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喫煙の世代を超える影響について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
別件の仕事で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
喫煙の世代を超えた影響.jpg
Thorax誌に2021年2月4日ウェブ掲載された、
喫煙の世代を超えた影響についての論文です。

喫煙が慢性閉塞性肺疾患や肺癌、
心血管疾患や食道癌などの強いリスクとなり、
トータルに見ても生命予後に悪影響を強く与えることは、
これまでの多くの疫学データにより実証されている事実です。

喫煙率自体は、
特に医療水準の高い国や地域では減少していますが、
そこで問題となることの1つが、
喫煙の次の世代への影響です。

妊娠中の女性が喫煙をしていると、
生まれて来るお子さんの喘息や呼吸器疾患、
肺機能の低下に繋がるという多くの報告があります。
更には孫の世代にも影響を与えるという報告が、
動物実験は一部の疫学データにおいて指摘されています。
祖母が喫煙をしていると、
孫の世代の喘息が増えると言うのです。

これは本当に事実でしょうか?

今回の研究はオランダにおいて、
大規模な世代間研究のデータを用いて、
祖母の妊娠中の喫煙が、
孫の世代に与える影響を検証しています。

対象はトータルで37291名の一般住民で、
25747名の成人と11544名のお子さんが含まれています。
祖母が妊娠中に喫煙していると、
孫の男児は、祖母が非喫煙の場合と比較して、
気管支喘息のリスクが38%(95%CI:1.06から1.79)、
乳幼児期の喘鳴のリスクが49%(95%CI:1.06から2.11)、
肺機能の低下(FEV/FEV%で判定)が4%(-1.91から-0.16)、
それぞれ有意に増加していました。

性差があるなどちょっと微妙な結果ですが、
これまでの同種の研究と同じ結果が得られていて、
こうした現象があること自体は事実であるようです。

それでは何故こうした現象が存在するのでしょうか?

エピジェネティクスと言って、
DNAの配列に関わらない遺伝子の調節機構があり、
それは生殖細胞を介して、
子供や孫の世代にも伝わると考えられています。
こうしたエピジェネティック情報によって、
喫煙による体質の変化が、
子供から孫の世代まで伝わっているという仮説が、
提唱されているようです。

そのメカニズムはともかくとしても、
こうした現象があること自体は非常に興味深く、
今後の慎重な検証の継続を期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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