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新型コロナウイルス感染症に対する抗凝固剤の効果(低分子ヘパリンの用量による比較) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
エノキサパリン.jpg
JAMA誌に2021年3月18日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症に対する抗凝固療法についての論文です。

新型コロナウイルス感染症では、
血管の内膜障害や凝固系の亢進が起こり、
重症の事例では高頻度に静脈血栓塞栓症が生じることが、
報告されています。

その予防のために、
集中治療室に入室するような事例においては、
予防のために抗凝固療法を施行することが、
しばしば実地臨床においては行われています。

ただ、その有効性や安全性についての、
実証的なデータはまだ少なく、
先日British Medical Journal誌の論文をご紹介しましたが、
一定の有効性が認められているものの、
コホート研究でそれほど精度の高いものではありませんでした。

今回の研究はイランの10カ所の専門施設において、
集中治療室に入室した新型コロナウイルス感染症の患者、
トータル562名をくじ引きで2つの群に分けると、
一方は抗凝固剤の低分子ヘパリン、
エノキサパリンを通常量の1日40mg(4000IU)使用し、
もう一方はより高用量の、
1日体重1キロ当たり1mgを使用して、
30日間のフォローアップを行っています。
この研究はスタチンの有効性も同時に比較していて、
今回はそのうちの低分子ヘパリンの用量比較のみの結果です。

その結果、
低分子ヘパリンを通常量で使用しても、
高用量で使用しても、
30日以内の動静脈の血栓症の発症と人工肺(ECMO)の使用、
そして死亡を併せたリスクには、
有意な差は認められませんでした。
有害事象としては重度の血小板減少は、
高用量群のみに認められました。

新型コロナウイルス感染症の重症事例において、
抗凝固療法には一定の有効性が期待されますが、
通常用量より高用量を使用しても、
それだけ有効性が増す、という性質のものではないようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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