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新型コロナウイルス感染症は学校のクラスでどのくらい広がるのか? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
スイスの学校の新型コロナ感染.jpg
British Medical Journal誌に、
2021年3月17日ウェブ掲載された、
スイスの学校における新型コロナウイルス感染の広がりを、
抗体検査を繰り返して検証した論文です。

新型コロナウイルス感染の広がりにおける、
学校の役割というのは、
まだ明らかではない事項の1つです。

特に小学校の高学年くらいの年齢以降においては、
新型コロナウイルス感染症の罹患率は、
ほぼ成人と同等だと考えられています。

つまり、子供も大人と同じようにこの病気に移ります。

しかし、有症状の感染自体は子供では少なく、
重症化は極めて稀だと報告されています。

従って、
子供にとってこの病気は、
その通り「ただの風邪」だ、
と言って良いのかも知れません。

しかし、
問題はこの新型コロナウイルス感染症のパンデミックにおいて、
子供が感染拡大にどのくらいの影響を与えているのか、
ということです。

この点については多くの意見があり、
まだ結論に至っていません。

今回の研究は2020年夏に第2波の、
新型コロナウイルス感染症の大流行に見舞われたスイスにおいて、
開校されていた子供が通う学校の、
無作為に選ばれた55の学校の275のクラスにおいて、
2603名の児童生徒に、
2020年の6月から7月と10月から11月に、
新型コロナウイルスの抗体検査を施行し、
クラス内での感染の広がりと、
症状の有無などを比較検証しています。

その結果、
6月から7月に抗体検査を施行した2496名のうち、
74名が抗体陽性で、
10月から11月に抗体検査を施行した2503名のうち、
173名が抗体陽性でした。
初夏と秋に2回抗体測定を行った生徒は2223名で、
最初の検査で陽性であった70名のうち、
40%に当たる28名は2回目の検査では陰性となり、
最初の検査で陰性であった2153名のうち、
5%に当たる109名が陽性となっていて、
これがその間に感染した比率ということになります。

対象となった子ども達を、
6から9歳、9から13歳、12から16歳の、
3つのグループで比較した検討では、
その罹患率には年齢による差は見られませんでした。

55の対象校のうち47校、
その275のクラスのうち90クラスでは、
1名以上の感染者がその間に出現していました。
感染拡大地域にあった130のクラスのうち、
56%に当たる73のクラスでは患者の発生はなく、
38%に当たる50のクラスではクラスの1、2名が感染し、
クラスで3名以上が感染したクラスは、
全体の5%に当たる7クラスのみでした。

つまり、学校のクラスが感染拡大の温床であるなら、
もっと大勢の感染者のいるクラスがあっても良い筈ですが、
殆どそうした事例はなく、
むしろ他の場所での感染が、
反映されているだけのように思われます。

このデータは今後より検証が必要だと思われますが、
少なくとも学校が感染拡大の温床である。
という考え方はあまり根拠のあるものではないと、
現時点ではそう考えておいた方が良いようです。
勿論これは従来型のウイルスについての話で、
変異株についてはまた別の性質を持つのではないか、
という考え方もあることは補足しておきたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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