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新型コロナウイルス感染症拡大に伴う小児の関与について(イギリスの疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
イギリスの新型コロナ感染の子供の関与.jpg
British Medical Journal誌に、
2021年3月18日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症の拡大に与える、
子供との同居の影響についての論文です。

新型コロナウイルス感染症の感染拡大における、
小児の影響については、
まだ明確なことが分かっていません。

これまでの疫学データにおいて、
小児は新型コロナウイルス感染症には罹り難く、
罹っても重症化はし難いということは確認されています。

インフルエンザのような、
他の「風邪ウイルス」の感染拡大においては、
小児の集団においてまず感染が拡大し、
それが大人に波及することが多いことが知られています。

ただ、新型コロナウイルス感染症は、
大人より小児では感染感受性が低いので、
そうしたことは起こり難いという考え方が一般的でした。

今回の検証はイギリスにおいて、
新型コロナウイルス感染症の第1波(2020年2月1日から8月31日)と、
第2波(2020年9月1日から12月18日)の2つの時期において、
小児との同居が感染に与える影響を比較検証しています。
プライマリケアの医療データ9334392名を対象とした、
非常に大規模なものです。

その結果、
第1波の時期に子供と同居をしているかどうかは、
18歳以上65歳以下の年齢の新型コロナウイルス感染症の、
感染や重症化、生命予後に有意な関連を認めませんでした。

その一方で第2波の時期においては、
0から11歳の小児との同居は、
同居者の感染リスクを6%(95%CI:1.05から1.08)、
入院のリスクを18%(95%CI:1.06から1.31)、
それぞれ有意に増加させていました。
これが12から18歳の小児との同居では、
同居者の感染リスクを22%(95%CI:1.20から1.24)、
入院のリスクを26%(95%: 1.12から1.40)、
こちらも有意に増加させていました。

しかし、
0から11歳の小児と同居している人は、
第1波と第2波のどちらにおいても、
新型コロナウイルス感染症で死亡するリスクも、
それ以外の原因で死亡するリスクも、
いずれも有意に低くなっていました。

このように、
第1波では明確ではなかった、
小児の同居者の感染リスクが、
第2波では明確となっているのは、
1つには第1波の時には行われた学校の休校などの措置が、
第2波では行われなかった点が、
その要因としては考えられます。
ただ、その差はかなり小さなものなので、
矢張りよほど徹底したロックダウンを行う時以外は、
学校を休校させる必要性は高いものではないようです。

それから小児との同居で感染は増加しても、
死亡者は減っているという現象は、
小児から多くの風邪ウイルスに感染することにより、
免疫力がトータルに賦活化して、
他のウイルスのよる感染や、
新型コロナウイルスの感染に対して、
重症化を抑制するような影響があった、
という可能性が推察されます。

要するに、
小児を媒介として、
新型コロナウイルスの感染が広がる、
という側面はあるのですが、
それはインフルエンザに見られるような強い影響ではなく、
小児との同居は、
同居者の生命予後に良い影響を与える可能性もあるので、
単純に良いとも悪いとも言い切れない、
というところなのではないかと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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