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新型コロナウイルス感染症の双子感染事例 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
COVID-19双子の事例.jpg
Annals of Internal Medicine誌に、
2020年12月8日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症の、
興味深い事例を報告した短報(レター)です。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について、
問題となる点の1つは、
重症化する事例と軽症のままで回復する事例の、
何が違っているのか、ということです。

1つの考え方として、
患者さんの遺伝子の個人差が、
病気が重症化するかどうかに関わっている、
というものがあります。

仮にこれが事実であるとすれば、
遺伝子がほぼ同一である一卵性の双子では、
同時に新型コロナウイルス感染症に感染すれば、
同じ経過を辿ることが想定されます。

今回のレターでは、
60歳の双子の男性が、
同時に新型コロナウイルス感染症に罹患した事例が報告されています。
同じように発熱と鼻汁で始まり、
全身倦怠感と呼吸困難と空咳が続き、
発症10日後に同時に入院しています。

2人は同じ仕事をしていて、
生活環境も一致しており、
基礎疾患も共にありません。

入院の時点の検査において、
双子は2人とも軽度の間質性肺炎の所見を認めました。
2人は共通する医療チームにより、
酸素投与やヒドロキシクロロキンなどの治療が、
同様に施行されました。

ところが…

その後の経過は大きく違っていました。
入院後の2週間で1人目の双子は順調に改善して退院に至った一方で、
2人目の双子は急激に肺炎が悪化して集中治療室に入室しました。

要するに遺伝子を含めてその背景がほぼ同一で、
病状も初期は同一で同じ治療が行われたにも関わらず、
その後の経過は回復と重症化と、
正反対になってしまったのです。

一体何がこの違いを生み出したのかについては、
この事例から解読することは困難ですが、
少なくとも遺伝子の違いにより重症化が決まる、
というような考え方で説明出来るほど、
新型コロナウイルス感染症の重症化のメカニズムは、
単純なものではないようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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