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タニノクロウ「虹む街」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
にじむ町.jpg
庭劇団ペニノを率いる、
演劇界きっての大変態(褒めています)、
タニノクロウさんの新作が、
今日までKAAT神奈川芸術劇場の中スタジオで上演されています。

今度は何をするのか分からない、
というような演劇人は今はあまりいませんが、
タニノクロウさんはその数少ない一人で、
毎回想像もつかないような企画を立て、
異常とも思えるような実行力で、
それを演劇という形にして実現させてしまいます。

その姿勢はかつての寺山修司と天井桟敷を彷彿とさせますが、
天井桟敷のお芝居が意外に分かりやすく、
素人にも間口の広いものであったのに対して、
タニノクロウさんの世界はその文体にしても内容にしても、
読解は非常に困難で、
「今この場で表現されていること自体は理解は出来ても、
何故何のためにこうしたことをしているのか、
何の意味があるのか、という点については、
全く理解出来ない」
という気分にさせられます。

台詞の内容やテンポ、リズムについてもそれはあって、
「何故こんなに生理的な心地よさを排して、
無理矢理のように変なリズムと間合いにするんだろう」
とこれも良く分からないのですが、
おそらくタニノさんの脳内リズムは、
僕達とは全く違う部分があるのだろうなあ、
とは思っています。

いずれもしても何が見られるのかと、
毎回楽しみなタニノクロウさんの作品ですが、
こちらにもその理解のためには、
相当な覚悟が必要なのです。

さて、今回の作品は、
KAAT神奈川芸術劇場と提携して、
中スタジオにリアルな横浜の飲み屋街を再現し、
その奥にあるコインランドリーが、
閉店する最後の日を描いたお芝居です。

タニノクロウさん自身を含めて、
プロの役者さんが6人出演し、
それ以外に多国籍の街の実際の住民が、
複数出演して、虚構と現実の境を曖昧にしています。

今回の作品は特に難解な部分はないんですね。
無言劇ではないのですが、
演劇的なやりとりのようなものも殆どなく、
大量のタオルを黙々と洗濯し続けている、
金子清文さんがメインで、
コインランドリーの主である安藤玉恵さんに、
仄かな恋心を寄せているようなのですが、
それは全く成就も進行もしないまま、
明かりが消えて舞台は終わります。

舞台の中で最も演技らしい演技をしているのは、
乾燥機や自動販売機などのコインランドリーの機械達で、
絶妙の間合いでアナウンスが流れたり、
乾燥が始まったり、止まったり、壊れたりします。
人間より機械の方に芝居をさせて、
人間の方はほぼほったらかしで、
台詞らしい台詞も見せ場らしい見せ場も殆どない、
という辺りに、
タニノさんの意地悪さが覗いている気がします。

正直もっと大掛かりなセットや、
細部に異常なほど手の込んだ作り込みをした小道具や装飾、
奇想天外な大仕掛けなどを何度も観た後なので、
少し物足りない感じはするのですが、
通常のレベルからすれば充分手が込んでいますし、
「笑顔の砦」と同じ傾向の、
タノニさんなりの市井の人間ドラマとして、
まずは楽しむことが出来ました。

次は何を見せてくれるのか、
果たして観ても理解が出来るのか、
戦々恐々としながらも、
次の作品を待ちたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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イキウメ「外の道」(前川知大新作) [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。

土曜日はは趣味の話題です。
今日はこちら。
外の道.jpg
独特の難解で哲学的な世界を得意とするイキウメの新作が、
今三軒茶屋のシアタートラムで上演されています。

これはかなり重く終末観に満ちた作品で、
タルコフスキーの「サクリファイス」辺りに似た雰囲気です。

とても美しく、
ラストの描写なども、
あまりこれまでの演劇にない意欲的なものですが、
ちょっとしんどい観劇体験で、
体調のせいもあり、
少し集中の維持には苦労しました。

幼なじみの中年の男女が、
同じ町に暮していて出逢うのが発端で、
そのうちの1人は手品をきっかけとして、
世界の見え方が変わってしまい、
仕事も首になって妻とも別れてしまいますし、
もう1人は闇が世界を侵食するのが見えるようになり、
自分の家族はおろか、自分という存在すら、
見失うようになってしまいます。

ラストは照明と音響の効果によって、
舞台と客席が闇に覆われ、
2人の妄想だけにより世界が再生されることが暗示されて終わります。

舞台はカフェのような待合室のような病院のような謎の空間で、
そこにキャスト全員が集合し、
1時間55分程度の上演時間中、
キャストは一度も舞台を離れることはありません。
外からは獣のような咆哮が響いたりもして、
説明のされない不気味さが漂います。

