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新型コロナウイルス感染症に対するスタチンの効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
COVID-19へのスタチンの有効性.jpg
Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology誌に、
2021年掲載された、
新型コロナウイルス感染症の予後に対する、
スタチンの有効性についての論文です。

新型コロナウイルス感染症に対しては、
これまでに多くの薬剤が使用されていますが、
明確に予防効果や治療効果の確認されたものは、
殆どないのが実際です。

新型コロナウイルス感染症は糖尿病や心血管疾患など、
慢性の基礎疾患があると重症化しやすいことが知られています。
こうした病気の患者さんでは、
スタチンと呼ばれるコレステロール合成酵素の阻害剤を、
コレステロールを低下させる目的で使用していることが多く、
スタチンの使用の予後への影響が議論されています。

新型コロナウイルスは、
ACE2受容体に結合して人間の細胞に感染しますが、
スタチンは基礎実験において、
心臓のACE2を増加させる作用が報告されています。
これを字義通りに考えると、
スタチンの使用は新型コロナウイルスの感染を、
促進する方向に働く可能性が考えられます。
スタチンは新型コロナウイルス感染症の予後を、
悪くするかも知れないという推測です。
その一方でスタチンには抗炎症作用など、
感染の予後を改善する可能性のある、
多くの作用を持つ薬剤でもあります。

それでは、実際にスタチンを使用することで、
新型コロナウイルス感染症の予後には、
差があるのでしょうか?

今回の研究では韓国において、
遺伝子検査で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と診断された、
トータル10448名の患者を解析し、
スタチンの使用の有無と、
患者の予後との関連性を検証しています。

全患者の5.1%に当たる533名がスタチン使用者で、
これを他の条件をマッチさせた、
1066名のスタチン未使用患者と、
1対2でマッチングさせて比較を行なっています。

その結果、
登録後60日以内の死亡リスクは、
スタチンの使用により36%(0.637; 95%CI:0.425から0.953)
有意に低下していました。
また肺炎で入院した患者の解析でも、
スタチンは同様の死亡リスク低下を示していました。

今回のデータは、
最初から患者を登録して、
スタチンの使用と非使用とで比較した、
というようなものではないので、
その結果はスタチンの直接効果とは限らない、
という点には注意が必要ですが、
スタチンが新型コロナウイルス感染症の予後を改善する可能性を、
期待させるものであることは事実で、
今後の検証に期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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