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「アギーレ・神の怒り」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で、
午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
アギーレ.jpg
ドイツの鬼才ヘルツォークが1972年に製作した、
「アギーレ・神の怒り」です。

日本公開は1983年なので現地公開の10年以上後です。
「地獄の黙示録」の元ネタの1つと言われていて、
それが公開のきっかけとなったように記憶しています。
観ると確かにそっくりなところがあるんですよね。

この映画が評判になったので、
その後何本かのヘルツォーク映画が日本でも公開され、
何度か特集上映も行われています。

ロードショーは岩波ホールだったと記憶していますが、
その時は観ることは出来ませんでした。
初見はビデオで、
その時から最も好きな映画の1本になりました。

16世紀にスペイン軍の部隊が、
アマゾンの奥地にあるというエル・ドラドを目指すんですね。
その分遣隊の副官のアギーレが、
上官に反逆して勝手に独立国を名乗ります。
それから、先住民の攻撃を受けながら、
数十人しかいないのに、
手製の筏で取り憑かれたように、
アマゾン川をさかのぼってゆきます。

ラストはたった1人になったアギーレが、
「世界の征服者になってやる」みたいなことを、
叫ぶ場面で終わります。
詳しくはネタバレになるので書きませんが、
ラストは現実が後退して幻想と狂気と妄執とが入り混じる、
ヘルツォークならではの極めつけの名場面です。
何度観ても凄いです。

登場するのはスペイン人とインディオなのに、
言葉はドイツ語なんですからかなりヘンテコなのですが、
如何にもアマゾンの奥地という感じの、
生々しい映像が凄いですよね。
オープニングの山を降りて来る俯瞰撮影など、
どうやって撮ったのかと不思議に思うくらい。
ジャングルや泥水の表現も凄まじいですね。

テンポは割合にスローなんですね。
展開もそれほどダイナミックという感じではないのです。
それでいて、主人公達が絶望的に死に向かって進んでいる、
という雰囲気がリアルで力強いので、
観始めると画面に惹き込まれて、
主人公達と一緒にアマゾンを旅しているような気分になります。
ハリウッド製とは明らかに肌合いの異なる、
迫力やサスペンスの表現が当時はとても新鮮でした。
音楽もとても印象的で、
その後NHKのドキュメンタリーなどで、
定番の音効として使われました。

テーマは根拠のない人間の妄執みたいなものですね。
それが、どんどん現実離れして、
ある種観念的なものになってゆくのが面白いですね。
それを狂暴な自然の風景の中に置いた、
と言う点がこの映画の魅力です。

ヘルツォークの映画はどれも面白いのですが、
個人的には矢張り最初に観たこの作品が、
最も強く印象に残っています。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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新型コロナウイルスの死者はインフルエンザと同じくらい、は本当か? [科学検証]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診です。
何もなければ積み残した仕事などして過ごす予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
インフルエンザとコロナウイルスの死亡率.jpg
JAMA Internal Medicine誌に、
2020年5月14日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症による死亡数と、
季節性インフルエンザによる死亡数との差についての解説記事です。

アメリカでは2020年5月初めまでに、
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のために、
65000人の死者が報告されています。
しかし、実はアメリカのCDCが発表している統計によると、
毎年の季節性インフルエンザによる死亡数も、
年による変動はありますが、
ほぼ同数の年もあるとされています。

それでは、
毎年同じように流行している季節性インフルエンザと、
新型コロナウイルスは、
同程度の重さの病気なのでしょうか?

確かにメディアなどでそうした発言をされている著明な方もいます。

「新型コロナウイルスと言っても、
季節性インフルエンザと同じくらいの患者しか死んでいない。
みんな怖がり過ぎているんだ」
というのです。

これは本当でしょうか?

新型コロナウイルスのパンデミックにおいては、
特に流行が爆発したニューヨーク州で、
深刻な医療崩壊が起こり、
公園の仮設の病院において、
人工呼吸器を並べて重傷者の診療を行っている、
というような報道がありました。

仮に季節性インフルエンザにおいても、
同じくらいの重傷者が出ているのだとすれば、
毎年医療崩壊が起こっていないとおかしい、
ということになります。

そんなことはないですよね。

一体何が間違っているのでしょうか?

