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「ミナリ」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ミナリ.jpg
2020年製作のアメリカ映画ですが、
韓国の移民の一家が主人公で、
会話の殆どは韓国語です。
こういう企画が成立するというところに、
韓国の今の勢いを感じますね。

1980年代に南部農場経営に乗り出した一家は、
夫婦と子供2人の4人家族で、
夫婦は意見の対立が絶えず、
妻は韓国から自分の母親を呼び寄せて、
5人での暮らしが始まります。

異文化対立の話かと思いの外、
黒澤明監督の「八月の狂詩曲」みたいな話で、
祖母と孫との交流が幻想的な自然の風景の中で描かれ、
祖母を襲う悲劇からその様相は大きく姿を変えます。

韓国系アメリカ人の監督の、
自伝的なドラマなのだと思います。
前半は正直それほど乗れなかったのですが、
後半物語が様子を変えてからはグイグイと惹き付けられ、
ラストの展開は非常に衝撃的で感銘を受けましたし、
心に染みました。

これね、
結果的に悲劇のままで終わるのに、
鑑賞後の気分はとても爽やかなんですね。
題名のミナリ(せりのこと)がとても効いています。
上手いなあと感心しました。

家族の描き方や、
変人で神秘主義者のアメリカ人の描き方など、
何となくモヤモヤするところもあり、
正直好みは分かれる感じの映画ですが、
ラストは文句なく素晴らしいので、
人間の強さと弱さ、家族の絆の素晴らしさを、
しみじみ感じられる良い映画として、
まずはお勧めしたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は祝日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
シン・エヴァンゲリオン.jpg
エヴァンゲリオンの新劇場版の4作目にして完結編が、
今ロードショー公開されています。
155分という長尺ですが、
冒頭のパリ上空の攻防戦から、
ド迫力かつ斬新でシュールな映像美が展開され、
その軟弱至極の幼児性と内向性を容認出来る人には、
まずは納得の展開と映像が待っています。

エヴァンゲリオンには特段の思い入れはないのですが、
昨年の第一回緊急事態宣言の時に、
テレビシリーズとその映画版、
新映画版の3作品を一気見したので、
今回はスムースに内容に入り込むことが出来ました。

以下少しネタばれがあります。
鑑賞予定の方は必ず鑑賞後にお読み下さい。

これね、
妻を失ったマッドサイエンティストが、
妻を甦らせるだけのために、
世界を滅ぼして、
幻想の中で再創造しよう、
という話なんですね。
それを阻止しようとする息子と、
対決するというのが骨子です。

もともとそういう話だったのだと思うのですが、
別の使徒という敵に対して、
父と息子が一緒に戦うという構造で始まったので、
話がややこしくなっています。
それが新劇場版の3作目で父と子が袂を分かち、
そもそもの形に回帰したのではないでしょうか?

今回はラストで人間を捨てた父と息子が、
幻影の世界で一騎打ちで戦うので、
最後に串刺しで終わるというのも定番の趣向ですし、
そこに全てのエヴァンゲリオンと使徒の姿が重なるので、
なるほど、
「さらば、全てのエヴァンゲリオン」というのは、
間違いはないよね、という感じはします。

良くも悪くも非常に精神的に虚弱な世界なので、
あまりその世界観に共感は出来ないのですが、
その映像は圧倒的でかつ前衛的です。
3DCGを駆使していながら、
手描きアニメに、実写、静止画やデッサンと、
目まぐるしくそのタッチは変貌し、
ミニチュアセットの特撮映像を、
そのままアニメ化したような場面まであります。
単純に凝っているというだけではなく、
今のCGアニメーションの枠組みを、
大きく超えて先を目指そう、
というような気概を感じます。

これは大画面でないと、
真価を感じられないと思います。

そんな訳で「祭りの終わり」という悲しさもあるのですが、
スターウォーズのへっぽこ完結編と比べれば、
斬新で先鋭で意欲的な作品で、
凄い映画であることは間違いがありません。

