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「スワロウ」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で、
午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
スワロウ.jpg
2019年のフランス・アメリカ合作で、
異食症を扱ったちょっと変わった映画です。

これも新型コロナ禍でなければ、
日本で劇場公開はされなかったのではないかしら、
という感じの地味な映画で、
ハリウッド製ではなく、
アメリカが舞台のフランス映画、
というニュアンスの作品です。

妊娠したヒロインが、
「あるべき妻」「あるべき嫁」を求める周囲へのストレスから、
最初は氷から始まって、
次第にピンや紙、土やビー玉など、
色々な物を飲み込むことで、
心の落ち着きを得ることを繰り返してゆきます。

色彩は美しく、
意味ありげな場面や音楽に満ちていて、
「氷の微笑」のようでもあり、
その元ネタのヒッチコックの「めまい」のようでもあります。
なので、何となくサイコスリラーのようなものを期待するのですが、
実際にはそうしたフィクション的なひねりはなく、
「ヒロインのトラウマからの解放と個の自立」
というような真っ当なテーマが真面目に描かれます。

ここでちょっと引っ掛かるのは、
「人形の家」みたいなものがやりたいのであれば、
わざわざ異食症みたいな病態を、
持ち出さなくても良いのではないかしら、
という気がするからです。

たとえばアリ・アスター監督がこのテーマを取り上げれば、
もっとどんどんエスカレートして、
「うげっ!」と言うような展開になりそうでしょ。
勿論そうなって欲しい、という訳ではないのですが、
さんざん病気の症状を興味本位な感じで演出しておいて、
それで全くそうした飛躍はないのであれば、
何のためにそんな思わせぶりなことをしたの、
と聞きたくなってしまいます。

この映画の「異食症」は、
ただ観客の興味を繋ぐための仕掛けとして、
使われているのに過ぎないという点が、
僕の一番納得のゆかない点です。

実際にある病気を、
あまりそうした「仕掛け」として使うのは、
趣味の良いあり方ではないと思います。

その点を除けば物語は至ってまっとうに展開し、
ラストの主人公のトラウマ解決法の是非については、
観客によって評価は異なる点があると思いますが、
その心の旅路は結構説得力を持って描かれています。

そんな訳でまあ、あまり観る価値はなかったかな、
という感じの映画ですが、
意外にウィークデイの映画館は満員に近い盛況で、
何か複雑な思いも感じつつ映画館を後にしました。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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