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「サイレント・トーキョー」(2020年映画版) [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
サイレントトーキョー.jpg
「アンフェア」などで知られる秦建日子さんの原案を、
SPシリーズの波多野貴文監督が、
引き締まったサスペンス映画に仕立てました。
そのロードショーの初日に足を運びました。

渋谷のスクランブル交差点で起こった大規模テロを、
リアルな野外セットとCGで再現した趣向が話題です。

これはなかなか良いですよ。

年末に何か面白くて分かりやすい映画を、
という方には一番のお勧めです。
あまり先入観なく観た方がより楽しめるので、
観賞予定の方は以下は観終わってからお読みください。
完全なネタバレはしていませんが、
何となく分かるような表現はあります。

よろしいでしょうか?

それでは先に進みます。

この映画は何より99分という短い上映時間がいいですね。
それでしっかり完結していますし、
内容も充実しています。
テーマ的には、
「平和ボケ日本の政治家に、
本当の戦争を知る個人が戦いを挑む」という、
まあ「SP」と同じ話で、
「相棒」シリーズの骨格も、
ほぼ同じ話ですよね。

ちょっと弱いのは、
時代が動いてしまっているでしょ。
問題意識は変わってはいないのですが、
今このコロナの現状を見ますとね、
ちょっとピンボケしてしまった感じはします。
でも、それはもう仕方がないですよね。
時代背景的には2017年から18年くらい、
という感じのお話しです。

何より台本が非常に練り上げられていますね。
ラストのレインボーブリッジが、
絵的にそれほど盛り上がらないのが弱いな、
という気はしますが、
中段の渋谷で頑張り過ぎたので、
これは仕方がないですね。
最初から細部まで計算されていて、
伏線の出し方も編集も上手いですね。
前半でちょっと過去の場面を入れ込むでしょ。
その時点ではそれがいつか分からないんですね。
こうしたところは上手いな、と思いますし、
観終わってすぐに、
冒頭を観返したいという気分になります。
これは成功ですよね。
一応ミステリーなので絵解きがあるのですが、
通常だとダラダラ銃を構えながら説明するところでしょ。
それをしないで、
登場人物を2人ずつの2組に分けて、
車の移動で処理しているんですね。
これは絶妙だと思いました。

何と言うのかな、
主人公達の思いのすれ違いと誤解を、
2台の車で表現しているんですね。
非常にクレヴァ―です。

これね、一応意外な結末、的ひねりがあるのですが、
まあ殆どの人には途中で分かってしまう、
という感じなのですね。
ただ、こういうのはこれでいいと思うのです。
あまり意外性のみを狙うと、
却って「唐突」になってしまうでしょ。
犯人の造形に説得力があれば良いと思うのです。
個人的には割と好みの設定で、
ジェフリー・ディーヴァーみたいでしょ。
結構好きです。

メインのキャストは、
佐藤浩市さん、石田ゆり子さん、西島秀俊さんの3人なのですが、
中村倫也さんの絡ませ方が上手いですよね。
これ3人で成立する話で、
中村さんは特に必要ない、
と言えば必要ないんですね。
ただ、中村さんを配置することで、
グッと物語に奥行が出るんです。
途中で中村さんが母親とその再婚相手に会う、
という場面があって、
その時はどうでもいいな、と思うのですが、
後半になって効いて来るんですね。
この辺りも上手いな、と思いますし、
今回は中村さんの「クールで何を考えているか分からない」
という持ち味が、
物語の中でしっかり活きた、
という感じがします。
この辺は脚本と演出の勝利だと思いますし、
中村さんの演技も良かったと思います。

そんな訳でちょっと出遅れたという残念さはあるのですが、
脚本、演出、演技と見応えがありますし、
スクランブル交差点のスペクタクルも、
相当日本映画としては頑張っていました。
娯楽映画としては自信を持ってお勧めしたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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