ただ一点、狙いであるのは分かるのですが、
クライマックスで世紀の駄作、
「さよならジュピター」の主題歌が流れたのには、
かなり脱力はしました。
あれはロードショーで見て、
ともかく詰まらなくて恥ずかしかった映画です。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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肺癌検診ガイドライン(2021年アメリカ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
肺がん検診の指針.jpg
JAMA誌の2021年3月9日号に掲載された、
肺癌のスクリーニングについての、
アメリカ予防医学作業部会(USPSTF)がまとめた、
ガイドラインの解説記事です。

肺癌のリスクとして最も大きなものは喫煙で、
そのためヘビースモーカーでは、
低線量の胸部CT検査の検診を行うことで、
一定の有効性が示されています。

2013年のUSPSTFの勧告では、
年齢が55から80歳で、
1日20本のタバコを30年以上に相当する喫煙者か、
それに相当する喫煙歴があって15年以内であれば、
毎年1回の低線量胸部CT検査が、
肺癌検診として有用であるとされていました。

その後の最新の知見を加えた今回の勧告では、
年齢が50から80歳で、
1日20本のタバコを20年以上に相当する喫煙者か、
それに相当する喫煙歴があって15年以内であれば、
毎年1回の低線量胸部CT検査が、
肺癌検診として有用であると細部が変更されました。

年齢が5歳若い時点から対象となり、
タバコの本数自体も、
もう少し少ない量からが対象となっています。
これはこれまでのデータのリスクの分析から、
もう少し範囲を広げても有用であると確認されたためです。

胸部CT検査による肺癌検診は、
ほぼグローバルスタンダードとなった感があり、
日本でも一部の市町村で導入されていますが、
その適応対象の絞り込みなど、
科学的な検証により、より有意義なものとなることを、
今後期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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新型コロナウイルス感染症の予後予測(SOARSスコア) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
COVID-19の予後推測モデル.jpg
Thorax誌に2021年3月10日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症の予後判定のための、
簡便な指標についての論文です。

新型コロナウイルス感染症は、
多くは軽症で回復する病気ですが、
一部に重症化して死の転帰を辿るようなケースがあり、
それを早期に見極めることが重要と考えられています。

高齢である以外は特に問題がなく、
症状も軽微であったため自宅待機となっていた患者が、
急変して病院に運ばれたり、
自宅で急死するようなケースがあり、
その予測が困難なことが問題となっています。

それとは逆に、
持病があって高齢であるという理由や、
本人の呼吸苦などの訴えが強いという理由から、
初期の判断で入院適応となったものの、
入院してみると全くの軽症で、
本当に入院が必要な重症患者が、
そのために入院が出来なくなった、
というようなケースも問題となることがあります。

このように、
新型コロナウイルス感染症の初期において、
その患者のその後の経過を予測し、
迅速かつ的確な対応をすることが、
この病気の診療においては重要なポイントです。

しかし、それはそう簡単なことではありません。

胸部CTや心機能関連、凝固関連の血液検査などを組み合わせれば、
そうした予測はある程度可能ですが、
それでは設備の整った医療施設でなければ、
そうした振り分けは出来ないということになり、
沢山の患者さんが集団発生するような事態では、
こうした方法はあまり現実的ではありません。

今回の研究はイギリスにおいて、
5項目の簡単なテストを行うだけで、
その後の病気の重症化を予測可能かどうかを、
実際の事例で検証したものです。

そのテスト項目を一覧にしたものがこちらです。
COVID-19の予後判定の指標の図.jpg
5つの項目をチェックするだけで、
検査値は酸素飽和度のみという点がポイントです。

指先でチェック出来る酸素飽和度が、
92%以下であると1点、
日本人では少ないですが、
BMI30を超える肥満があると1点、
年齢が50歳以上で段階的に1から4点、
呼吸数が1分に24回を超えていると1点、
心血管疾患や脳卒中の既往があると1点、
ということになります。
年齢は80歳以上であると、
それだけで新型コロナの死亡リスクは10倍以上になりますから、
年齢の要素は最も大きいのです。

では、こちらをご覧下さい。
COVID-19の予後判定の有効性の図.jpg
これはテストの点数と入院中の死亡率をグラフにしたものですが、
8点ではほぼ100%が死亡しています。
死亡率は3点以上では明確に高いことが示されています。

