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英国由来の変異型新型コロナウイルスについて(短報) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
変異型ウイルスについて.jpg
British Medical Journal誌に、
2020年12月16日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルスの遺伝子変異についてのニュースです。

今月になって、
一般でも話題になったニュースとして、
イギリスで新型コロナの変異ウイルスが流行しており、
それが感染拡大の原因となっているのではないか、
というものがありました。

この記事はその変異ウイルスについての、
現時点で分かっていることを、
Q&A形式でまとめたものです。

イギリスで2020年12月に、
新型コロナウイルスの17カ所の点遺伝子変異などからなる、
変異ウイルス(VUI-202012/01)が命名されました。
そのうち最も重要と思われているのは、N501Yという、
ウイルスの突起(スパイク)部分の蛋白をコードしている遺伝子の変異で、
この部位は人間のACE2受容体に結合して、
感染の始まりとなる場所なので、
この部分の変異は、
ウイルスの感染力を高め、
感染を広げやすくするという可能性があるのです。

2020年12月13日の時点で、
この変異ウイルスの見付かった検体は1108に及び、
イギリス国内の60箇所の異なる施設で見付かっていて、
その多くはイギリス南東部で広がっています。
ただ、最近の報告はウェールズやスコットランドでも見付かっています。

12月15日の専門家の報道発表では、
この変異ウイルスの報告は2020年9月が初めてで、
現在ではノーフォーク州での検体の20%、
エセックス州の10%、サフォーク州の3%で検出されています。
現状この変異ウイルスが、
イギリス国外から持ち込まれたことを示すデータはなく、
イギリスで発生したと想定されています。

別の専門家は12月14日に、
イギリス南東部の感染拡大に結び付いている可能性がある、
と報告しています。
ただ、確かにその地域における感染の拡大と、
変異ウイルスの増加との間には相関がありますが、
そのことは因果関係であるとは言えない、と述べてもいます。
つまり、感染の拡大が、
変異ウイルスが原因である、とは言えないのです。

実際スパイク蛋白に関わる点遺伝子変異は、
これまでに4000以上も見付かっていますが、
その多くはウイルス自体の性質に、
影響を与えるものではないと考えられています。
今回の変異がウイルスの感染力を変えている、
という可能性は否定は出来ませんが、
今の時点でそれが証明されているという訳ではありません。
現行のワクチンの多くは、
スパイク蛋白そのものか、
それをコードする遺伝子を活用したものなので、
そこに大きな変異が生じれば、
ウイルス自体の有効性も低下する可能性はあります。
ただ、今開発中のワクチンに充分な有効性が認められれば、
仮に変異したウイルスが流行するようになっても、
それに合わせてワクチンを作り直すことは、
それほど難しいことではないと想定されています。
これはインフルエンザワクチンでは毎年行われていることだからです。

現状分かっていることはほぼ以上で、
変異ウイルスがイギリスで増えていることは確かですが、
それが通常のウイルスの広がりによるものなのか、
それとも感染力を増すような進化であるのかは、
まだ全く分からないというのが実際であるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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