これはまあ、前川さんのいつもの演出ではあるのですね。

スタイリッシュで抽象的な感じ。
台詞は回想が多いので、
舞台上の時制がどうなのか、
台詞と動きとがどのように連携しているのかが、
特に初見の人には分かりにくいと思います。

僕は正直こうした演出は苦手です。

勿論こうした演出が、
効果的なお芝居というのもあると思うのですね。

それは多分台詞による情景の喚起力が高いというか、
生活に密着したリアルな表現が取られている場合ですね。

たとえば、つかこうへいさんの昔の事務所時代のお芝居は、
殆ど素舞台で上演されるんですね。
それでも生々しい実感があるのは、
台詞に具体性が強くて、
人物だけで観客のイメージが喚起されるからなんですね。

野田秀樹さんのお芝居は、
キャストが全員舞台上に並んでいたり、
セットがただの紙だったりと、
一見抽象性が強いのですが、
台詞は具象的で昔の偉人やピーターパンなど、
登場人物も具体的で、
その衣装などにも遊びはないので、
矢張りセットの抽象性が邪魔にならないのばかりか、
むしろ観客の創造力を刺激する、
というメリットがある訳です。

前川さんのお芝居は、
地方都市などを舞台にして、
その日常の中に異界への扉が開き、
現実が異界に吞み込まれる、
というような設定が定番で、
それを活かすためには、
最初の現実の描写は、
もっとリアルで具象的であった方が、
異界の扉が開いた以降との落差を、
感じやすいように思うんですね。

それが今回のような演出では、
最初から様式的で、得体の知れない待合室のような、
カフェのような空間が出現するので、
「ここは何だろう?」とどうしても思ってしまうでしょ。
そうしたらね、
その場所が具体的に何であるか、
示されないといけないと思うんですね。
でも、結局示されないんですよ。
それはそこが具体的な何かではなくて、
象徴的な場所であるからですね。

でも、それじゃまずいのではないかなあ。
作品の現実感を、大きく削いてしまう結果になるからです。

演技プランとしてもね、
1人の人物の台詞を、
途中で別の人物が引き継いで話したりするんですよね。

このお話でそんなことしちゃ駄目だよね。

どうしてこんな風に、
自分で書いた作品の現実感を、
削ぐような演出をするのか理解が出来ません。

勿論前川さんは凡人及ばぬ天才だと思うので、
そこには天才の理屈があるのだとは推察するのですが、
この作品の活かし方という点で考えると、
今回は失敗であったように思いました。

内容的にもどうなのかしら。
2人の人物の現実感が、
別の形で喪失されてゆくのですが、
それが上手くリンクして、
現実の崩壊に繋がってゆくというロジックが、
上手く機能していないような感じがしました。

ただ、そこもおそらく天才の理屈があるのだと思うので、
現時点では僕には分からなかったのですが、
また再演などの機会に観直せば、
なるほど、と膝を打つような感じになるのかも知れません。

そんな訳で期待して行ったのですが、
ちょっとモヤモヤした感じで劇場を後にしました。

それでも分からないなりにイキウメと前川さんは好きなので、
今後もその舞台には足を運びたいと思います。

最後は規制退場でしたが、
カオスはありませんでした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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1型糖尿病の長期経過と認知機能低下 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
1型糖尿病と認知症リスク.jpg
the Lancet Diabetes & Endocrinology誌に、
2021年5月27日ウェブ掲載された、
1型糖尿病の長期経過と認知機能低下との関連についての論文です。

1型糖尿病というのは、
通常小児期に発症して、
急速にインスリン分泌が失われ、
高血糖が持続するタイプの糖尿病で、
自己免疫的なメカニズムが原因と考えられています。

このタイプの糖尿病は、
昔は治療の方法がなく、
糖尿病性ケトアシドーシスという状態になって、
死亡することも稀ではありませんでした。
それが劇的に変わったのは、
インスリンの注射により血糖を下げることが可能となったからで、
インスリン自己注射による治療の進歩により、
高血糖による死亡というような事態は、
ほぼなくなったと言って良い状態となりました。

一方で長期間インスリン治療を継続することは、
低血糖や高インスリン血症など、
一定の身体にとって有害な影響を伴います。

低血糖は脳神経細胞に障害を起こす可能性がありますし、
高インスリン血症の持続は、
動脈硬化を進行させる危険があります。

そこで問題となるのは、
長期的な認知機能の低下です。

今回の研究は、
2つの糖尿病の大規模疫学研究のデータを活用して、
1型糖尿病の患者、トータル1051名を対象に、
その長期の経過と認知機能経過との関連を検証しているものです。