この予後予測で注意が必要なことは、
点数の高い人を入院させて治療したとしても、
それで自宅にいるより生命予後が改善するとは限らない、
ということです。
点数が3点以上であれば入院中の死亡リスクが高い、
ということは明確ですが、
分かっていても、
治療により改善するかどうかは、
また別の問題であるからです。

今後死亡リスクの高いことが予測される患者さんに対して、
どのような治療を行ない、
どのような管理を行なえば、
生命予後を改善するこが出来るのか、
それが分かって初めてこうした指標は、
臨床的に意味を持つものであるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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極私的新型コロナウイルス感染症の現在(2021年3月17日) [仕事のこと]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は産業面談で都内を廻る予定です。

今日は新型コロナウイルス感染症の現況です。

今年の2月以降はRT-PCR検査の件数はガクッと減りました。
陽性者も2月は2名のみで、
今月も今のところ2名のみです。
陽性者はいずれも濃厚接触者で症状は非常に軽症です。
症状からの判断はほぼほぼ無理、
というような事例ですね。
東京の救急病院の医師に話を聞いても、
重症の入院事例は殆どないという状況であるようです。

ただ、その一方で東京の感染者数は、
1日300名を切らない状態が続いています。

感覚としては、
「一体どこで感染しているの?」
と言う感じなのですが、
気を付けている人はもう充分気を付けているでしょうし、
ここから更に減らすとすれば、
もう人の流れを物理的に止めるしかない、
ということになるのだと思います。

人の流れが増えていること自体は間違いがなく、
東京のような大都市に関しては、
感染を完全に抑え込むには、
人の流れ自体を止めないと無理なのが、
残念ながら実際であるようです。

重症者も減っていますし、
医療体制自体は余裕がある状態だと思います。

ただ、これで緊急事態宣言を解除するでしょ。
誰でも想定出来ることですが、
すぐに感染者は1000人や2000人にはなりますよね。
気を付けている人がどんなに気を付けていても、
一定数の「飲み屋やカラオケでどんちゃん騒ぎ」という人は、
これはもういなくなることはないので、
人の流れが解除によって増えれば、
それだけで感染者数が増加するのは自明の理です。

でも打つ手なしという感じですね。

リバウンド防止の対策と言うと、
結局医療体制の強化と検査数の増加、
みたいなことになるでしょ。

でも、今は患者が少ないのに医療体制を強化しても、
それこそ全て公費で賄うのでなければ、
医療機関が赤字になるだけですよね。
ただ、行政は繰り返しそうした言い方をするので、
一般の方は、
「何で1年前から医療体制の強化をしろ、と言っているのに、改善されないんだ。患者が1000人でも300人でも、同じように大変、というのはおかしいじゃないか」
と思われると思いますし、
それに簡単に反論できないのが難しいところです。

一般の方のイメージとしては、
感染拡大を見据えて、
たとえば1000人入院出来るような施設を、
最初から確保しておけ、
ということだと思うのですね。

でも、設備だけでは駄目で、
人員もそれだけ確保しないと駄目でしょ。
それを1000人になることを予想して、
300人のうちに用意しておくというのは、
現実的ではないと思います。

検査についてはね、
たとえば嘱託医をしている特別養護老人ホームがあるのですが、
今月の初めに、
職員全員のRT-PCR検査が実施されたのですね。
結果は全員陰性だったのですが、
今のところ今回1回きりなのですね。

こうした計画性のないことをしても、
それで老人ホームの集団感染の予防にはならないですよね。
無症状の人に1回だけ検査をしても、
これはもう暗闇に闇雲に鉄砲を撃ち込むようなもので、
全く効率的ではないからです。
これね、行政検査ではなくて、
委託事業として自費検査をしているPCRセンターが請け負っているんですね。
本人確認もない郵送検査で、
陽性になったら、個別に医療機関を受診して下さい、
ということなんですね。
これじゃ、行政が自費検査のセンターに、
儲けさせているだけ、のように思えてなりません。

ワクチンも色々事情はあるのでしょうが、
遅々として進まない感じですよね。

国立病院機構とか、そうしたところの接種は、
行なわれてはいるんですね。

でも、たとえば品川区でも、
まだ通常の医療従事者の接種も、
アンケートで人数確認をしただけで止まっているんですよ。
「都の方針が出ていない」というのがその理由の1つらしいのですが、
何で方針が出ないものやら、
話を聞いても訳が分かりません。

