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新型コロナウイルスに対するmRNAワクチンの有効性(ファイザーなど) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
RNAワクチンの有効性論文.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2020年12月10日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症のワクチンとして、
もう海外では一般への接種が開始され、
日本でもおそらく最初に接種が始まりそうな、
ファイザー社などによるmRNAワクチンの、
有効性についての臨床試験結果をまとめた論文です。

今回開発されたのは、
mRNAワクチンというタイプのワクチンです。
その仕組みの概略がこちら。
RNAワクチンのメカニズムの図.jpg
mRNAというのは、
人間の細胞がリボゾームという工場でタンパク質を作る時に、
その設計図となる遺伝子の鋳型のようなものですが、
それを合成して新型コロナウイルスの突起部分の蛋白質の、
元になる遺伝子を挿入します。
それを脂質の膜のカプセルで保護して粒子にしたのが、
このワクチンの原型で、
それを筋肉注射で身体に送り込みます。

それが、抗原提示細胞と呼ばれる免疫細胞に取り込まれると、
そこで抗原蛋白が作られ、
それが新型コロナウイルスに対する免疫を、
誘導することになるのです。

これまでのワクチンは、
基本的に抗原蛋白そのものを投与して、
それで免疫を誘導するという手法でしたから、
今回のワクチンはその元になる遺伝子を投与して、
身体の細胞に抗原蛋白を作らせる、
という点が全く違っているのです。

このワクチンは30μgを3週間の間隔で2回筋肉注射で接種します。

今回の臨床試験は主にアメリカで、
16歳以上の43548名をくじ引きで2つに分けると、
一方は上記のワクチンを2回接種し、
もう一方は偽ワクチンを接種して、
その後の両群の新型コロナウイルス感染症発症率を、
比較検証しています。

その結果はこちらをご覧下さい。
RNAワクチンの有効性の図.jpg
かなりクリアな有効性が示されています。
2回目のワクチン接種から7日以上経過後に発症した、
新型コロナウイルス感染症は、
ワクチン接種群では8件であったのに対して、
偽ワクチン群では162件で、
2回のワクチン接種により、
新型コロナウイルス感染症は95%
(95%CI: 90.3 から97.6)有意に抑制されていました。
(上記画像のデータとは、
少し条件が異なっているので件数が微妙に違っています)

今回の臨床試験においては、
ワクチンの有害事象は、
主に接種部位の疼痛や発赤、
だるさや頭痛などで、
重篤なものは少なく、
偽ワクチンと有意な差は認められませんでした。

これはまだ数ヶ月の有効性に過ぎませんが、
実際の感染症の発症で95%という有効性が、
厳密な臨床試験で示されているというのはかなり画期的なことで、
今後は一般に接種が拡大した際の有効性と安全性のデータが、
蓄積される経過を注視したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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