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降圧剤の脳内移行と認知症リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ARBと認知機能低下.jpg
Hypertension誌に、
2021年6月21日ウェブ掲載された、
降圧剤の脳内移行の有無と、
認知機能低下との関連についての論文です。

高血圧は動脈硬化を進行させ、
長期的には認知症のリスクでもあると考えられています。

高齢者における過度の降圧は脳の血流を低下させて、
認知症のリスクになることもありますが、
適切に血圧を下げることは、
認知機能にも良い影響を与えると考えられています。

降圧剤の中でも、
レニン・アンギオテンシン系という、
身体の体液量や塩分量を調整する働きを持つホルモンの働きを、
抑制する作用を持つ、
ACE阻害剤やARBと言われる降圧剤のグループは、
血管の炎症を抑制して、
認知機能の低下を予防する働きがあるとする、
複数の報告があります。

このACE阻害剤やARBには、
血液脳関門を介して脳へ移行するタイプのものと、
移行しないタイプのものがあります。

上記文献の記載によると、
ACE阻害剤のうち、
カプトプリル、フォシノプリル、リシノプリル、ペリンドプリル、
トランドラプリル、ラミプリルは脳内移行可能で、
ベナゼプリル、エナラプリル、キナプリル、モキシプリルは、
脳内移行はしないとされています。

ARBのうち、
テルミサルタン、カンデサルタンは脳内移行可能で、
オルメサルタン、エプロサルタン、イルベサルタン、ロサルタンは、
脳内移行はしないとされています。

それでは、こうした脳内移行の有無と、
降圧剤の認知機能への影響には関連があるのでしょうか?

今回の検証は日本を含む世界6カ国で行なわれた、
14の疫学データをまとめて解析したメタ解析です。
14の研究のトータル12849名のデータをまとめて解析した結果、
脳内移行可能なACE阻害剤やARBは、
脳内移行をしない薬剤と比較して、
認知機能の1つである記憶の想起において、
有意に良好な成績を示していました。

これは、ACE阻害剤やARBの血管の炎症抑制などの効果が、
脳に薬剤が移行することにより、
効率的に作用した可能性を示唆しています。

このデータのみで降圧剤が認知機能に有用である、
とまでは言えませんが、
脳への影響を考えた場合、
ACE阻害剤やARBは、
血液脳関門を通過する薬剤を使用した方が、
良い可能性はありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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