少なくとも僕も接種は出来ていません。

人の流れを減らす以外の方策としてはね、
病院や高齢者施設のクラスターを阻止するために、
そこの職員のワクチン接種は急ぐ必要がありますよね。
それだけやればかなり違う可能性はあると思うのですが、
現実にはまだそこまで行っていません。

ある程度医療従事者や高齢者施設の職員、入所者に、
ワクチンが行き渡ってから、
人の流れを緩和するというのが、
筋ではあると思うのですが、
そこまで待っていられないから21日で解除する、
というのが既定方針であるようです。

そんな訳でまだ先行きは多難と思われますが、
感染防御に留意しつつ、
今後も自分に出来ることを日々こなしながら、
「多くの医者は楽をしている」と言われないように、
気を引き締めて診療に当たりたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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魚の摂取と心血管疾患リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
魚の摂取と健康.jpg
JAMA Internal Medicine誌に、
2021年3月8日ウェブ掲載された、
魚の摂取量と健康への影響についての論文です。

現行のWHOなどの国際的ガイドラインにおいては、
週に少なくとも2単位(175グラム)の魚を食べることを、
心血管疾患の予防のための生活習慣として推奨しています。

魚にはEPAやDHAなどの、
脂質バランスを改善する働きを持つ脂質が多く含まれていて、
魚を多く摂る人は心血管疾患のリスクが低いとする、
多くの疫学データが存在しています。

ただ、そうした効果が明確なのは、
心血管疾患リスクが高い群が多く、
もともとリスクが低い群では明確ではありません。
また、EPAやDHAをサプリメントとして使用した臨床研究の多くでは、
その心血管予防効果は確認されていません。

今回の研究では、4つの世界規模の疫学研究のデータを、
まとめて解析することで、
この問題の再検証を行っています。

まずPURE研究という、
世界21カ国の147645名の、
その多くは心血管疾患のない一般住民を対象とした研究の解析では、
1ヶ月に魚を50グラム以下しか摂らない人と比較して、
週に350グラム以上と多く摂る人は、
心血管疾患リスクや生命予後において、
明確な差を認めませんでした。

その一方で世界40カ国の心血管疾患を持つ、
3つの疫学研究に含まれる、
世界40カ国のトータル43413名を解析した結果では、
1ヶ月に魚を50グラム以下しか摂らない人と比較して、
週に175グラム以上摂る人は、
主要な心血管疾患のリスクが16%(95%CI:0.73から0.96)、
総死亡のリスクが18%(95%CI:0.74から0.91)、
それぞれ有意に低下していました。
週に350グラム以上とより多い魚の摂取者では、
週に175グラム以上と比較して、
よりリスクが低下する、という傾向は見られませんでした。

青味の魚など、
EPAはDHAを多く含む魚の摂取量のみでみると、
その接種量が5グラム多いほど、
心血管疾患のリスクが6%(95%CI;0.92から0.97)、
低下するという相関が認められた一方、
それ以外の魚の摂取量のみでの比較では、
心血管疾患のリスクの低下は認められませんでした。

このように、
今回の検証においては、
心血管疾患の既往のある人では、
週に175グラム以上の魚を摂取することにより、
心血管疾患のリスクは低下し、
生命予後も改善することが示された一方で、
心血管疾患の既往のない人ではそうした傾向は示されませんでした。
その有効性はほぼ、
EPAやDHAの摂取と相関がありそうですが、
その一方でサプリメントとしてEPAやDHAを摂っても、
同様の効果は再現されないことから、
それ以外の要因もあるという可能性もあります。

そんな訳で、
魚の摂り過ぎは水銀などの残存のリスクもありますし、
現状はお魚を週に2回はメインのおかずにしましょう、
というくらいが健康な食生活の条件として、
妥当なところのように思われます。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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新型コロナ回復後の呼吸器症状と肺機能 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
COVID-19感染後の肺機能.jpg
European Respiratory Journal 誌に2021年掲載された、
新型コロナウイルス感染症回復後の呼吸器症状についての論文です。

