「プラットフォーム」 [映画]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
2019年製作のスペイン映画で、
所謂「ソリッド・シチュエーション・スリラー」です。
世界政府のようなものがある近未来が舞台のようですが、
特殊な監獄があって、
何百階という階層が上下に広がっていて、
1つの階の独房には2人の囚人が入れられ、
1か月毎に階が無作為(?)に入れ替わります。
一番上の0階には豪華なキッチンがあって、
そこで作られた豪華な料理が、
独房中央にある穴から、
時間毎に下に降りて来る、という仕掛けです。
上の方の階では食事が摂れますが、
下に行くにつれ上の囚人が食い散らかすことで食事は減り、
下の方の階では残飯しか残らない、
と言う結果になります。
主人公は囚人ではないのですが、
何かの権利を得るために取引として収監され、
幾つかの階の囚人や、
囚人ではない収監者と話すうちに、
このシステムを破壊しようと企てます。
食事の奪い合いの殺し合いやリンチがあったり、
カニバリズムがあったりと、
かなりグロテスクで残酷な場面もあり、
ホラー味も強い作品ですが、
基本的にはテーマは至ってまともで、
この社会をもっと良いものに変革しようという、
至極真面目なテーマが描かれています。
得体の知れない残酷過酷な状況に閉じ込められ、
そこで必死にサバイバルをするというお話は、
これまでにも沢山ありますし、
それをグロテスクに描写するという点では、
乙一さんなどを始めとして、
日本の小説でも得意な分野です。
内容的には状況を架空の一種のゲームとして楽しむ、
という趣向のものと、
社会の一種の縮図や比喩として、
それを変革するという意図を持っているものとで、
内容はどちらかに振れることが多いのですが、
この作品に関しては明らかに後者で、
この作品の世界はゲームではなく、
一部の金持ちや特権階級が、
世界の富や食料の多くを食い荒らし、
その不均衡から多くの弱者が貧しく飢えるしかない、
という世界の構造を比喩的に示したものです。
物語は定石通りに展開し、
最初は主人公がこの世界のルールを理解し、
生き残る術を学んでから、
悲惨な出来事が起こり、
最後は仲間と一緒に、
邪魔するものを蹴散らしながら、
最下層を目指します。
ラストは全ての謎が明かされる、
という感じにはなりませんが、
まあ納得のゆく「希望」が示されて終わります。
鑑賞後の感想としては、
思ったより悪くない、観られる映画だった、
という感じです。
ただ、色々な意味で中途半端で、
突き抜けたものはありませんでした。
物語の種明かしを何処までするかは、
それぞれに良し悪しのあるところで、
必ずしも全て絵解きする必要はないのですが、
状況のルールはもう少し明確になった方が良いかな、
という気はしました。
独房にトイレがなく、
排泄の描写もない、というのも、
意図的とは思いますがモヤモヤします。
1か月に一度入れ替わるのは無作為なのかしら?
それとも何かルールがあるのかしら?
