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新型コロナウイルスワクチン接種後のアナフィラキシー(ワクチン2種の比較データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
アナフィラキシーとワクチン.jpg
JAMA誌に2021年2月12日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルスワクチン接種後の、
アナフィラキシーの頻度を2種のワクチンで比較した報告です。

多くの新型コロナウイルスワクチンが開発されていますが、
先行して接種されているのは、
ファイザー/ビオンテック社とモデルナ社のワクチンです。
これはいずれもmRNAワクチンで、
ほぼ同等の高い有効性が、
臨床試験で示されています。

この2種のワクチンの副反応として、
現行一番問題とされているのは、
全身性のアレルギー症状であるアナフィラキシーです。

アメリカで2020年12月14日から2021年1月18日の間に、
トータルで9943247回のファイザー/ビオンテック社ワクチンと、
7581429回のモデルナ社ワクチンが接種されていて、
併せて66件のアナフィラキシーが報告されています。

その内訳がこちらです。
アナフィラキシーとワクチンの図.jpg
トータルなアナフィラキシーの発症率は、
ファイザー/ビオンテック社ワクチンが100万接種当たり4.7件に対して、
モデルナ社ワクチンは2.5件で、
以前ご紹介したファイザー/ビオンテック社ワクチン初回接種のみのデータでは、
その頻度はもっと高くなっていましたが、
これは初回接種時のアナフィラキシーの頻度が、
高いことが影響していると思われます。
つまり、初回接種時の発症率については、
概ね1万接種に1回程度、と想定した方が良いようです。
ただ、モデルナ社のワクチンの方が頻度が低いとは言い切れません。
モデルナ社のワクチンの方が後から接種が開始されたので、
アレルギー素因のある人が接種を控えることも、
多くなったと想定されるからです。

この表を見て頂くと分かるように、
症状の傾向自体は2種のワクチンでほぼ同一です。
興味深いのは殆どの事例が女性に発症していることで、
この事実の説明は上記文献では触れられていません。
女性の接種率が多いためだという説明がありましたが、
90%を超える女性比率は、
とてもそれで説明出来るとは思えません。

以前の報告と同じように、
接種後のアナフィラキシー事例の多くは、
アレルギー素因がある人に発症していて、
アナフィラキシーの既往も3割程度で認められていました。

いずれにしてもアメリカの報告を見る限りは、
ワクチン接種後のアナフィラキシーの発症率は、
概ね許容範囲のもので、
その発症を想定してエピネフリンの準備や、
入院ベッドを確保するなどの対策と共に、
アレルギー素因の有無のチェックが、
重要であると考えられます。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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