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南アフリカ変異ウイルスに対するファイザー/ビオンテック社ワクチンの有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
B.1.351変異のワクチン有効性.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2021年2月17日ウェブ掲載された、
南アの変異株「B.1.351」に対する、
ファイザー/ビオンテック社の新型コロナウイルスワクチンの、
有効性を検証した短報です。

日本でも当該のファイザーetcワクチンの、
先行接種が開始されていますが、
そこで危惧される事項の1つは、
このワクチンが南アの変異株「B.1.351」に対して、
どのくらい有効なのかということです。

先日ご紹介したように、
この南アで流行し、
日本でも既に散発の事例としては報告されている変異ウイルスは、
人間に感染しても中和抗体の産生が弱く、
場合によっては中和抗体が産生されずに何度も感染を繰り返す、
というかなり深刻な性質を持っています。

南アフリカではアストラゼネカ/オックスフォード大による、
アデノウイルスベクターワクチンの接種が行われましたが、
少なくとも軽症から中等症の若年感染事例について、
このワクチンの有効性が全く認められない、
という衝撃的な結果が報告されています。

冷静に考えて、
この変異ウイルスは人間の中和抗体を充分に誘導しない、
つまり人間の免疫が充分な効果を発揮しないのですから、
最終的には人間の免疫により効果を現すワクチンが、
有効に働かないのもまた理の当然です。

ただ、ファイザーetcやモデルナ社のmRNAワクチンについては、
より強力に免疫を誘導する作用がありますから、
一定の有効性はあるのではないか、
という推測もまた成り立つところです。

今回の短報は実験レベルのものですが、
臨床試験で2回のファイザーetcワクチンの接種を受け、
接種後2から4週間で採取された血清における、
南ア型変異ウイルスを含む複数のウイルス抗原に対する、
中和抗体活性を比較しています。

その結果、
通常のウイルス株と比較して、
南ア型変異ウイルス株は中和抗体の活性が、
3分の2程度に減少していました。

それを図示したものがこちらになります。
B.1.351変異のワクチン有効性の図.jpg

モデルナ社のワクチンについても同様の検証が行われていて、
矢張り通常のウイルス株と比較して、
南ア型変異ウイルスでは、
ワクチンで誘導される、
中和抗体活性の低下が認められています。

これは臨床的な有効性を見たものではないので、
何とも言えない部分がありますが、
アストロゼネカ社etcのワクチンほどではないにしても、
先行する2種類のmRNAワクチンの有効性も、
通常のウイルス株と比較すると、
南ア型変異ウイルス株ではかなり劣る可能性が高く、
今後その対策が急務であるように思われます。

今回の新型コロナウイルス感染症の征圧は、
そう簡単なものではないようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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