新型コロナウイルスの死亡数というのは、
実際に報告された患者数を集計したものです。

その一方で季節性インフルエンザの死亡数というのは、
報告された死亡数のみではなく、
そこから全国の死亡数を推計して計算して出している数値なのです。

2013年から2019年のインフルエンザ流行期において、
年間の季節性インフルエンザによるアメリカ全土の死亡数は、
23000名から61000名の間の数字が年毎に報告されています。
しかし、実際に個別に報告された死亡数は3448名から15620名です。
要するに23000名から61000名という数値は、
3448名から15620名をサンプルとして考えた時に、
全国ではそのくらいの人数が死亡している筈だ、
という推測の数値にしか過ぎないのです。
これが2017年から2018年のシーズンでは、
推計された死亡数が61000名となっていて、
このシーズンのインフルエンザの流行はかなり深刻であった訳ですが、
それでも新型コロナウイルスに匹敵する、
というような数字ではないのです。

2020年の4月21日までの1週間で、
新型コロナウイルス感染症で死亡した人は、
15455名と報告されています。
同様の週毎の季節性インフルエンザによる死亡数は、
2013年から2020年の間では、
351名から1626名と報告されています。
つまり、季節性インフルエンザの死亡数の、
同じ期間で9.5から44.1倍、
平均で20.5倍の死亡が、
新型コロナウイルス感染症では起こっている、
というのが実数であることが分かります。

厳密に言えば、
インフルエンザによる死亡数も、
新型コロナウイルスの死亡数も、
いずれも少なからず漏れているケースが想定されますが、
いずれにしてもアメリカにおいて、
新型コロナウイルスのパンデミックの深刻さは、
季節性インフルエンザの10倍以上ではある、
というのが実際と考えて良いようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

(付記)
数字の記載に一部誤りがあり修正しました。
(2020年6月22日午後10時修正)
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新型コロナウイルスの抗体陽性率(スイスにおける検証) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
スイスにおけるコロナウイルス抗体価.jpg
Lancet誌に2020年6月11日ウェブ掲載された、
スイスのジュネーブにおける、
住民の新型コロナウイルス抗体検査の結果をまとめた論文です。

こうした報告は他にも多くありますが、
住民の分布に合わせた抽出を行ない、
1週間毎に5回の測定を繰り返している、
という点が特徴です。

新型コロナウイルス(SARS-CoV2)感染症に、
現在罹っているかどうかの診断には、
通常鼻腔や咽頭からのRT-PCR検査が、
スタンダードな方法として行われています。

ただ、実際には症状のない感染の事例も多く、
検査の手技上、全ての感染を疑う人に、
RT-PCR検査を行なうことは困難です。
つまり、RT-PCR検査だけでは、
この新規の感染症が一般住民の間で、
どのくらい広がっているのか、
という状況の把握は困難である、
ということになります。

その場合に役立つ可能性があるのが、
血液の抗体検査です。

抗体はウイルスが身体に侵入したことに対して、
身体の免疫反応の結果として産生されます。

そのために血液の抗体を測定することにより、
そのウイルスの感染を受けたことがあるかどうかを、
明らかにすることが出来るのです。

ただ、人間の身体はウイルスの感染に対して、
複数の抗体を産生しているため、
検出された抗体が感染防御的に働くかどうかは、
現時点では何とも言えません。

現状の抗体検査で分かることは、
あくまで感染歴のみである、という点には、
注意が必要だと思います。

さて、今回のデータはスイスのジュネーブのものですが、
別個の疫学研究で登録された住民データを活用して、
対象者とその同居家族の血液抗体価を測定しています。
特徴はジュネーブで新型コロナウイルスの感染が、
ピークに達した時からほど近い時期より、
5週間に渡って、1週間に1回の検査を継続していることです。

1339家族の2766名が対象となっていて、
対象の分布は、ほぼジュネーブの人口分布と一致しています。
つまり、このデータの抗体陽性率は、
ほぼ同時期のジュネーブ全体のそれと、
ほぼ一致していると想定される訳です。

希望者のみの抗体測定や、
ソフトバンクグループの関係者のみの抗体測定などとは、
その意味合いが異なります。

抗体はドイツで販売されている、
一般的なELISA法によるIgG抗体測定キットが使用されています。
これは新型コロナウイルスのスパイクプロテインの、
S1ドメインに結合する抗体の測定系です。

その結果は、
感染のピークからほど近い第1週では、
抗体陽性率は4.8%で、
第2週は8.5%、第3週は10.9%と上昇し、
第4週は何故か6.6%と低下して、
第5週は10.8%と再度上昇しています。

