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極私的新型コロナウイルス感染症の現在(2020年12月26日) [仕事のこと]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前午後とも須田医師が外来を担当する予定です。

それでは今日の話題です。

今日はいつもの身辺雑記的話題です。

東京での新型コロナウイルス感染症の拡大が止まりません。

昨日はクリニックは休診でしたが、
一昨日のRT-PCR検査の結果が、
今どきどうして…という感じですが、
ファックスで送られて来るので、
それを確認して、
患者さんに連絡を入れ、
それから陽性者については保健所に届け出をしました。

品川区の保健所は、
30名の担当者が24時間体制で動いていて、
夜間帯も15名の職員が対応に当たっています。

聞き取りをしていても、
「何の権利があってお前はそんなことを言うんだ!」
みたいな人がいるでしょ。
本当に大変だと思います。

1昨日の検査は3分の2が陽性でした。

こんな感じの陽性率が連日続いていますから、
これはもう治まる訳がないですね。

目立っているのは矢張り家庭内感染と職場での感染で、
職場から家族へ、というルートが、
感染急拡大の1つの典型になっている、
という気がします。

職場での感染は、
今はもう本当に「何処で感染したか分からない」
というようなケースが多いのが特徴です。
デスクワークでマスクは常時していて会話はしていて、
原則複数で食事はしていない、
というような状況でも実際に感染は拡大しています。
それが家庭に流入して、
2倍、3倍にすぐなってしまう、という構図です。

尾身先生は家庭内感染より、
会食での感染を重視されていて、
いつも気を緩めずに会食を避けて、
と言われているのですが、
勿論その趣旨は理解しているつもりですし、
正しいとは思う一方で、
現場の皮膚感覚としては、
最近は会食などしていない人に、
感染が広がっているという事例を多く経験しているので、
実体は少し違っているのではないか、
という思いもしています。

会食による感染の予防も重要な一方で、
家庭内感染の抑止も、
矢張り重要な要素ではないでしょうか?

会食を止めよう、飲食店の営業時間を制限しよう、
という方向での対策は、呼びかけも含めて行われていますが、
家庭内感染の抑止という面では、
分かりやすいメッセージは発せられておらず、
対策も取られていない、という気がするからです。

現状家庭内感染が増えている原因には、
家族で感染者が出た場合に、
本来は宿泊療養や入院の適応であるのに、
空きがないので自宅療養になってしまっている、
というケースが多いという点が大きいと思います。

この1週間だけでも5例くらいそうしたケースを経験しています。

もう軽症者は自宅療養、という方針に切り替えるのではあれば、
そこに手厚く人員や予算を配分し、
自宅療養中の感染拡大を防ぐ対策が、
もっと積極的に行われる必要があるのではないでしょうか?

日本でのしっかりしたデータがないので、
推測にしか過ぎないのですが、
先日ご紹介した家庭内感染のメタ解析の数値より、
日本の今の家族内感染率は遥かに高いように、
現場での感覚としては思うからです。

それからここ数日目立っているのが、
某新橋辺りにあるPCRセンターと称する場所からの、
陽性事例の再検依頼です。

これは市町村毎の方針があるのだと思いますが、
現状品川区においては、
PCRセンターなどで受けた自費検査で、
陽性もしくはその疑いという結果が出て、
その本人から保健所に問い合わせがあった場合、
医療機関での再検査は公費を使用して問題ない、
行政検査として問題ない、
という方針になっています。

つまり、COCOAでの陽性と同じ扱いということです。

ただ、あの検査センターと称するところはですね、
結果も「陽性」という記述ではなくて、
「感染の疑いがあるので、医療機関を受診してください」
というような文言になっているのですね。
それで、かかりつけ医がいれば、
それで相談をして下さい、
全くないという場合にはこちらでも斡旋をすることがあります、
というような対応であるようです。
こちらへはね、
紹介状の1通も、検査データの報告も、
何もないのですね。

やりっぱなしで自己責任というのは、
それはちょっとあまりに無責任で酷いのじゃないかしら。

これね、無症状であることが前提の検査でしょ。
要するに無症状の一般住民の、
RT-PCR検査のみの陽性者、
無症状性感染者をあぶりだすための検査、
と言ってもいい性質のものですね。

ただ、無症状で検査のみ陽性、という人が、
実際にどのような人なのか、
ということがしっかりと分かっている訳ではないのですね。

その中には本物の無症状の感染者もいるでしょうが、
もう病気としては治っていて、
PCRの陽性のみが続いている、という人もいますよね。
偽陽性もありますし、
中には慢性的に陽性になっている、
というケースも否定はできません。

現状無症状感染者は、
陽性となった検査施行時から、
10日間の隔離ということになっています。

ただ、これはクラスターなどで、
有症状の感染者から感染した場合を、
想定している措置ですよね。

バカバカ無症状者に検査をやりまくって、
陽性になった人を対象としている方針ではなくて、
そうした場合にどうするべきかは、
議論して決めないといけない事項です。

それが決まっていなくて、
通常の感染者と同じ扱いで、
この自費検査の陽性者が急増している、
という点が臨床的には大きな問題です。

要するにこうした大規模検査というのは、
事後措置とセットで決めないといけないのですね。
検査だけやりました、ニーズがあるので、
というように検査母体の企業の方はそう思われていて、
社会貢献をされているつもりなのかも知れませんが、
それは違うと思うんですよ。
結果的に僕のようなクリニックの業務も圧迫しているし、
保健所の業務も圧迫しているんですよ。
それを理解してほしいな、というように思います。

要はね、陽性者の隔離施設も同時に建設して、
検査とその運用を同時に行うようなやり方であれば、
それはもう大賛成ですし、
そこで取られたデータを、
今後の研究に活かすことが出来れば一石三鳥だと思うのです。
陽性者は検体を取って、
ウイルスの遺伝子解析も行えばよいと思うんです。
勿論多方面にしっかり許可は取って頂いて、
そこまでやればこれはもう日本人のみならず、
人類に対しても偉大な貢献ではないでしょうか?

今やっていることはそうじゃないんですよ。
やりっぱなしで医療機関への紹介も何もないんですよ。
自己責任で適当にやってくれ、というだけなんですね。
それではもう、ただ有害であるだけのように思います。

ただ愚痴ってもそれまでですし、
この自費検査の分がですね、
数100人とかそれ以上という規模で、
感染者に上乗せされていくのですね。

想像するだけで憂鬱になるような話です。

それでもまあ、やれることをやるしかないですし、
腰も痛くて満身創痍の感じですが、
何とか乗り切りたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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