新型コロナウイルス感染症の多くは軽症のまま回復します。
これは基本的に変異株以外での集計と思いますが、
症状のある事例のうち81%は軽症で、
感染事例のうち半数近くは無症状と報告されています。

ただ、その一方で軽症の事例であっても、
回復後の体調不良が続くことが、
意外に多いことも次第に明らかになってきています。

クリニックでもそうした感染回復後の、
体調不良や気管支炎様の症状、息切れや微熱などの症状が、
長期間持続するケースを複数経験しています。

今回の検証はドイツにおいて、
新型コロナウイルス感染症と遺伝子検査で診断された患者、
トータル246例を登録し、
感染確認後68±16日(概ね2ヶ月)の時点で、
症状の聞き取りや肺機能検査などを施行しているものです。

患者の年齢は48±15歳で、
91%に当たる224名は未治療で入院も要さず改善しています。
ただ、症状自体は99%に当たる244名で見られています。
入院を要した22名中、集中治療室に入室したのは2名のみでした。

2ヶ月後の経過観察の時点で、
46%に当たる113名には症状がまだ残存していました。
嗅覚障害は感染の時点では66%に当たる162名に認められ、
2ヶ月後にも10名には残存していました。
特に残存率が多かったのは呼吸器症状で、
咳は感染の時点で159名(65%)に認められ、2ヶ月後にも35名(14%)に残存、
呼吸困難に至っては、
感染の時点で76名(31%)であったものが、
2ヶ月後に79名(32%)とむしろ回復後に増えている、
という結果でした。

呼吸機能の幾つかの指標では、
無症状者と比較して有症状者で有意に低いものがあり、
CT検査が施行された17名では、
71%に浸潤影、64%にすりガラス様陰影と、
間質性肺炎の所見が残存していることも確認されました。

このように、発症後2ヶ月を経過した段階においても、
感染者の半数では症状は残存していて、
その全てではありませんが、
肺の炎症などが残存して、
呼吸機能にも影響を与えている可能性が示唆されました。

この病気は軽症が大多数である一方で、
完全な回復にはかなり長期間を要するという特徴があり、
そうした点を踏まえての患者さんのフォローが、
医療の立場からは重要であるように思われます。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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「月影花之丞大逆転」(Yellow 新感線) [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日出クリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
月影大逆転.jpg
劇団新感線の新作が今池袋の東京建物Brillia Hallで上演されています。
このホールは初めてですが、
ミュージカル向けのまずまず観やすいホールですね。
ヒカリエのシアターオーブみたいな感じですが、
外からすぐには入れるのが良いのです。

今回は客席を半分にしての上演です。

新感線としてフルスロットルではない小規模公演、
というように、いのうえひでのりさんが言っていて、
劇場は大きいのですが、キャストは11人だけですし、
内容も木野花さんが座長の劇団のお話ですから、
こじんまりした内容ですよね。
休憩なし2時間5分という上演時間も、
感染リスクを避けるための対策であるようです。

うーん。今回は今一つでしたかね。

劇団ものというのは、結局「劇中劇」になるでしょ。
「劇中劇」はシェイクスピアが得意にした古い形式ですから、
演劇的であることはそうなのですが、
中途半端になりがちですよね。
今回はしかもオープニングが「座頭市」で、
クライマックスが「アルプスの少女ハイジ(トライの家庭教師版)」、
というのも面白みが乏しいと感じました。
せっかく古田新太さんと阿部サダヲさんが対決するのに、
それがハイジとおじいさんの対決というのは、
あまりにしょぼくないですかね。
もっと心浮き立つ対決が見たかったな、
というのが正直なところです。
かつての「新感線名場面集」でも良かったのじゃないかしら。
その辺が今回は少し残念でした。

今回一番元気だったのが木野花さんでしたね。
力押し爆発で素敵でした。
それに比べると古田さんも阿部さんも、
全力とは言い難い感じで、
こちらも少し残念でした。

いつもの新感線女優陣が、
歌に踊りに大活躍というのは良かったですね。
山本カナコさん、中谷さとみさん、保坂エマさんで、
暗闇坂666というアイドルをデスメタルみたいに演じるところ、
素敵でしたね。
もう少し沢山観たいと思いました。

ゲストの西野七瀬さんはさすがでしたね。
いつものやる気があるのかないのか、
分からないような雰囲気なのですが、
それで決めるところは決める、
というのがいいんですね。
最初のX星人は、
いのうえさんもしてやったり、
というところではないでしょうか?

