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新型コロナウイルス感染症へのアジスロマイシンの効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
COVID-19へのアジスロマイシンの効果.jpg
Lancet誌に2021年2月2日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症に対する、
アジスロマイシンの有効性についての論文です。

新型コロナウイルス感染症に対しては、
多くの治療薬が試みられていますが、
現行国際的なガイドラインにおいて、
その有効性が確認されているのはステロイドのみで、
それに次いでガイドラインにより推奨されているのが、
レムデシビルという注射薬です。
軽症や中等症から使用可能な薬はなく、
この病気の大きな問題点の1つです。

アジスロマイシンはマクロライド系の抗菌薬で、
新型コロナウイルス感染症流行の初期から、
臨床においては使用されることの多い薬です。
マクロライド系の抗菌薬には免疫の調整作用があり、
それが新型コロナウイルス感染症の予後改善に、
一定の有効性のあることが期待されているからです。

今回の研究はイギリスにおいて、
大規模に行われた臨床試験で、
新型コロナウイルス感染症に対する、
アジスロマイシンの有用性を検証したものです。

イギリスの176カ所の病院に入院した、
16442名の新型コロナウイルス感染症患者が登録され、
くじ引きで通常治療とアジスロマイシン上乗せ治療群に分け、
28日間の予後を比較検証しています。
アジスロマイシンは1日500mgを10日間、もしくは退院まで継続する、
という方法が取られています。

その結果、
アジスロマイシンの使用の有無で、
患者の生命予後には差はなく、
入院期間や退院後の生存率、
重症化率にも差は認められませんでした。

今回の検証ではアジスロマイシンの使用は、
治療経過に有害ではありませんでしたが、
その予後に明確に良い影響は認められませんでした。

この病気の有効な治療薬の開発は、
まだまだ紆余曲折が予想されるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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