患者は中間値で27歳の登録時に認知機能の検査を施行して、
その後2年、5年、18年、32年後にも認知機能検査を行ない、
血糖コントロールや低血糖の頻度などとの関連を検証しています。

認知機能は、
記憶効率、精神運動効率(言語機能など)、
精神的効率(注意力など)の3つに分類して計測されています。

その結果、
登録から18年と32年の間で、
認知機能の3つの指標はいずれも低下していました。
登録時から18年後までの低下と比較して、
18年後から32年後までの精神運動効率と精神的効率の低下幅は、
5倍大きくなっていました。

HbA1cの高値、重症の低血糖発症頻度の高さ、
収縮期血圧の高値の3つが、
独立したリスク因子として、
この認知機能の低下と有意に関連していました。
この3つのリスクを併せると、
認知機能低下を9.4年早めると推算されました。

このように、
1型糖尿病の患者さんの経過においては、
認知機能の低下が年齢と共に強く認められ、
その予防のためには、
血糖コントロールを安定させて、低血糖を予防し、
血圧を正常に保つことが、
何より重要であると考えられます。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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レニン・アンジオテンシン系阻害剤の中止が新型コロナの経過に与える影響 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ACE阻害剤の中止とコロナの予後.jpg
the Lancet Respiratory Medicine誌に、
2021年6月11日ウェブ掲載された、
レニン・アンジオテンシン系を抑制する薬剤の使用と、
新型コロナウイルス感染症の予後についての論文です。

新型コロナウイルスは、
人間の気道などにあるACE2という蛋白質を、
目印として結合することが知られています。
このACE2は血管を拡張させて血圧を下げるなど、
通常の状態であれば身体に良い働きがあり、
肺障害に対しても抑制的に働くと考えられています。

その一方で、
ACE2が増加すると、
それだけ新型コロナウイルスの感染が、
促進されるという可能性もあります。

ACE2を増加させる薬の代表は、
ACE阻害剤とARBと呼ばれる薬剤で、
いずれも高血圧や心不全の治療薬として、
臨床的に幅広く使用されています。

それでは新型コロナウイルス感染症の罹患時に、
ACE阻害剤やARBを、
中止した方が良いのでしょうか、
それとも継続した方が良いのでしょうか?

これまでの臨床データにおいては、
ACE阻害剤やARBの使用と新型コロナの予後との間には、
明確な関連はないとする報告が大部分ですが、
一部に悪化が認められたというものがあり、
また改善したというものもあって一定していません。

今回の検証はオーストリアとドイツの複数施設において、
ACE阻害剤とARBを1ヶ月以上継続使用していて、
5日以内に有症状の新型コロナウイルス感染症を発症した、
18歳以上の204名(年齢の中間値は75歳)をくじ引きで2つの群に分け、
一方はそのまま処方を継続し、
もう一方は処方を中断して、
30日の経過観察を行なっています。

その予後の評価は、
SOFAスコアという多臓器不全を数値化した値の、
観察期間中で最も高い(悪い)計測値の比較で行なっています。

その結果30日間におけるSOFAスコアの最高値は、
処方継続群と中止群との間で、
有意な差はありませんでした。
ただ、30日の時点でのSOFAスコアは処方継続群で有意に高く、
30日の時点でSOFAスコアが1以上の臓器障害もしくは死亡の頻度は、
中止群で11%であったのに対して、
処方継続群では23%で、
これも処方継続群で有意に高いという結果でした。

つまり、
トータルには処方を継続しても中止しても、
新型コロナウイルス感染症の予後には、
明確な差は認められませんでしたが、
病状の回復は処方を中止した方が早く、
臓器障害も軽く済む可能性がある、
ということを示唆する結果です。

この問題はかなり患者さんの個別性が高いと思われ、
安易に誰でも継続した方が良いとか、
中止した方が良いとは言えないと思いますが、
盲検ではないものの介入試験において、
こうした結果の得られたことは興味深く、
今後より詳細な検証を期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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新型コロナウイルス感染症のウイルス量と年齢との関連 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は産業医面談で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナウイルス量と年齢.jpg
JAMA Pediatrics誌に、
2021年6月11日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症の患者年齢と、
ウイルス量との関連についての論文です。

