じように投与して、
28日の時点までの予防効果を比較検証しています。

つまり、実際に感染した患者さんに使用するのではなく、
家族などの濃厚接触者に使用して、
家族内感染予防効果を検証しているのです。

抗体カクテルは静脈注射の用量と同じで、
2種類の抗体がそれぞれ600mgですが、
それを静脈注射ではなく皮下注射で投与している点がポイントです。
これであれば、非常に簡単に使用が可能であるからです。

その結果、
抗体カクテルを使用した753名のうち、
有症状の感染を来たしたのは1.5%に当たる11名で、
偽薬を使用した752名のうち有症状感染者は、
7.8%に当たる59名でした。
抗体カクテル療法の家族内有症状感染予防効果は、
81.4%と算出されました。

RT-PCR検査のみが陽性化した、
無症状感染を含めると、
そのトータルな家族内感染予防効果は66.4%でした。

そして、抗体カクテル療法を受けて有症状感染を来した患者では、
ウイルス量は少なく、
症状の持続期間は有意に短縮していました。

正直もう少し強い予防効果が、
期待されるところではあります。
そもそも今回の対象者では、
偽薬での感染率もかなり低く、
感染力自体がそれほど高いとは思えないからです。
ただ、ここまで明確な家族内感染の予防効果が、
確認された薬剤が他にないことも確かで、
今後この抗体カクテル療法が、
最も有効に活用されることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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品川区梯子を外す [仕事のこと]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は夏の休診期間でクリニックは休診です。

受診予定の方にはご迷惑をお掛けして申し訳ありません。

8月10日の夜にはどうにかレセプトを出して一区切りという感じ。

11日から少しだけ遊びに出たのですが、
夕方になって嘱託医をしている老人ホームから連絡があり、
看取りの入所者の方のチアノーゼが進行している、
という「不幸の電話」のようなお話でした。

それからまた夜遅くに電話があり、
メールがありまして、
今日は朝4時に起きて、
予定は勿論全てキャンセルして、
取り急ぎ老人ホームに向かっている、
という現状です。

そんなに遊んではいないのですよ。

昨日と今日だけどうか自由にしてはくれないのでしょうか?
せめて、10日のことであれば、
幾らでも対応は出来たのですが、
今日の今日ですか、と考えると、
頭がグルグルとしてしまいます。

結局休みゼロで夏季休診期間は終了、
ということになりそうです。

今日は少し新型コロナワクチンの話をします。

僕は基本的には、決まったことについては、
その内容にいささか賛同をしかねる部分があっても、
協力出来るところは協力し、
従うべきところは従うようにしています。

それはワクチンに関しても同じです。

クリニックのある品川区においては、
最初は集団接種という形で、
福祉施設などを利用したワクチン接種が始まり、
それから一部の病院などが、
先行接種会場として認証されました。

それが6月の初めに、
クリニックなどでも個別接種が開始される、
という話になり、
説明会が6月9日にあって、
正式には6月21日からクリニックでも接種を開始しました。

接種対象者は品川区の規定に準ずる、
という形で最初は高齢者を優先する、
ということになっていました。

使用されるのはファイザー・ビオンテック社のワクチンで、
毎週(もしくは隔週)どのくらいの量を接種するのか、
計算して最初は区に、途中からは医師会に連絡をして、
翌週にワクチンが届く(もしくは取りに行く)、
という段取りです。

ワクチンは凍結されているのですが、
クリニックでは解凍して冷蔵保存になります。
当初は冷蔵したらすぐ使い切り、
ということでしたが、
今では1か月は冷蔵で保存可、
ということになっているので、
1か月のスケジュールを立てて、
使い切るように調整をするのです。

ワクチンは原則きっかり3週間で2回の接種を行います。
その3週間後がワクチンの使用期限内であれば、
それを込みで考えれば良いのですが、
期限を外れてしまうと、
次回のワクチンの注文に、
それを反映させなければいけません。

