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1型糖尿病に対する生物学的製剤の有効性(ゴリムマブの診療試験) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は終日レセプト作業の予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ゴリムマブの1型糖尿病への有効性.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2020年11月19日掲載された、
1型糖尿病の新しい治療法についての論文です。

1型糖尿病は主に小児期に発症する、
初期からインスリン分泌が高度に障害されるタイプの糖尿病で、
その原因として自己免疫による膵臓の炎症があるとされています。

通常一生に渡ってインスリンの自己注射が必要で、
補助的な治療はありますが、
インスリン注射が不要になる訳ではなく、
膵臓移植という方法はありますが、
日本の現状ではその施行は極めて限定的です。

最近関節リウマチや潰瘍性大腸炎などの、
矢張り自己免疫による炎症が原因とされる慢性炎症性疾患で、
炎症性サイトカインに対する抗体製剤が、
生物学的製剤として活用され、
高い有効性を示しています。

特に腫瘍壊死因子(TNF-α)という、
炎症サイトカインに対する抗体製剤は、
複数開発されて実際に使用され効果を挙げています。
ゴリムマブ(商品名シンポニー)もその1つで、
副作用が少なく継続使用がし易い製剤として、
関節リウマチや潰瘍性大腸炎の治療に使用されています。

現状こうした製剤が、
1型糖尿病の治療に使用されることはありませんが、
1型糖尿病も自己免疫疾患で、
血液のTNF-αが増加しているという知見もあることから、
その治療にも有効であるという可能性はあります。

そこで今回の臨床試験においては、
年齢が6から21歳で顕性の1型糖尿病と診断され、
診断から100日以内の84名を、
患者にも主治医にも分からないように、
くじ引きで2対1に分けると、
56名にはインスリン治療に加えてゴリムマブの皮下注射を継続し、
残りの28名は偽の注射を施行して、
52週間の経過観察を行っています。

その結果、
偽注射群と比較してゴリムマブ群では、
52週の時点での内因性インスリン分泌が改善しており、
インスリンの必要量も有意に低くなっていました。
ゴリムマブ群全体の54%に当たる30名で、
ゴリムマブに対する抗体が検出されました。

このように、
ゴリムマブの使用により、
1型糖尿病の病態は改善し、
内因性インスリン分泌にも改善が認められました。
抗体価が比較的高率に誘導されるなど、
その使用法については今後検討が必要ですが、
これまでインスリン以外に有効な治療のなかった1型糖尿病において、
その病態を改善させる可能性のある治療であることの意義は大きく、
今後のより詳細な知見の積み重ねに期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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