そんな訳で不満もあるのですが、
脱力しつつ楽しめる唯一無二の世界で、
まずは戻って来てくれてありがとう、
という感じのお芝居でした。

頑張って下さい。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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「花束みたいな恋をした」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で、
午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
花束みたいな恋をした.jpg
テレビの恋愛ドラマの第一人者である、
坂元裕二さんのオリジナル脚本を、
こちらもテレビ畑の演出家である土井裕泰監督が演出し、
菅田将暉さんと有村架純さんのゴールデンコンビが主演した恋愛映画が、
今ロードショー公開されています。

如何にも薄手のテレビドラマの映画版、
という感じになりそうな素材ですが、
土井裕泰監督は「麒麟の翼」も良かったですし、
「罪の声」も良かったですよね。
ラストのオチがテレビドラマ的なのがいつも難点ですが、
昔の日本映画を良く研究していることが分かる仕上がりで、
堂々たる日本映画になっていました。

今回もねえ、なかなかいいんですよ。
昔のATG映画みたいな青春映画で、
泥臭いところを充分に残しながら、
全体としては縦横に伏線を張り巡らして、
とてもスタイリッシュに仕上げているんですね。
しつこいくらいにナレーションが入って、
ところどころはうるさく感じる部分もあるのですが、
ポイントになるファミレスの2つの場面は、
じっくりと腰を据えて、
ナレーションに頼らず繊細に仕上げていますよね。
あの2つの場面は長さから見て、
テレビでは無理な場面であったと思います。

この2つの場面はね、
かなり凄いと思います。
後半の場面は泣けますし、
ちょっとこれまでの恋愛ドラマに、
あまりなかったセンスですよね。
重層的な仕掛けがとても効いています。
前半のプロポーズも、
工夫された演出の勝利という感じです。
いいですよ。

これね、好きな本とか音楽とか映画とか生き方とか、
全部がとてもマッチして好きになった2人の話なんですね。

こういうカップルはいますよね。
僕は正直そういうのはないんですね。
そうした人は実際にいて、
羨ましいなあ、というようには思います。
僕の場合は好きなものの話をうっかりするでしょ。
「石原君はどうせそんなものが好きよね」
みたいな言われ方をして、
「畜生、もう絶対好きなものの話なんてしないぞ」
と後悔する、という感じの人生でした。

映画の「ロボコップが好きだ」と言っただけで、
後輩から酔っ払って殴られたこともありましたね。
いや「ロボコップが嫌いだ」と言って、殴られたのかな?
もうどちらなのかすら覚えていません。

好きなもののことを、
普通に好きだと言ったり書いたり出来るようになったのは、
多分相当最近のことです。

価値観や好きなものが同じ2人が同棲して一緒になるでしょ。
経験的にはそうしたカップルは結構上手くいっていますね。
色々とそれなりに山も谷もあると思いますが、
結構上手く切り抜けていくのではないでしょうか?

だから、個人的にはこの話は、
それほどリアルではないと思うのですが、
そうした点も含めて、
フィクションとしては極めて巧みに出来ていると思います。
わざわざ少しありそうにない方に振るのが、
こうした物語のコツで、
そこにリアルさを錯覚させられるかどうかが、
腕の見せ所なのだと思います。

2015年から2020年の、
色々なサブカル的ガジェットが登場しますが、
僕の守備範囲では、
ままごとの「わたしの星」と押井守さん、
舞城王太郎さん、今村夏子さん辺りは好きです。
これ「わたしの星」の再演は僕も観ているのですが、
ちゃんとその時に撮影しているんですね。
ただ、演劇マニアとしては、
主人公の2人は演劇好きとはとても思えないので、
「わたしの星」に行った必然性が、
何か書き込まれていた方が良かったのに、
というようには思いました。

