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極私的新型コロナウイルス感染症の現在(2021年2月1日) [仕事のこと]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

今日はいつもの新型コロナウイルス感染症の話です。

クリニックのある品川区においても、
新型コロナウイルスの市中感染が減少していることは、
トレンドとしてはほぼ間違いがないようです。

ただ、おそらく2月中は緊急事態宣言は延長されるでしょうが、
それで一定レベル患者数が減少しても、
解除になればまたすぐに増えることはもう、
火を見るより明らかなことですから、
現行の対策を継続している限り、
そのイタチごっこからすぐに解放されることはないようです。

現状市中感染の拡大から、
多くの高齢者施設や医療機関でクラスターが起こっていて、
こちらが収束するにはもう少し時間は掛かることになりそうです。

それでは幾つかクリニック周辺の話題から、
「今」を見てゆきたいと思います。

➀濃厚接触の調査を縮小、の意味について
クリニックへは1月27日くらいに、
品川区保健所から封書が届いていて、
そこには、「COVID-19行政検査の対象について」という題名がありました。

内容は煎じ詰めれば、
これまで保健所が認定していた濃厚接触者認定の業務を、
一時的に医療機関や検査機関などに移管する、
という趣旨のものです。

1月22日には下記のような報道がありました。

東京都、濃厚接触の調査を縮小 保健所が逼迫、高齢者らを重点 2021年1月22日 22時04分 (共同通信)  東京都は22日、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、濃厚接触者などを調べる「積極的疫学調査」の規模を縮小する方針を都内の各保健所に通知した。高齢者など重症化リスクが高い人との関わりを重点的に調査し、全体の規模を縮小。逼迫する保健所の負担を軽減させ、効率的な入院や療養先の調整につなげる狙い。  都によると、調査は医療機関や高齢者施設、障害者施設などが中心となる。飲食店や職場、学校などでの感染は原則として詳しく調べず、各保健所が状況に応じて判断するとしている。

これだけ読んでも何を言っているのかよく分かりませんよね。

少し説明を追加したいと思います。

医療機関から新型コロナウイルス患者の発生届けが出されますよね。
そうすると、保健所は感染の拡大を抑止する目的で、
感染のリスクが高いと想定される「濃厚接触者」を認定し、
14日間の経過観察を指示するとともに、
適宜遺伝子検査の施行を検査センターや医療機関に依頼します。

この場合濃厚接触者の認定は、
保健所によって行われます。

つまり、僕が患者さんの診察をして、
この人は濃厚接触者として検査をしても良いのではないか、
と思っても、
保健所の認定がなければ、
保険を利用しての行政検査の対象にはならない、
自費でなければ検査は出来ない、
ということになるのです。

これが今までのあり方です。

それが年末年始に感染者が急増し、
保健所の業務が逼迫します。

そうなると、
とても全ての事例で濃厚接触者の認定をする、
というような作業が出来なくなるので、
クラスターの発生しているような施設や病院については、
重点的に認定し調査しますが、
一般の住民の市中感染の様なケースでは、
家族くらいは濃厚接触者として認定しますが、
それ以外で職場やプライベートでの接触については、
個々の僕達のような末端の医療機関に任せます、
というのが1月22日の通達の主な意味合いです。

ややこしいのはですね、
都の通達は細かいことを決めている訳ではなく、
大筋の方針を決めているだけで、
どのような範囲で保健所が濃厚接触者の認定をするかは、
個々の地区の保健所がそれぞれに決めなさい、
ということを言っているんですね。

従って、それが地区の保健所に下りて来て、
そこでまた議論をして、
それが品川区の場合には、
1月24日と25日付の通知になって、
27日にクリニックに送られて来た、
というのが最初にお話した封書の正体なのです。

従って、今の状況としては、
保健所が認定していない濃厚接触者は、
個々の医療機関の責任で決定して、
行政検査を行って良いのですね。

ただ、
多分この内容はまだしっかりと周知されていないので、
医療機関によっては、
「濃厚接触者は保健所が認定しないと検査は出来ません」
という回答をしてしまうところもあると思いますし、
一般の方も、
「感染者と会食はしたけれど、保健所からは何も連絡はないので、
検査をする必要はなさそうだ」
というような理解をしてしまいがちだと思います。

保健所の判断を待つと共に、
心配であれば行政検査に対応している医療機関に相談する、
というのが現状の正しいあり方であると思います。

②職場復帰目的の遺伝子検査の弊害について
最近経験した事例をご紹介します。
事実を元にしていますが、
守秘義務及び患者の特定を避ける観点から、
細部は事実を変えて記載している部分があることをご了承下さい。

Aさんは30代の会社員で発熱と頭痛で発症。
同日発熱外来を経由してクリニックを受診し、
唾液のRT-PCR検査を施行。
新型コロナウイルス感染症と診断して保健所に届け出をしました。
数日の自宅待機の後に宿泊療養に移行。
発症から10日で隔離期間は終了となりました。

これで職場復帰して何ら問題はなかったのですが、
会社からは規定によって再度RT-PCR検査を受けるように、
という指示が出ます。

それで会社指定の自費検査を受けると、
結果は「感染している疑いがあります」という結果が出ます。

それを会社の産業医をしているクリニックに相談すると、
「これは再び陽性が確認されたのだから、もう一度保健所に届け出をだすべきだ」
と言われ、もう一度保健所に届けが出されたのです。

クリニックに本人から連絡があり、
「この場合また10日間隔離になるんでしょうか?」
と聞かれました。

皆さんはどうお考えになりますか?

勿論そんなことはないのです。

新型コロナウイルス感染症の隔離期間というのは、
敢くまで周囲に感染する可能性のある期間、
ということなので、
隔離期間が終わった後も、
遺伝子検査自体は陽性になる可能性があるのです。

感染拡大の当初は、
そのことがまだ分かっていなかったので、
退院の条件に2回の遺伝子検査をして陰性、
ということを決めていたのですが、
今はそれがナンセンスであることが分かったので、
一定期間が過ぎて症状が改善していれば、
それでOKというように改められたのですね。

Aさんはもう周囲に感染を拡大するリスクはないので、
遺伝子検査が陽性であろうが陰性であろうが、
それが就労に影響することはないのです。
従ってすること自体が無意味なので、
やらないのが正しい判断なのですが、
特に大手企業などの一部で、
以前の退院基準と同じ2回の遺伝子検査を義務化するような、
そうした決まりを作っているところがあるので、
こうしたトラブルが起こるのです。

それで、Aさんには心配は要らないし隔離も不要と説明し、
保健所にも連絡をして、
届け出は出されてしまったけれど、
意味のないものなので然るべく対処してほしい、
というようにお話をしました。

結果として、
無駄な検査で自費検査の会社が潤い、
保健所にも無駄な業務が追加されただけに終わりました。

勿論過剰防衛のような企業の規定が悪いのですが、
退院基準や隔離終了の基準などが頻繁に変更され、
それがしっかりと周知されていない、
という点にも問題があると思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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