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極私的新型コロナウイルス感染症の現在(2020年12月6日) [仕事のこと]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診ですが、
レセプト作業などして過ごす予定です。

ちょっと混沌としていまね。

クリニックでも毎日COVID-19の診断のために、
RT-PCR検査をしていますが、
その多くが最近は家族内感染の事例です。

数日前の事例でお話ししますと、
息子さんが高熱と咽頭痛で発症したのですが、
休日診療所を受診して、
「咽頭の発赤が強いのでコロナではない」
と断言されてアセトアミノフェンだけが処方されたのですね。
それから数日熱が下がらなくて、
保健所経由でPCRセンターで検査をして、
陽性が確定したのですが、
その時点で5人家族が一緒に暮らしていて、
発熱者を1週間くらい自宅で診ていたのですね。
都の審査によって入院という判断になったのですが、
今度は入院先が見つからない、ということになって、
そのまま数日自宅待機となって、
その間に他のご家族にも咳や咽頭痛などの症状が出たのです。
家族はクリニックを受診して、
そのうちの1名が陽性となりました。
それなのに、ですよ、
最初の感染した息子さんは、
待機しているうちに解熱したのですね。
そうしたら、もう入院は必要ないということになって、
結果として2人も家族で感染者が出ているのに、
何もせず、家で家族一緒に様子をみているだけ、
という事態になってしまったのです。

こういう事例がそれこそ沢山あってですね、
まず診断されるのが遅いし、
感染経路はほぼ全て不明なんですね。
ほぼほぼ分からないのです。
それで家族に1人感染者が出るでしょ。
濃厚接触者ということで家族の検査をするのですが、
比較的重症でも入院先が見つからないのでそのままだし、
軽症だともう、
家で様子をみて下さい、という感じになっているのですね。

色々な意味でお手上げで、
家族内感染を放置しているので、
これはもう感染拡大を阻止出来る訳がないですよね。

ちょっと呆然としてしまいます。

この間読んだシンガポールの事例だったと思うのですが、
家庭内感染のリスクを検証した論文があって、
シンガポールでは専門のスタッフが巡回して、
家族内感染の予防のための指導に廻っているんですね。
そのスタッフから感染が広がったりすることもあるので、
なかなか難しい面もあるのですが、
こういうことを是非やった方がいいですよね。

もう多くの事例で入院や宿泊療養が出来なくなっていて、
家族で患者を診ているのが実際なんですね。
家族内感染が増えているというのは、
要するにそうした意味で、
それ以外の感染経路は不明というのが実態なのです。

こうした事態になった時には、
家族内感染予防のために、
その指導をするような態勢が、
最も重要な対策であるのですが、
それが全くないのが実際なのですね。

勿論病院のスタッフや看護師も足りないのは事実なのですが、
クリニックの現場で考えますとね、
それ以上に足りないのがそうしたスタッフなのです。

これがとても重要だと思います。

患者さんの家族の話を聞いてもね、
そのことを一番心配されているんですよね。
家族に感染を広げないためにどうすればいいのか、
と試行錯誤をしているのですが、
一般の方にそうした試行錯誤をさせる、
というような態勢はまずいですよね。

これはもう早急にそうしたスタッフを養成して、
巡回するような体制づくりが急務である、
というように思います。

検査についてはね、
大手の検査会社の対応が遅いんですよ。
今検体を出して、
結果がファックスされるのが翌日の夜なんですね。
早くて夜なのです。
なので通常結果をお伝えするのが2日後になってしまうのですね。
これじゃ遅いよね。
ファックスというのも原始的だし、
何とかならないかと思うのですが、
ロジスティックの問題なんですね。
検体を迅速に運ぶという体制が弱くて、
1日のうち1回しかそのための集配がないのですね。
検査をする場所には1日に1回しか運ばないので、
結局朝に検査をしても夕方にしても、
検査の結果は同じにしか届かないのです。

これじゃ駄目だよね。
でも言っても改善は全くされません。

安い自費検査があるでしょ。
診断や診療のためではない、という名目で、
金もうけ目的がありありなのですが、
そっちの方がサービスは良いし、
結果が出るのも早いんですね。

金もうけ目的のクリニックは、
「医療目的ではない」という趣旨の自費検査をじゃんじゃんやって、
陽性になると保険請求して、
高額な検査費を公費で請求しているんですね。
近所のクリニックは自費検査をじゃんじゃんやっていて、
この間陽性者が出たのですが、
そうしたらお金を返したのですね。
それは要するにそうした処理をしている、
ということだと思うのです。
でも、実際には自費検査は安いので、
その差額は懐に入れている、
ということになります。
厳密に言えば不正請求ですよね。

集合契約をしている大手の検査会社は、
検査の価格は下げないんですよね。
そのために自費でも高額になってしまうので、
無症状だけれど心配、
というような人は皆、
精度管理も怪しげで低価格の自費検査に走るでしょ。
何か間違っているな、
というように思うのですが、
改まる気配はありません。

大手の物流の会社などが、
自前の低価格のPCR検査を販売したりしているでしょ。
良いことをしているつもりなのは分かるのですが、
実際には本来濃厚接触者に当たる人が、
自費検査を受けて安心してしまって、
それで感染をばらまくという結果になるのですよね。
濃厚接触者は2週間の隔離が必要なのですが、
それがざるになってしまうのです。
陽性が出ても強制力はないから、
届け出もしないということもありますよね。

要するに、
検査をすることを感染防御に繋げるという視点が、
そこにないことが問題なのですね。

家族内感染が野放しで、
行政が責任を放棄してお手上げになっている現状では、
感染防御を民間で担うしかないのが現実なのです。

検査をするだけで感染防御になりますか?

ならないですよ。

それくらいならね、
ロジスティックを大量に投入して、
医療用の検査が迅速に結果が出て、
それが迅速に医療機関に届くような体制に、
お金を出してもらえないですかね。

集合契約をしている多くの医療機関やPCRセンターで、
即日に結果を出せるような体制が作れれば、
それだけでかなり状況は変わるのですよ。

大手の検査会社はそうしたことをする気が、
120%ないんですよ。

それをどうにかしないと現状が変わりません。

それから家庭内感染を家庭で防御するための、
マニュアルとサポートするスタッフや技術開発、
体制整備が重要だと思うのです。

専門スタッフが感染者の家庭を巡回して、
必要な器具は全て提供するようにすれば、
それだけでかなり状況は変わるでしょ。

今は保健所から電話が入って、
「熱がありませんか?」くらいのことを言われるだけなんですよ。

それじゃ絶対駄目ですよ。

すいません。
愚痴が過ぎました。

重要なことだけ最後にもう一度言います。

今の感染拡大の主体は「家庭内感染」なのに、 それを予防することを行政は全くしていないのです。 何の対策もしていないのです。 隔離すら出来ていないのです。 誰かがそれをやらないと感染拡大は止まらないのです。

このようなことを考えつつも、
日々の診療をこなし、
自分に出来ることを、
細々と続けるしかないのかも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんは良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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