新型コロナウイルス感染症には明確な年齢による差があり、
有症状の感染事例について見ると、
小児特に乳幼児においては感染事例は稀で、
肺炎になるような事例は大人が殆どです。

そのため、当初は、
小児には感染しない、というように考えられていましたが、
その後小児における無症状感染や軽症の感染が、
多く報告されるに従って、
小児にも感染はするけれど、
多くは無症状か軽症で終わり、
子供から感染が拡大するリスクは低い、
というように考えられるようになりました。

小児の感染時のウイルス量についても相反する報告があり、
大人と変わらないという報告がある一方、
むしろ多いというような報告もあります。

今回のデータはアメリカにおいて、
感染者の濃厚接触者へのサーベイランスのデータを活用して、
年齢とウイルス量との関連を検証しています。

ウイルス量は、
上気道のRT-PCR検査における、
CT値(Cycle Threshold Values)という指標から、
それを推測して比較しています。

PCR検査はウイルス遺伝子を増幅して検出するもので、
それ自体に定量性はありませんが、
CT値が低いとウイルス量が多いことが示唆されるので、
それを代用指標としているのです。

対象はサーベイランスを行なって遺伝子検査で陽性となった555名で、
平均年齢は33.7歳、そのうちの123名が18歳未満の小児です。
大人の7.2%が無症状感染であったのに対して、
小児の無症状感染は38.2%で、
明確に小児では無症状感染が多いことが分かります。
無症状感染に比較して有症状感染のウイルス量は高く、
それは大人でも小児でも違いはありませんでした。
そして、有症状感染の小児と大人、
無症状感染の小児と大人の間では、
有意なウイルス量の違いは認められませんでした。

要するに、
年齢によるウイルス量の違いはあまりなく、
有症状と無症状においては、
明確に有症状においてウイルス量は多くなっていました。

この点からは、
小児と大人の違いはウイルス量ではなく、
無症状感染の多さにある、
ということになるようです。

それで年齢による感染の広がり方の違いを、
全て説明は出来ないように思いますが、
年齢による感染の状態の違いの中に、
この病気の本質に繋がる手がかりがあることは間違いがなく、
今後の研究の行方を注視したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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デング熱を細菌感染させた蚊で予防する(インドネシアのクラスター介入研究) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
デング熱を感染させた蚊で予防する.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2021年6月10日掲載された、
デング熱の予防のために媒介する蚊を操作する、
というユニークな臨床研究についての論文です。

デング熱は、
蚊が媒介する熱帯から亜熱帯の出血熱の一種ですが、
日本脳炎などと比較すればその病状は軽く、
重症化も比較的稀な感染症です。
日本でも数年前からその流行が確認されています。

特別な治療はなく、
一旦流行するとその媒介する蚊の根絶は、
現実的には困難であるので、
その予防と感染のコントロールのためには、
ワクチンの開発が通常想定される方法になります。

しかし、
デング熱のワクチンは、
これまで長く実用化がされませんでした。

その大きな理由は、
デング熱の特性にあり、
この病気には4種類の異なる血清型が存在するのですが、
そのうちの1種類に感染した患者さんが、
その後に別の種類の血清型のデング熱に感染すると、
初回より重症化してデング出血熱という、
重症型になり易いのです。

そのメカニズムは、
完全には解明されていませんが、
1種類の血清型に感染すると、
不十分な免疫が他の3種類に対しても産生され、
それが別個の感染時に、
過剰な免疫反応を誘発する、
という機序が想定されています。

これを抗体依存性感染増強現象と呼んでいます。

従って、この病気のワクチンは、
4種類の血清型の全てに対して、
均等に免疫を付与するような性質のものでないと、
ワクチン接種で不充分な免疫が誘導されることにより、
却って重症化を誘発するようなリスクがあるのです。

このハードルの高さから、
デング熱のワクチンはなかなか実用化がされませんでした。

2019年にアメリカのFDAは、
初めてのデング熱ワクチンを承認しました。
これは4種類の血清型の抗原を全て含む、
4価の弱毒生ワクチンで、
それを半年の間隔を空けて3回接種します。

このワクチンには一定の有効性が確認されていますが、
その一方で事前にデング熱の自然感染がないと、
その有効性は限定的で、
抗体依存性感染増強現象に近い現象も、
ワクチン接種後の感染では認められるので、
安全性と有効性の双方において、
必ずしも満足のゆくものではありません。

こうした昆虫を媒介するような感染症において、
ワクチン以外に感染をコントロールする方法はないのでしょうか?