この辺りも不鮮明でイライラします。
女殺し屋が囚人を殺しまくるのですが、
それだとすぐにお話が終わってしまいそうですよね。
食事の量は明らかに10階くらいで終わる量ですよね。
銃なども持ち込めるという設定ですが、
それなら力関係がすぐに変わってしまいそうですよね。
結局全ての階を移動して、
武器は刃物くらいでしたよね。
これ、持ち込めるものは限定しないと、
成立しないのじゃないかしら…
とちょっと考えるだけで色々と矛盾があり、
もう少し設定は練る必要があったのじゃないかしら、
というように思いました。
最後に穴をどんどん降りて、
かたっぱしから囚人をなぎ倒すのは面白いのですが、
ちょっとあっさり過ぎましたね。
ここはもっとしつこくやれば、
「マッドマックス」みたいになったのに、
とそれも残念に感じました。
総じてまっとうな社会派目線と、
何でもありの残酷見世物の世界が、
上手くかみ合わずに終わってしまった、
という感じの作品で、
それを両立させた「マッドマックス怒りのデスロード」は、
矢張り世紀の傑作だったのだな、と、
再確認したような気分で映画館を後にしました。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
2019年製作のスペイン映画で、
所謂「ソリッド・シチュエーション・スリラー」です。
世界政府のようなものがある近未来が舞台のようですが、
特殊な監獄があって、
何百階という階層が上下に広がっていて、
1つの階の独房には2人の囚人が入れられ、
1か月毎に階が無作為(?)に入れ替わります。
一番上の0階には豪華なキッチンがあって、
そこで作られた豪華な料理が、
独房中央にある穴から、
時間毎に下に降りて来る、という仕掛けです。
上の方の階では食事が摂れますが、
下に行くにつれ上の囚人が食い散らかすことで食事は減り、
下の方の階では残飯しか残らない、
と言う結果になります。
主人公は囚人ではないのですが、
何かの権利を得るために取引として収監され、
幾つかの階の囚人や、
囚人ではない収監者と話すうちに、
このシステムを破壊しようと企てます。
食事の奪い合いの殺し合いやリンチがあったり、
カニバリズムがあったりと、
かなりグロテスクで残酷な場面もあり、
ホラー味も強い作品ですが、
基本的にはテーマは至ってまともで、
この社会をもっと良いものに変革しようという、
至極真面目なテーマが描かれています。
得体の知れない残酷過酷な状況に閉じ込められ、
そこで必死にサバイバルをするというお話は、
これまでにも沢山ありますし、
それをグロテスクに描写するという点では、
乙一さんなどを始めとして、
日本の小説でも得意な分野です。
内容的には状況を架空の一種のゲームとして楽しむ、
という趣向のものと、
社会の一種の縮図や比喩として、
それを変革するという意図を持っているものとで、
内容はどちらかに振れることが多いのですが、
この作品に関しては明らかに後者で、
この作品の世界はゲームではなく、
一部の金持ちや特権階級が、
世界の富や食料の多くを食い荒らし、
その不均衡から多くの弱者が貧しく飢えるしかない、
という世界の構造を比喩的に示したものです。
物語は定石通りに展開し、
最初は主人公がこの世界のルールを理解し、
生き残る術を学んでから、
悲惨な出来事が起こり、
最後は仲間と一緒に、
邪魔するものを蹴散らしながら、
最下層を目指します。
ラストは全ての謎が明かされる、
という感じにはなりませんが、
まあ納得のゆく「希望」が示されて終わります。
鑑賞後の感想としては、
思ったより悪くない、観られる映画だった、
という感じです。
ただ、色々な意味で中途半端で、
突き抜けたものはありませんでした。
物語の種明かしを何処までするかは、
それぞれに良し悪しのあるところで、
必ずしも全て絵解きする必要はないのですが、
状況のルールはもう少し明確になった方が良いかな、
という気はしました。
独房にトイレがなく、
排泄の描写もない、というのも、
意図的とは思いますがモヤモヤします。
1か月に一度入れ替わるのは無作為なのかしら?
それとも何かルールがあるのかしら?
この辺りも不鮮明でイライラします。
女殺し屋が囚人を殺しまくるのですが、
それだとすぐにお話が終わってしまいそうですよね。
食事の量は明らかに10階くらいで終わる量ですよね。
銃なども持ち込めるという設定ですが、
それなら力関係がすぐに変わってしまいそうですよね。
結局全ての階を移動して、
武器は刃物くらいでしたよね。
これ、持ち込めるものは限定しないと、
成立しないのじゃないかしら…
とちょっと考えるだけで色々と矛盾があり、
もう少し設定は練る必要があったのじゃないかしら、
というように思いました。
最後に穴をどんどん降りて、
かたっぱしから囚人をなぎ倒すのは面白いのですが、
ちょっとあっさり過ぎましたね。
ここはもっとしつこくやれば、
「マッドマックス」みたいになったのに、
とそれも残念に感じました。
総じてまっとうな社会派目線と、
何でもありの残酷見世物の世界が、
上手くかみ合わずに終わってしまった、
という感じの作品で、
それを両立させた「マッドマックス怒りのデスロード」は、
矢張り世紀の傑作だったのだな、と、
再確認したような気分で映画館を後にしました。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。