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新型コロナウイルス感染症の疼痛症状(総説) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
COVID-19の疼痛症状頻度.jpg
Journal of Pain Research誌に、
2021年1月26日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症の疼痛症状についての総説です。

新型コロナウイルスに感染すると、
概ね2から14日の間に、
発熱や咳などの症状で発症する、
というのが一般的な経過です。

ある統計によると、
初発症状としては発熱が98%、咳が76%、
呼吸困難が55%、筋肉痛や全身倦怠感が44%、
喀痰の排出が28%、頭痛8%、喀血5%、下痢3%となっています。
ただ、これは肺炎が主な症状として認識されていた、
流行が初期の段階のデータで、
その後軽症事例も多いことが認識されるようになると、
筋肉痛や関節痛が14.9%、咽頭痛が13.9%、
頭痛が13.6%、というようなデータもあります。
これまでに新型コロナウイルス感染症の症状として、
頭痛、咽頭痛、筋肉痛、関節痛、腹痛、胸痛が、
報告をされています。
その一覧がこちら。
COVID-19の疼痛症状頻度の図.jpg
これまでの臨床データをまとめたものですが、
新型コロナウイルス感染症に伴う各種疼痛の発症率は、
頭痛が1.7から33.9%、咽頭痛が0.7から47.1%、
筋肉痛と関節痛が1.5から61.0%、
胸部痛が1.6から17.7%、腹痛が1.9から14.5%となっています。
大きな幅があるのは、
前述のように対象となる事例が、
入院する肺炎事例なのか、
軽症を含むRT-PCR陽性が確認された有症状全事例なのか、
という点による違いであると思われます。

このように全身の疼痛が多いのは、
この感染症の比較的特徴である、
というように思われます。

また疼痛の強い事例は重症化しやすく、
その予後も悪いことが多い、
と言う点でも報告はほぼ一致しています。
ただ、たとえば頭痛の原因が、
神経系の炎症やウイルスの侵入によるものなのか、
単純に炎症物質の増加によるものなのか、
それとも別個のメカニズムが存在するのか、
というような点については、
現時点であまり明瞭ではないようです。

ちょっと興味深い報告としては、
間欠的にしかRT-PCR検査が陽性にならない、
というような事例で、
検査が陰性の時期に頭痛が強い、
というものがありました。

論文においては新型コロナウイルス感染症の初期診断において、
疼痛の有無が役立つ上昇になる、という記載がありますが、
実際には多くの他の感染症においても、
全身症状としての疼痛は一般的な症状であるので、
あまりそうした役には立たないように思います。

いずれにしても新型コロナウイルス感染症の患者さんを診る時には、
肺炎などの呼吸器疾患と共に、
疼痛などの別個の症状にも、
留意しつつ診療に当たる必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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