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新型コロナウイルス感染症と季節性インフルエンザの予後比較(アメリカの疫学研究) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

明日12月29日より1月4日までクリニックは年末年始の休診になります。

実際は都の依頼で12月29日と1月3日は、
発熱外来として開けることにはなっています。
ただ、基本的には保健所などからの指示による診療で、
通常の患者さんはお受けしていません。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
インフルエンザと新型コロナの比較.jpg
British Medical Journal誌に、
2020年12月15日にウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症と季節性インフルエンザ入院事例を、
比較検証した論文です。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が、
東京でも猛威を振るっています。

感染拡大は深刻な問題ですが、
その一方で通常の生活をしている多くの人にとっては、
「新型コロナって、そこまで大騒ぎするほどのものなの?」
というような意見もあります。

特にその第1波と呼ばれる流行初期の時期には、
「普通のインフルエンザだって、重症化して死んでいる人はいる。
新型コロナも重症化するのは一部の人だけだし、
インフルエンザと変わらないんじゃないの?」
というような意見も結構聞かれました。

実際はどうなのでしょうか?

今回の研究はアメリカにおいて、
高齢者の医療保険のデータを活用して、
2020年2月1日から6月17日までに、
新型コロナウイルス感染症で入院した3641名を、
2017年から2019年に季節性インフルエンザで入院した12676名と、
比較検証しているものです。

その結果、
新型コロナウイルス感染症で入院した患者さんは、
季節性インフルエンザで入院した患者さんと比較して、
入院中の腎障害のリスクが1.52倍(95%CI:1.37から1.69)、
透析使用のリスクが4.11倍(95%CI:3.13から5.40)、
インスリン使用のリスクが1.86倍(95%CI:1.62から2.14)、
重度敗血症のリスクが4.04倍(95%CI:3.38から4.83)、
昇圧剤使用のリスクが3.95倍(95%CI:3.46から4.51)、
肺塞栓症のリスクが1.50倍(95%CI:1.18から1.90)、
深部静脈血栓症のリスクが1.50倍(95%CI:1.20 から1.88)、
脳卒中のリスクが1.62倍(95%CI: 1.17から2.24)、
急性心筋炎のリスクが7.82倍(95%CI:3.53から17.36)、
不整脈による突然死のリスクが1.76倍(95%CI: 1.40から2.20)、
心筋障害の指標であるトロポニン上昇リスクが1.75倍(95%CI: 1.50から2.05)、
肝障害のリスクが3.16倍(95%CI: 2.43から2.88)、
横紋筋融解症のリスクが1.84倍(95%CI: 1.54から2.18)、
それぞれ有意に増加していました。

要するにインフルエンザの入院と比較して、
重篤な合併症のリスクは新型コロナウイルス感染症では、
有意に高いことが分かります。

そして、
総死亡のリスクも4.97倍(95%CI: 4.42 から5.58)、
人工呼吸器装着のリスクも4.01倍(95%CI: 3.53から4.54)、
集中治療室入室のリスクも2.41倍(95%CI: 2.25 から2.59)、
新型コロナウイルス感染症の入院において高くなっていました。

入院患者100人当たり、
インフルエンザと比較して新型コロナウイルス感染症の入院では、
16.85名(95%CI: 14.85 から18.99)死亡が多く発生する、
というように推計されています。
この死亡数の差は、
年齢が75歳を超え心血管疾患や慢性腎臓病、
認知症があるとより大きくなり、
人種では白人種より黒人種で大きくなっていました。

このように、
季節性インフルエンザでの入院と比較して、
新型コロナウイルス感染症での入院では、
合併症も生命予後も明確な差があり、
今後この感染症も特別視はされなくなるでしょうが、
その予後に差があること自体は、
間違いない事実であるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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