衛生環境が改善して蚊が減れば、
それは1つの解決法ではあります。

今回提示された解決法はそれとは異なる非常にユニークなものです。

デング熱を媒介するネッタイシマカに、
通常はこの蚊には感染しない、
ボルバキアという細菌を感染させると、
その感染がデングウイルスの感染と競合するので、
ボルバキアに感染したネッタイシマカは、
デング熱に感染しにくくなります。

通常は感染しない細菌に感染させる、
と言う点ではこれは人為的操作ですが、
蚊の遺伝子を改変する訳ではないので、
蚊自体を変えてしまうということではありません。

ここでボルバキアに感染した蚊を、
人為的に増やしてしまえば、
相対的にボルバキアに感染していない蚊は減少し、
その蚊に媒介されるデング熱も減るのでは、
という理屈です。

普通そこまでは考えても、
実際にやってしまおう、というのは、
相当に勇気のいることだと思いますが、
今回の研究においては、
蚊を媒介とする感染症を減少させようという、
世界的プロジェクトの一環として、
インドネシアのデング熱流行地域において、
クラスター介入研究という臨床研究が施行されました。

インドネシアのジョクジャカルタ市を、
24の区域に分け、
12ずつの2つの群にくじ引きで分けると、
一方にはボルバキアに感染させた蚊を放ち、
もう一方はそれをしないで、
その後3年間程度の経過観察を行っています。

イメージ的には感染した蚊を放してから、
1年後くらいには感染した蚊に大多数が置き換わっていて、
コントロールの地域でも、
2年後くらいにはその比率は増加しています。
これは区域を決めても、移動は出来ますから、
次第にその差は縮まってゆくことが想定されます。

その後地域毎のデング熱の感染者を抽出して比較したところ、
感染させた蚊を放つことにより、
デング熱の発症は77.1%(95%CI:65.3から84.9)有意に抑制され、
デング熱による入院のリスクも、
86.2%(95%CI:66.2から94.3)有意に抑制されていました。

このように、
有効性の高いワクチンと同等の効果が、
細菌感染させた蚊を放つという、
ワクチンなどとは全く異なるアプローチで、
達成された意義は大きく、
これは一時的な効果に過ぎない可能性もあるので、
今後の持続的検証は必要ですが、
動物や昆虫を媒介とする感染症の抑制に、
画期的な手法として、
今後も注目したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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ファイザーワクチン接種後の心筋炎事例(アメリカでの7例報告) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ファイザーワクチン接種後の心筋炎.jpg
Pediatrics誌に2021年6月1日ウェブ掲載された、
ファイザー・ビオンテック社の新型コロナワクチン接種後に発症した、
心筋炎の事例7例をまとめた症例報告です。

アナフィラキシー以外、
大きな副反応や有害事象の報告なく、
世界的に接種が進行している、
ファイザー・ビオンテック社新型コロナワクチンですが、
最近比較的若い年齢で男性主体に、
接種後数日で急性心筋炎を発症する事例が、
複数報告されて注目をされています。

散発的報告がアメリカやヨーロッパであり、
イスラエルの疫学データでは、
18歳から30歳の年齢層の男性において、
2万人に1例の頻度で発症していると報告されています。

アナフィラキシーの事例は女性に殆どであるのと対象的に、
この心筋炎の事例は男性が殆どという特徴があります。

今回の報告はアメリカにおいて、
ファイザー・ビオンテック社ワクチンの2回目の接種後4日以内に、
急性心筋炎もしくは急性心外膜炎を来した、
14から19歳の男児の事例7例をまとめたものです。

事例1は16歳の男性で、
ファイザー・ビオンテック社新型コロナワクチン2回目接種の2日後に、
全身倦怠感と38.3℃の発熱、食欲不振と上半身の痛みを訴え、
救急受診となった事例です。
心電図で房室解離とST上昇を認め、
トロポニンという心筋由来の酵素が上昇。
MRIにて急性心筋炎の所見を認めました。
新型コロナのRT-PCR検査は陰性、
新型コロナの抗体も陰性でした。
免疫グロブリンやステロイドの治療を行い、
3週間で治癒しています。

こうした事例7例が紹介されていますが、
いずれもワクチンの2回目接種後4日以内に発症していて、
いずれも新型コロナの小児感染事例で報告の多い、
川崎病の基準は満たしていません。
新型コロナの遺伝子検査も全ての事例で陰性です。
5例は症状として発熱があり、
6例は新型コロナの抗体も陰性でした。
全ての事例でトロポニンは上昇しており、
MRIで心筋炎に特徴的な所見を確認されています。
7例全てが回復しており、
そのうちの3例は非ステロイド系消炎鎮痛剤のみで治療され、
4例は免疫グロブリンとステロイドが使用されています。