1本のバイアルで6回接種する決まりで、
一旦常温に戻してしまうと、
6時間以内には接種をしないといけないので、
6人をセットで考えて予約を取るのですが、
なかなか思うようにはいきません。

ある全くの初診の方が、
「どうしてもお宅で接種したい」と言うので、
予約を入れたのですが、
当日の接種予定時間の直前になって、
「キャンセルする」と一方的に通知された、
ということがありました。

連絡があるだけましな方で、
全く何の連絡もなく、
ドタキャンということも稀ではありません。

その度に、真面目に死に物狂いで電話を掛けて、
キャンセル待ちの方を探すのです。

それでも調整をしながらワクチン接種を開始したのですが、
まだ7月の中旬、つまり個別接種開始から、
1か月も経たないうちに、
医師会からファックスで通達が来て、
今後ワクチンの不足が予想されるので、
新規の個別接種の予約は一旦中止として下さい、
という一方的な指示がありました。

あまりの段取りの悪さに驚きましたが、
それでも真面目に新規の方はお断りするようにしました。

ただ、前述のように、
ワクチンの計画は先へ先へスケジュールを組まないと成立しないので、
調整期間もなく、明日からこうなりますと言われても、
現場は困ってしまうのが現実です。

それでも皆この理不尽な要求にも抗いもせず、
頑張っているのだろうな、と思っていると、
商店街から仰天するチラシが届きました。

クリニックの近隣に、
健康診断に特化したクリニックがあるのですが、
そこはクリニックであるにも関わらず、
先行接種の対象機関に認定されていたのですね。

そのチラシによると、
そのクリニックの「ご好意」により、
何ら年齢などの制限を設けることなく、
商店街のお店の家族や従業員に、
ワクチン接種を特別に実施する、というのです。

ワクチンが足りないので新規予約を中止しろ、
と言っているのに、
同じ近隣の健診クリニックでは、
商店街に限って新規受け付けを制限なくドシドシ行う、
と言っているのです。

こんな馬鹿な話があるでしょうか?

そればかりではなく、そのクリニックでは、
「うちで区民健診を受けてくれればワクチンも打ちますよ」
という宣伝までしていて、
近隣のクリニックからも苦情が出ているのです。

現状新型コロナワクチンは全て公費で賄われる、
公的接種という扱いである筈です。
その健診クリニックはそれを、
自分達の金儲けのための道具として使用しているのです。

こんなことがまかり通っていることも驚きですが、
それを指導することが出来ない、
品川区や医師会も、
機能していないと言って過言ではないと思います。

このように一部で余って自由に打ちまくっている一方、
足りないので新規予約が中止されたワクチンですが、
8月3日になって、
再び驚天動地のファックスが送付されました。

どういうものかと言うと、
ワクチン不足が深刻化したために、
品川区においては、
12から15歳への接種と、
難病や寝たきりのために集団接種会場での接種が困難な場合以外は、
全ての接種を集団接種会場に一本化して、
個別接種は中止すると言うのです。

この年齢区分の話などは、
それまでに一度も議論されたことはなかったのですね。

にも関わらず、
この通達で急に年齢制限などが記載され、
要するに集団接種で面倒な対象のみを、
個別接種で施行しろ、それ以外は手を出すな、
というような方針が何の前触れもなく決定されたのです。

医師会は本来、
区がそうした理不尽な決定をしても、
それに反対するべき役割の筈ですが、
区の通知の翌日には医師会の同様の文書も配布されているので、
そうした抵抗もしたのかどうか不明のままです。

ワクチンが不足しているから、
対象の絞り込みを行う、
というのはまあ妥当な考え方ではあります。

ただ、その2週間前には新規接種中止の通達が出て、
数日前にはそれは解除するけれども、
ワクチンの配布数は大幅に少なくなる、
という通知が出ているのです。
そこまでは、ワクチンの数は減っても、
接種自体はこれまで通りで継続する、
という方針が示されていたのですね。
それが一転して数日で対象者が大幅に変更され、
ほぼ「打つな」という方針に変更されているのです。
それも「いつからそうする」という日付やスケジュールが、
文書の何処にも明記されていないのですね。

現場でスケジュール作りと、
廃棄ワクチンを作らないために日々努力している、
末端医療機関の我々に対して、
こうした仕打ちはあまりにも不誠実で、
あまりにも無体なものではないでしょうか?

