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新型コロナウイルス感染症の予後予測(SOARSスコア) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
COVID-19の予後推測モデル.jpg
Thorax誌に2021年3月10日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症の予後判定のための、
簡便な指標についての論文です。

新型コロナウイルス感染症は、
多くは軽症で回復する病気ですが、
一部に重症化して死の転帰を辿るようなケースがあり、
それを早期に見極めることが重要と考えられています。

高齢である以外は特に問題がなく、
症状も軽微であったため自宅待機となっていた患者が、
急変して病院に運ばれたり、
自宅で急死するようなケースがあり、
その予測が困難なことが問題となっています。

それとは逆に、
持病があって高齢であるという理由や、
本人の呼吸苦などの訴えが強いという理由から、
初期の判断で入院適応となったものの、
入院してみると全くの軽症で、
本当に入院が必要な重症患者が、
そのために入院が出来なくなった、
というようなケースも問題となることがあります。

このように、
新型コロナウイルス感染症の初期において、
その患者のその後の経過を予測し、
迅速かつ的確な対応をすることが、
この病気の診療においては重要なポイントです。

しかし、それはそう簡単なことではありません。

胸部CTや心機能関連、凝固関連の血液検査などを組み合わせれば、
そうした予測はある程度可能ですが、
それでは設備の整った医療施設でなければ、
そうした振り分けは出来ないということになり、
沢山の患者さんが集団発生するような事態では、
こうした方法はあまり現実的ではありません。

今回の研究はイギリスにおいて、
5項目の簡単なテストを行うだけで、
その後の病気の重症化を予測可能かどうかを、
実際の事例で検証したものです。

そのテスト項目を一覧にしたものがこちらです。
COVID-19の予後判定の指標の図.jpg
5つの項目をチェックするだけで、
検査値は酸素飽和度のみという点がポイントです。

指先でチェック出来る酸素飽和度が、
92%以下であると1点、
日本人では少ないですが、
BMI30を超える肥満があると1点、
年齢が50歳以上で段階的に1から4点、
呼吸数が1分に24回を超えていると1点、
心血管疾患や脳卒中の既往があると1点、
ということになります。
年齢は80歳以上であると、
それだけで新型コロナの死亡リスクは10倍以上になりますから、
年齢の要素は最も大きいのです。

では、こちらをご覧下さい。
COVID-19の予後判定の有効性の図.jpg
これはテストの点数と入院中の死亡率をグラフにしたものですが、
8点ではほぼ100%が死亡しています。
死亡率は3点以上では明確に高いことが示されています。

この予後予測で注意が必要なことは、
点数の高い人を入院させて治療したとしても、
それで自宅にいるより生命予後が改善するとは限らない、
ということです。
点数が3点以上であれば入院中の死亡リスクが高い、
ということは明確ですが、
分かっていても、
治療により改善するかどうかは、
また別の問題であるからです。

今後死亡リスクの高いことが予測される患者さんに対して、
どのような治療を行ない、
どのような管理を行なえば、
生命予後を改善するこが出来るのか、
それが分かって初めてこうした指標は、
臨床的に意味を持つものであるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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