このように、
現状因果関係は不明ですが、
若年男性でワクチンの2回目接種から数日での発症、
という点で共通性があり、
世界各地で同じように報告されていることから、
日本においても特に20歳未満の男性への接種時には、
注意を払って慎重に経過をみる必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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「キャラクター」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
キャラクター.jpg
菅田将暉さん主役のサイコ・スリラーで、
デビュー出来ずに苦しむ漫画家の卵が、
偶然目撃した猟奇殺人事件とその犯人をモデルに、
描いた漫画が大ヒットするのですが、
そのモデルの殺人鬼が、
漫画家の前に登場して、
漫画通りの殺人を犯す、というお話です。

如何にも漫画原作という気がしますが、
これは漫画の原作などを多数手がける作者によるオリジナルで、
それを娯楽作品を多く手がける永井聡監督が演出しています。

殺人鬼をアーティストのFukaseさんが演じ、
脇は小栗旬さん、中村獅童さん、高畑充希さんが固める、
という豪華キャストで、
これは面白くなるのでは、という期待が高まります。

で、勿論期待通り面白かった、
という感想の方もいらっしゃると思いますが、
僕個人の感想としては、
かなりガッカリの出来映えで、
何でこんな風にしてしまったの、と、
疑問が幾つも浮かぶような作品でした。

以下、ネタばれを含む感想です。

鑑賞予定の方は鑑賞後にお読み下さい。
また、少し悪口の感想になりますので、
この作品を良かったと思われた方には、
不快に感じる部分があるかも知れません。
感想は人それぞれということで、
ご容赦頂ければ幸いです。

では続けます。

これね、
何のひねりもない話なんですよね。
同世代の凶悪犯と漫画家が対決するという、
ただそれだけの内容なのですが、
主人公の漫画家はそれなりに人物像が描写されているのですが、
殺人鬼の方はどんな人物なのか、
まるで分からないんですね。
行き当たりばったりに人を殺しているだけのようで、
4人家族に対するこだわりというのも、
宗教的な団体が絡んだりして、
何かありそうかな、と思うのですが、
結局放り出したまま、終わってしまう、
という印象なんですね。
警察が必死で捜査しても捕まらない、
というのもおかしいですよね。

僕はトリッキーな話が好きなので、
ははあ、これは別の真犯人がいるのかしら、とか、
別人が化けているだけなのかしら、とか、
サイコスリラーで、菅田将暉と犯人が同一人物だったり、
菅田将暉が最後に犯人を殺して、
今度は自分が殺人鬼を引き継ぐということなのかしら、
とか、色々考えるのですが、
そうしたことは一切なくて、
裁判で「私は誰でしょう?」みたいなことを言って、
それで終わってしまいます。

オープニングで結構じっくり主人公の生活を描くのですね。
それから殺人事件に遭遇して、
犯人を見てから、創作意欲が沸いて漫画を描いたところで、
物語は急に1年後に飛んで、
もう主人公は売れっ子漫画家になっている、
という展開なんですね。

これどうなのかしら。
普通はその漫画が大ヒット、というところが、
とても内容的に大事な部分でしょ。
それを描かないのは駄目なのじゃないかしら。

漫画と現実の事件との関連も良く分からないですね。
第二の事件が1年後に起こるのですが、
それは最初に漫画で描かれた事件を、
殺人鬼が自分で模倣する、という展開なのですね。
でも、それだと4人家族に対する偏愛を、
既に主人公が知っていた、ということになりますよね。
それおかしいでしょ。
それに連載漫画が1年続いていて、
事件が1つしか起こっていない、というのはどうなのかしら。
ちょっとおかし過ぎないか、
という気がします。

漫画は「34(さんじゅうし」というタイトルで、
3人の仲間が殺人鬼に対決する、
というお話だと説明されるのですが、
その設定が現実に全くリンクしていないですよね。
それだったら、現実にも主人公の仲間が2人いるのが定石でしょ。
その設定がまるでないのもモヤモヤします。

2回目の殺人が漫画を模倣していたので、
警察官の小栗旬さんが主人公にその疑問を尋ねると、
菅田さんはすぐに真実を話してしまうんですね。
その後で犯人と遭遇しますが、
それもすぐ警察にその通りに話してしまうんですね。

