喘息の3剤吸入併用療法の有効性 [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
JAMA誌に2021年5月19日ウェブ掲載された、
喘息の2剤と3剤の吸入薬の併用療法についての論文です。
喘息の治療は複数の生物学的製剤と呼ばれる、
サイトカインに対する抗体などが次々と発売され、
長足の進歩を遂げていますが、
非常に高額な薬であることが大きな問題で、
そうした製剤と比べれば安価な吸入薬を使用して、
如何に喘息の症状をコントロールし、
重症化を予防するかが臨床における1つのポイントとなっています。
喘息の治療の近年の基礎薬は、
吸入ステロイドであることは間違いがありません。
吸入ステロイド剤の単剤でコントロールが困難な場合や、
症状が残存する場合には、
長期間作用性β2刺激剤とという、
持続性の気管支拡張剤がそれに併用されます。
これが2剤併用療法で、
予め両者を一緒に入れた合剤が複数発売されています。
ここまでは国際的ガイドラインにおいても、
その有効性が実証されている治療です。
ただ、この2剤を併用して治療をしても、
コントロールが困難な事例も少なからずあります。
こうした場合に、
最近試みられることが多いのが、
長時間作用性抗コリン剤と呼ばれる、
またメカニズムの異なる気管支拡張剤の吸入薬の上乗せです。
吸入ステロイドに長時間作用性β2刺激剤を上乗せしたのが、
2剤併用療法で、
そこに更に長時間作用性抗コリン剤を上乗せするのが、
3剤併用療法です。
実際に3剤を予め一緒にした吸入薬も、
複数発売されていて、
臨床においても一般的な治療の1つとなりつつあります。
ところが…
実際にはこの3剤併用療法が、
本当に2剤併用療法より優れているのか、
と言う点については、
科学的検証が充分であるとは言えません。
2剤より3剤の方がよりいい筈だ、
という推測によって使用されている部分も大きいのです。
今回の研究はこの3剤併用療法を2剤併用療法と比較した、
これまでの20の介入試験に含まれる、
小児と成人の喘息事例トータル11894名をまとめて解析することにより、
この問題の検証を行なった、
システマティックレビューとメタ解析です。
これまでのデータをまとめて解析したところ、
2剤併用療法と比較して3剤併用療法は、
喘息の急性増悪のリスクを、
17%(95%CI: 0.77から0.90)有意に低下させていました。
ただ、死亡リスクや喘息に関連する生活の質については、
両群で有意な差は認められませんでした。
重篤な有害事象や副作用については、
両群で差は認められませんでした。
このように、
2剤併用療法と比較して3剤併用療法は、
喘息の症状の一部については、より有用であると思われる一方、
トータルな生活レベルや生命予後については、
明確な違いがありませんでした。
今後こうしたデータを元にして、
より実証的な臨床の指針が作成されることを期待したいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
JAMA誌に2021年5月19日ウェブ掲載された、
喘息の2剤と3剤の吸入薬の併用療法についての論文です。
喘息の治療は複数の生物学的製剤と呼ばれる、
サイトカインに対する抗体などが次々と発売され、
長足の進歩を遂げていますが、
非常に高額な薬であることが大きな問題で、
そうした製剤と比べれば安価な吸入薬を使用して、
如何に喘息の症状をコントロールし、
重症化を予防するかが臨床における1つのポイントとなっています。
喘息の治療の近年の基礎薬は、
吸入ステロイドであることは間違いがありません。
吸入ステロイド剤の単剤でコントロールが困難な場合や、
症状が残存する場合には、
長期間作用性β2刺激剤とという、
持続性の気管支拡張剤がそれに併用されます。
これが2剤併用療法で、
予め両者を一緒に入れた合剤が複数発売されています。
ここまでは国際的ガイドラインにおいても、
その有効性が実証されている治療です。
ただ、この2剤を併用して治療をしても、
コントロールが困難な事例も少なからずあります。
こうした場合に、
最近試みられることが多いのが、
長時間作用性抗コリン剤と呼ばれる、
またメカニズムの異なる気管支拡張剤の吸入薬の上乗せです。
吸入ステロイドに長時間作用性β2刺激剤を上乗せしたのが、
2剤併用療法で、
そこに更に長時間作用性抗コリン剤を上乗せするのが、
3剤併用療法です。
実際に3剤を予め一緒にした吸入薬も、
複数発売されていて、
臨床においても一般的な治療の1つとなりつつあります。
ところが…
実際にはこの3剤併用療法が、
本当に2剤併用療法より優れているのか、
と言う点については、
科学的検証が充分であるとは言えません。
2剤より3剤の方がよりいい筈だ、
という推測によって使用されている部分も大きいのです。
今回の研究はこの3剤併用療法を2剤併用療法と比較した、
これまでの20の介入試験に含まれる、
小児と成人の喘息事例トータル11894名をまとめて解析することにより、
この問題の検証を行なった、
システマティックレビューとメタ解析です。
これまでのデータをまとめて解析したところ、
2剤併用療法と比較して3剤併用療法は、
喘息の急性増悪のリスクを、
17%(95%CI: 0.77から0.90)有意に低下させていました。
ただ、死亡リスクや喘息に関連する生活の質については、
両群で有意な差は認められませんでした。
重篤な有害事象や副作用については、
両群で差は認められませんでした。
このように、
2剤併用療法と比較して3剤併用療法は、
喘息の症状の一部については、より有用であると思われる一方、
トータルな生活レベルや生命予後については、
明確な違いがありませんでした。
今後こうしたデータを元にして、
より実証的な臨床の指針が作成されることを期待したいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。