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卵とコレステロールの摂取量と心血管疾患リスク(2021年アメリカの疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コレステロールと卵と健康.jpg
PLOS Medicine誌に2021年2月9日ウェブ掲載された、
コレステロールと卵の摂取量と、
心血管疾患リスクについての論文です。

血液中のコレステロール、特にLDLコレステロール値が高いと、
心筋梗塞などの心血管疾患のリスクが高まり、
生命予後にも悪影響を与えるという知見は、
多くの精度の高い疫学データに裏打ちされた事実で、
スタチンに代表されるコレステロール降下剤により、
その数値を低下させることにより、
そのリスクの低減に繋がることもまた、
多くの精度の高い臨床試験で実証された事実です。

ただ、それでは食事のコレステロールを減らせば、
スタチンと同じような心血管疾患リスクの低減作用があるのかと言うと、
その点については明確な結論が得られていません。

以前は食事のコレステロールを、
1日300mg以下にすることが、
国内外のガイドラインにおいて推奨されていましたが、
最近のメタ解析において、
コレステロールの摂取量が、
必ずしも血液中のコレステロール濃度を反映していない、
という知見が明らかになり、
現行のアメリカのガイドラインにおいては、
食事のコレステロールの摂取量の基準値は設定されていません。

卵の黄身には200mg近いコレステロールが含有されていて、
このためコレステロール制限食という観点からは、
卵を制限するかどうかが常に問題となります。

卵の摂取量と健康との関係についても同様の問題があり、
卵を多く食べると心血管疾患リスクが高くなるという報告がある一方、
比較的新しい報告の多くは、
1日1個程度の卵では、
健康面の悪影響はないとする結果になっています。

今回の疫学データはアメリカにおいて、
登録時50から71歳の521120名の一般住民を対象として、
中間値で16年という長期の経過観察を行っています。

その結果、
観察期間中に129328名が死亡し、
そのうち38747名は心血管疾患による死亡でした。

多変量解析の結果、
卵を2分の1個摂取する毎に、
総死亡のリスクが7%(95%CI: 1.06から1.08)、
心血管疾患による死亡のリスクが7%(95%CI:1.06から1.09)、
癌による死亡のリスクが7%(95%CI: 1.06から1.09)、
それぞれ有意に増加していました。

また、コレステロールの摂取量が300mg上乗せされる毎に、
総死亡のリスクは19%、心血管疾患による死亡リスクは16%、
癌による死亡リスクは24%、
こちらも有意に増加していました。

卵の摂取増加による死亡リスクの増加は、
総死亡のリスクの63.2%、心血管疾患による死亡リスクの62.3%、
癌による死亡リスクの49.6%が、
コレステロールの摂取によるものと推測されました。

更にはこの卵の摂取を、
コレステロールを低減した代用卵や、
卵の白身、他の魚やナッツなどの蛋白源に変更することで、
死亡リスクはそれぞれ低減されることも推測されました。

このように、
今回の最新の疫学データにおいては、
明確にコレステロールの摂取と卵の摂取が、
心血管疾患などの死亡リスクの増加と結び付いていて、
最近のメタ解析とはまた異なる結果となっています。

この問題はまだ解決しているとは言えませんが、
コレステロールも卵の摂取も、
どの程度の制限が適切かはともかくとして、
取りすぎは健康に禁物と、
そう捉えておくのが現時点ではバランスの取れた考え方であるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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