これも普通はない展開ですよね。
普通はね、主人公は警察にすぐ話したりしないでしょ。
自分1人で犯人に立ち向かおうとするから、
こうしたお話にはサスペンスが生まれるので、
すぐに警察に話してしまって一緒に協力してしまったら、
犯人は1人(もしくは2人)だけなのですから、
全然犯人側が不利になってしまって、
スリルもサスペンスもないですよね。
定石を敢えて変えようとしたのかも知れないのですが、
結果としては大失敗であったように思います。

主人公が犯人に遭う場面も酷いんですよ。
飲み屋でまず主人公と小栗さんの刑事が話しをしてるんですね。
そこで小栗さんが席を外して外に出ると、
入れ替わりに犯人が入って来て、主人公をびっくりさせて、
それで犯人が去ると、
今度は小栗さんが戻って来るのです。

こんな展開はちょっと不自然過ぎるでしょ。
演劇なら仕方がないですけれど、映画でこれはない、
という気がします。
これだと刑事と犯人が同一人物か仲間ではないかと、
疑ってしまうところですが、
勿論そんなことはなく、
この展開は単なる偶然で終わるのです。

キャストはFukaseさんが弱いんですね。
顔を歪めて、如何にもサイコ、という感じを表現しているのですが、
怖さや迫力はあまり感じません。
ミスキャストとは思わないんですね。
脚本が弱いんですよ。
もっとこの人物の背景に、
不気味な闇みたいなものが描かれていないと、
ただの道化にしか見えないんですね。
とても残念に感じました。

そんな訳で、
引き締まった「ファーザー」のすぐ後で観たせいもあるのですが、
ダラダラと長い2時間余りで、
切ない気分で映画館を後にしました。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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「ファーザー」(フロリアン・ゼレール作 映画版) [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で、
午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ファーザー.jpg
フランスのフロリアン・ゼレールによる戯曲を、
本人が脚色して監督も務めた、
2020年の英仏合作映画が、
今日本公開されています。

フランスの原作を舞台はイギリスに移し、
主役は名優アンソニー・ホプキンスで、
この作品でアカデミー賞の主演男優賞も受賞しています。
脇を固めるのもイギリスの実力派キャストです。

これは面白いですよ。
傑作だと思います。
上映時間が1時間37分というのもとてもいいですね。
物足りない感じは全然ありませんし、
映画というのはこのくらい引き締まっていた方がいいと思います。

これはアンソニー・ホプキンス演じる老齢の主人公が、
認知症を患って進行し、
娘さんが自宅での介護は困難と決断して、
老人ホーム(ナーシングホーム)に入居させるまでの話です。

認知症というのは高齢者社会における、
最大の社会問題ですから、
映画でも勿論多く取り上げられています。
比較的最近でも「アリスのままで」というのがありましたし、
日本では「明日の記憶」や「長いお別れ」などもありましたね。
ただ、テーマがあまりに重いし、それに身近過ぎるでしょ。
映画というのは基本的に娯楽の要素がないと成立しないので、
認知症を娯楽にする、ということは、
そう簡単なことではなく、
上記の3作品も、その点で成功しているとは言えません。

昔は認知症の患者の奇矯な言動を、
笑いものにして娯楽化する、
というようなことが普通に行われていましたが、
勿論今ではそんな演出はあり得ません。

それから演技の問題がありますね。
認知症に限らず、健常者が病気を演技する、
ということ自体が、
今の感覚ではあまり評価をされなくなっています。

でも今回の作品はね、
如何にもフランスらしい知的な方法論で、
認知症という問題を娯楽化することに成功しているんですね。

それがまずとても凄いことです。

どのようにしたかと言うと、
認知症の高齢者の心象風景、その意識の流れを、
そのままに映像化する、という手法を取っているんですね。

最初に娘が1人暮らしの父親を訪れて、
ヘルパーを追い返してしまったことを怒るんですね。
それが次の場面になると、
今度は1人暮らしの筈の父親の家の中に、
傲慢で尊大な男が現れて、
自分は娘の夫だと言い、
それから娘が現れるのですが、
それは最初の場面の娘とは別人なのです。

こうした矛盾した人間関係が続き、
時には時間は円環のように同じ場面を何度も繰り返したり、
過去に不規則に戻ったりもするのですが、
最初は「えっ、これどうなってるの?」と思った観客も、
やがて、これは主人公の老人の心象風景で意識の流れなのだと気づき、
それから「一体何が幻想で何か真実なのか」と、
考えながらドラマを見守ることになるのです。