芝居も主役2人ともとてもいいですよ。
有村架純さんはこれが代表作と言ってもいい出来映え。
菅田将暉さんは少し損な役回りなので、
これを代表作と言ったら失礼なのですが、
菅田さんはこういう観客に反発を感じさせる役柄を、
それほど不快にさせずに演じるのが上手いですね。

いずれにしても恋愛映画というジャンルを、
少しアップデートした感のある力作で、
観る人によって感じ方は多分かなり違うと思いますが、
今年必見の日本映画であることは間違いがありません。

相当お勧めです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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脳のアミロイド蛋白の減少が認知機能の低下に与える影響について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
アミロイド蛋白と認知症症状.jpg
British Medical Journal誌に、
2021年2月25日ウェブ掲載された、
治療による脳のアミロイド蛋白の減少が、
認知機能に与える影響についてのメタ解析の論文です。

老年期認知症の代表と言えばアルツハイマー型認知症です。

この病気は物忘れで始まり、
脳の海馬という部分が萎縮することが特徴です。
進行すれば、全ての認知機能が低下します。
アルツハイマー病の脳では、
老人斑という変化と神経原繊維変化という変化が認められます。
老人斑の主成分はアミロイドβ蛋白で、
神経原繊維変化の主成分はタウ蛋白です。

アルツハイマー病で起こる最も初期の変化は、
アミロイドβ蛋白の蓄積です。
このアミロイドβ蛋白は、
正常の神経細胞からも分泌される物質で、
神経の保護やその成長の促進などに、
一定の役割を持っていると考えられています。
つまり、それがあること自体は害ではないのです。

ところが、
この蛋白が重合し凝集することで、
組織に蓄積し、老人斑を形成します。

最近の研究により、
通常のアミロイドβより2個アミノ酸の多い、
アミロイドβ42という変性アミロイドβ蛋白質が、
互いにくっつきやすい性質を持ち、
それが固まることで排泄されずに、
組織に沈着することが分かりました。

アミロイドβ42が凝集し蓄積すると、
髄液のアミロイドβは減少します。
このため現時点で最も早くアルツハイマー病の始まりを診断する検査は、
髄液検査で髄液中のアミロイドβ42の減少を確認することです。

アミロイドβ42の蓄積から10年から15年が経過してから、
今度はリン酸化したタウ蛋白の蓄積が起こります。
(20年とする記載もあります)
異常にリン酸化したタウ蛋白が、
神経細胞内に蓄積し、
それに伴って神経細胞が死滅してゆきます。

アミロイドβ42の蓄積が始まってから、
最短で10年でタウ蛋白の蓄積が始まり、
それから更に15年くらいでようやく物忘れなどの症状が出現します。

つまり、
70歳で発症したアルツハイマー病の最初の変化は、
45歳くらいから既に始まっている、
ということが言えます。

このように、
認知症の症状があって、
アミロイドβの沈着を伴うような脳の変化があれば、
ほぼアルツハイマー型認知症として考えるのが現状の認識です。

タウ蛋白の蓄積自体は、
アルツハイマー型認知症以外でも、
高齢になれば生じることは知られていて、
高齢でゆっくり進行する物忘れなどの症状は、
アルツハイマー型認知症とは別個に、
高齢者タウオパチーと呼ばれていて、
神経原繊維変化型老年期認知症や、
嗜銀顆粒性認知症と病名が付けられています。

アミロイドβ蛋白の沈着が、
アルツハイマー型認知症の原因であるとすれば、
それを抑制したり減少するような薬を使用することにより、
認知機能の改善も見込める筈です。

しかし、これまでの多くの臨床試験において、
薬剤による認知機能の改善は確認されていません。

今回の研究はアミロイドβにターゲットをおいた薬剤の、
14の臨床試験のデータをまとめて解析することにより、
アミロイドβの脳内での減少が、
認知機能に与える影響を検証しています。

その結果、
薬剤によって脳内のアミロイドβの蓄積が減少しても、
それは認知機能の有意な改善には結びついていませんでした。

おそらくアミロイドβをターゲットにした治療では、
認知症の予防や治療には結びつかない可能性が高く、
アミロイドβの蓄積は、
認知症の1つの明確な所見であることは間違いがないとしても、
その原因ではない可能性が高そうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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