これまで真面目に付き合っては来ましたが、
最近のワクチン供給の迷走ぶりは、
あまりにも現場を無視した酷いもので、
その上一部の医療機関だけが何故か潤うという不公正なものなので、
そろそろ撤退するのが良いのかしら、
それもシャクには触るしなあ、と、
日々悶々としているのが現状なのです。

減らすのはそれでいいんですよ。
ただ、こちらも先を見ながら、
ワクチンの廃棄を避けようと、
スケジュール管理に知恵を絞っているので、
せめて猶予期間などをおいて、
スケジュールを明確化して欲しいですよね。
後、特定の医療機関のみがフリーハンド、
というような不公正は止めて頂きたい。
それから、対象者を限定するのであれば、
これも猶予期間やスケジュールを明確化して欲しいですよ。
数日前とは全く違うことを、
1枚のファックスで通知してそれでお終い、
というのはこちらをあまりに馬鹿にした話ではないでしょうか?

今日は品川区に梯子を外された、
という話題でした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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極私的新型コロナウイルス感染症情報(2021年8月10日) [仕事のこと]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

クリニックは8月8日から夏季の休診期間に入っていますが、
あまり落ち着くという感じはありません。

8月7日には14件のRT-PCR検査を行ない、
12件が唾液で2件は鼻腔よりの検体でした。

そのうち7検体が陽性でした。

8日の午後1時くらいに結果のファックスが来たのですが、
それから皆さんに電話をして結果を伝え、
7件のファックスを区役所の保健予防課に送って、
今度は電話をして補足説明を行ないました。
全てそれを1人でやっているので、
結局2時間くらいの時間が掛かりました。

こんな状態がこのところ連日続いています。

8月9日は祝日ですし、
検査は受けない方針としていたのですが、
実際問題として8日に陽性と判明した方の家族がいて、
間違いなくお子さんを含めて濃厚接触者となるので、
その検査は極力早急に行う必要があると考えました。

それで検査会社に掛け合って9日の集配をしてもらい、
感染者にご連絡をして、
希望の方は翌日にご家族の検査をする段取りにしました。

今日は10日でレセプトを提出しないとならず、
まだチェックが済んでいない状態で、
朝から突貫でレセプト作業と取り組みました。

そんな折から10日の午前中に、
クリニックの近隣の商店街に勤めている、
40代の女性の方から電話が入り、
至急診察をして欲しいとのお話でした。

休診日でしたので、初診の方ですし、
一旦お断りを仕掛けたのですが、
お聞きすると、旦那さんが1週間前から感冒症状があって、
本日胸部痛と呼吸困難が生じ、
救急車を呼んだのだけれど、
自分も熱が上がって来たので診て欲しい、
というご依頼でした。

それでは、とクリニックに来て頂いて、
鼻腔でCOVID-19の抗原迅速検査を行なうと、
これ以上はないくらい綺麗に反応が陽性に出ました。

それで当座の薬をお出ししてお帰り頂いたのですが、
今度は救急隊から連絡が来て、
その方の旦那さんのところに来ているが、
症状は強いものの酸素飽和度は94%でそれほど下がっておらず、
COVID-19かどうかの診断も付いていないので、
病院に搬送するかどうかの判断が難しい。
現時点での情報で20か所くらいの病院を当たっているが、
全て受け入れ困難で搬送が出来ない状態だ、
ということでした。