ミステリーではないのですが、
ミステリー的に観ることが出来るのですね。
最後にはきちんと伏線は回収され、
1つの真実が浮かび上がります。

心理的な裏付けもとても精緻なんですね。
一例を挙げると、
主人公は娘の夫から暴言と暴力を受けるのですが、
その衝撃を受け止めることが出来ないので、
それを最初は別人の行為として再現するんですね。
その後ではその暴力に至る時間を、
何度も何度もループ状に再生し、
そして漸く現実の理解に至るのです。

この映画の原作戯曲は、
2019年に橋爪功さんの主演で、
翻訳劇として上演されています。
ただ、認知症のお芝居で新劇でしょ、
正直とても観に行こうとは思いませんでした。

観劇レポートを読むと、
頻回の暗転でエピソード的に場を繋いでいる演出のようで、
それであると意識の流れを描くという観点からは、
暗転が時間の経過を感じさせてしまうので、
映画の方が向いているようにも感じました。
ただ、同じ人物を複数の人間が演じて、
同じ舞台で入れ替わるような演出は、
映画より舞台の方が効果的、
という気もします。

翻訳劇の時の評論家の文章に、
認知症が進行して、
最後には自分の名前すら言えない状態になり…
というような表現があったのですが、
舞台はともかくとして、
映画版で観る限り、
その解釈は間違っていると思うんですね。

この作品は認知症の進行を見せているのではなく、
主人公が老人ホームに入った時点での、
意識の流れが描かれているんですね。
その証拠に最初に出て来る謎の人物は、
老人ホームの職員であったという伏線があります。
つまり、この映画は主人公の一瞬の時間を、
永遠に拡大して見せているものなのだ、
という言い方が出来ると思います。

これね、認知症の話である割には、
主人公は結構理知的で明晰な部分がありますよね。
アンソニー・ホプキンスの演技も、
当惑はしていても、
進行した認知症という感じはしないですよね。

それがおかしいのではないか、
という意見もあると思うのですが、
そうではないんですね。

これは魂がある、という立場での認知症論なんですね。
魂があるとしたら、それが劣化してボケる、
ということはない筈でしょ。
だから、明晰な魂が、
認知症のために現実と適合することが出来ずに、
シュールな世界で苦悩している、
というのが今回描かれている世界なんですね。

そうした目で見ると、
アンソニー・ホプキンスの演技は、
その本質を理解した見事なものだと言えるのです。

今回の映画は、
認知症の心象世界を娯楽化した、
非常に精緻でユニークな作品で、
理知的な世界が際立っていながら、
ラストの抒情的な雰囲気も素晴らしく、
全ての映画ファンにお勧めしたい傑作だと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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閉経後骨粗鬆症における外傷性骨折の再発リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
外傷性骨折の再発リスク.jpg
JAMA Internal Medicine誌に、
2021年6月7日ウェブ掲載された、
閉経後の骨折の再発リスクについての論文です。

閉経後の女性は骨粗鬆症のリスクが高まり、
その典型的な症状が非外傷性の骨折です。

これは咳をしたりつまづいたりしただけで骨折したり、
何のきっかけもないように思えるのに、
ある日診断される骨折です。

こうした非外傷性の骨折が一度あると、
その後の再発率は非常に高いと考えられています。

その一方で高い場所から転落したり、
交通事故に遭ったりして、
明らかな外傷により起こる骨折もあります。

現状の骨粗鬆症の国際的ガイドラインにおいては、
骨粗鬆症の症状としての骨折は、
非外傷性の骨折に限っています。

しかし、その考え方は本当に正しいのでしょうか?

今回の研究はアメリカの複数施設において施行された、
女性の健康についての疫学研究のデータを活用したもので、
66874名の50歳以上の閉経後の女性を対象として、
平均で8.1年の経過観察を行っているものです。
観察期間中に10.7%に当たる7142名が骨折を経験しています。

ここで、
1回の骨折後に再骨折するリスクは、
骨折していない場合と比較して、
1.49倍(95%CI:1.38から1.61)有意に増加していました。
これを外傷性の骨折と非外傷性の骨折とに分けて解析すると、
外傷性骨折後の再骨折リスクは、
骨折していない場合と比較して1.25倍(95%CI:1.06から1.48)で、
これが非外傷性骨折の場合には、
1.52倍(95%CI:1.37から1.68)の増加となっていました。

このように、
矢張り非外傷性骨折の方が再骨折に繋がりやすい傾向はあるものの、
両群はオーバーラップしており、
外傷性骨折であっても、
少なからず再骨折のリスクは増加していました。

今後はこうした結果も取り入れる形で、
骨粗鬆症の骨折リスクの評価は、
修正される必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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