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ワクチン接種後新型コロナウイルス抗体の乳汁への移行 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ワクチン抗体の乳汁への移行.jpg
JAMA誌に2021年5月18日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルスワクチンによって誘導される抗体の、
乳汁中への移行を検証したレターです。

新型コロナウイルスワクチンの接種対象として、
妊娠されている女性や授乳中の女性も含まれていて、
現状妊娠中の女性については、
専門学会では事前に超音波検査などの施行が望ましい、
という条件が外されていない、というような問題があり、
この間のワクチン接種の説明会では、
積極的には推奨されない、
というようなニュアンスの話がありました。
一方で授乳中の女性については、
むしろ積極的な接種対象となるようです。

授乳中の女性はワクチンの臨床試験に対象からは外されていますが、
医療従事者へのワクチン接種においては、
多くの授乳中の女性が含まれていて、
その有効性や安全性についてのデータが蓄積されています。

今回の研究は新型コロナワクチン接種で先頭を走る、
イスラエルでの医療従事者接種からのもので、
ファイザー・ビオンテック社の新型コロナウイルスワクチンを接種した、
授乳中の女性84名の乳汁のサンプル504件を採取し、
ワクチン接種から乳汁中への抗体以降を検証しています。

その結果、
乳汁中のIgA抗体は、
1回目のワクチン接種後2週間で軽度の上昇を示し、
2回目の接種後1週間で急激に増加してピークに達し、
その後は減少しつつ維持されています。

一方で乳汁中のIgG抗体は、
2回目の接種時までは殆ど上昇せず、
2回目の接種後1週間で上昇してピークに達すると、
その後も高いレベルで維持されていました。

これは、他のウイルス抗体などとも一致する結果で、
まず粘膜や腸管などの免疫に関わるIgA抗体が先に乳汁中に分泌され、
その後中和抗体であるIgG抗体が分泌されます。
2回のワクチン接種後にIgG抗体が乳汁中に増加することは、
2回接種の必要性を示唆しています。

抗体を口から飲んでも、
大人では殆どが消化管で分解されて、
有効性は示しませんが、
赤ちゃんはまだ腸管機能が未熟であるために、
一定レベルの乳汁中の抗体が、
血液中に移行して機能すると考えられます。
IgA抗体が先に上昇することは、
赤ちゃんの口からの感染に、
一定の防御を与えると想定されます。

つまり、乳汁中の抗体は、
赤ちゃんの免疫としても、
一定の有効性があると考えられるのです。

現状授乳されている女性のワクチン接種で、
問題となるリスクは報告されておらず、
授乳されている女性のワクチン接種は、
赤ちゃんを守る意味合いからも、
推奨されると考えて良いようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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