それでは、ということで、
予防衣を着て手袋、マスク、フェイスシールドを付け、
そのまま徒歩で旦那さんの自宅に向かいました。

旦那さんはドアのすぐ先の三和土のところで横になっていたので、
取り急ぎ、抗原検査を行ないました。
すると、奥さんほどすぐの反応ではありませんが、
抗原は陽性であったので、
COVID-19確定として届け出を保健所に出し、
それが確認次第受け入れ先の病院を再度探す、
という段取りになりました。

クリニックに戻り、
旦那さんと奥さん2人の発生届を保健所に出し、
それを救急隊に告げると、
しばらくして何とか都内の病院に受け入れが決まりました。

この旦那さんのように、
40代くらいでの急変というのは、
最初は軽い風邪症状のような状態が数日続いて、
1週間くらいしてからの重症化が多いようです。

今日はRT-PCR検査の結果が午後4時くらにずれ込み、
今電話と届け出を出し終わったところです。

レセプトはまだ終わっていません。

間に合うのでしょうか?

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも感染防御にはくれぐれもご注意下さい。

石原がお送りしました。
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「ブラック・ウィドウ」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は祝日でクリニックは休診ですが、
午前中は新型コロナワクチン接種で、
午後は濃厚接触者のRT-PCR検査があり、
更にレセプトが追い込みで見通しが立っていません。

今日、明日と果たして乗り越えられるのかしら、
と不安ばかりが募りますし、
ついつい嫌なことばかり考えてしまいます。

まあでも仕方がないですね。

どうにかします。

休みの日は趣味の話題です。

今日はこちら。
ブラックウィドウ.jpg
マーベルのヒーローシリーズの新作が、
今ロードショー公開されています。

と言っても、ディズニーが配信主体に方針変更して、
それに映画館が反対したりしているので、
あまり大々的な公開にはなっていません。
あまり行くことのない平和島の映画館に足を運びました。

まあ配信と同時というのは、もう世の流れですね。
本と同じように、
映画ももうそうした方向に舵を切って行くのだと思います。

マーベルの映画はそれほど丹念に観ていないので、
それほど詳しいという訳ではありません。
ただ、最近は以前よりは好印象です。
慣れて来てしまったのかも知れません。

今回の作品は、
これまでに何度もシリーズで登場して、
もう死亡されている人気キャラブラックウィドウの、
スピンオフ作品です。

シリーズのサーガの途中に挟まる時系列、
ラストは現在から未来にに繋がる感じになっています。
おそらくスカーレット・ヨハンソンは今回で最後で、
妹役のフローレンス・ピューが、
それを引き継ぐことになりそうです。

今回の作品は007を意識したスパイ映画で、
劇中に「ムーンレイカー」の映像が登場しますが、
その辺りのリニューアルという雰囲気です。

ロシアの悪党男が、
女の子の殺し屋軍団を連れているのですが、
これはもう60年代の定番の見世物映画の趣向です。

ただ、今回のポイントは、「疑似家族」にあって、
最後に頼りになるのは偽物の家族の絆だった、
というのは極めて現代的なテーマです。

このように、最近のマーベルの映画は、
結構深い部分で社会問題の考察や哲学的部分があって、
通常の劇映画よりむしろ現代の問題に切り込んでいる、
というところがあります。
先日鑑賞した「プロミシング・ヤング・ウーマン」は、
現実の深刻な問題をアメコミ映画に寄せて描いた作品でしたが、
もうドラマの本道はこうしたところにあるのかも知れません。

ただ、トータルにはもっとスケール雄大で派手な作品が過去にあるので、
小粒で地味な感じは否めません。
クライマックスは、
空中要塞の破壊から、
全てが落下する中での活劇ですが、
これまでにも何度もあったよね、
というような感じでした。

こうしたそこそこのクオリティの、
そこそこ楽しめる娯楽作が、
多くの映画館から締め出しというのは、
とても奇異な感じがしますが、
これも過渡期の現象で、
ここ数年くらいで、
映画を映画館で観るというスタイルは、
一部のマニアのものになってしまうのかも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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