年齢が20から49歳と比較して、
年齢が5から9歳では抗体陽性のリスクは68%低く、
65歳以上では抗体陽性のリスクは50%低くなっていました。
20から49歳での抗体陽性率がトータルで9.9%に対して、
5から9歳のそれは0.8%、
65歳以上は4.2%でした。

同居家族に抗体陽性者が1人いると、
高率で家族も抗体陽性となりますが、
同居家族に陽性者がいても、
5から9歳の陽性率は低くなっていました。

スイスのジュネーブはヨーロッパの中でも、
短期間にかなり感染が拡大した地域ですが、
それでも人口の1割程度しか新型コロナウイルスには感染しておらず、
抗体保有率は高くはありません。

同じ家族であっても、
小児と高齢者は感染しにくい性質があり、
特に小児においてそれは顕著です。
単純に濃厚接触すれば感染が成立するのではなく、
人間の身体の側の感染し易さ、しにくさを決める、
別個の因子が存在しているようです。
そして、それは血液の抗体のみでは判断は困難です。

よく「みんなで感染すればそれで解決」というような意見を、
軽率に述べる科学者という肩書の方がいますが、
おそらく実際に患者を診療している医療者で、
そうした意見に賛同する人はいないと思います。

実際の患者さんを診ることにより、
その個々の深刻さを理解しているからです。

クルーズ船や介護施設、病院など、
かなり閉鎖的な空間で集団が長期間生活すると、
半数を超えるような人数に感染が広がる事例がありますが、
通常の社会生活の範囲では、
そこまでの感染の拡大が一気に起こることはなく、
おそらく数年間を掛けてじわじわと、
抗体陽性率は上昇していくように思われます。

それが多分、
ウイルスと人間とが共生してゆく、
ということなのです。

それを無理に早回しして、
抗体陽性率を一気に上げようとするような試みは、
これまでの感染症対策の歴史の中で、
成功したことはないと思いますし、
今回もスウェーデンは似通った試みをして、
結果として責任者が失策を認めたことは、
皆さんもご存じの通りです。

唯一抗体陽性率を無理なく上げる方法として、
人類の歴史の中で一定の成功を収めたのは、
言うまでもなくワクチンという考え方で、
色々問題はあっても、
最小限のリスクで感染に似た効果を挙げることにより、
抗体陽性率を上昇させることに成功し、
それが天然痘などの撲滅に繋がったのです。

ただ、ワクチンにも多くの問題があることは、
間違いのない事実であるので、
ワクチンに取って変わるような画期的な予防法を、
その方が提唱するのであれば、
「みんなで罹ればそれで解決」
という意見にも一定の意味がありますが、
それがないのであれば、
その言葉はただの憶測であり、
無責任以上の意味はないと思います。

今回のデータをみても、
抗体陽性率の推移もおかしいのです。
何故上がったり下がったりするのでしょうか?
1つにはこれは現状の抗体測定が、
中和抗体のみを測定している訳ではないということであり、
もう1つには感染の可否を決めている、
まだ分かっていないような因子があるということではないかと思います。

この問題は今後、
新型コロナウイルス感染に伴う、
免疫の反応や抗体の役割などが、
明確になることによって進展が見られると想定されるので、
その知見を待ちつつ、
不明の点が多い段階でも、
妙に断定的な発言をされる方の言葉には、
くれぐれも騙されないようにしたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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新型コロナウイルス無症候感染者の自然経過(ダイヤモンドプリンセス号の解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日で診療は午前中で終わり、
午後は産業医面談で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナウイルスキャリアの経過.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2020年6月12日ウェブ掲載されたレターですが、
ダイヤモンドプリンセス号に乗船していた、
新型コロナウイルスの無症候感染者の自然経過を観察した内容で、
無症候感染者の経過観察を受け入れた、
藤田医科大学の研究者らによる報告です。

もう遠い昔という感さえある、
豪華客船ダイヤモンドプリンセス号における、
新型コロナウイルスの集団感染ですが、
この時712名の乗船客もしくは乗務員が、
RT-PCR検査で陽性となり、
その58%に当たる410名は、
検査が陽性となった時点では無症状でした。

このうち、
RT-PCR検査は陽性であった、
無症状の96名の乗客乗員と、
その同室者であった、
32名の船内の検査ではRT-PCR陰性の乗員乗客は、
藤田医科大学で経過観察の対応が取られました。

96名の検査陽性者のうち、
観察期間中に発熱や肺炎などの症状が出現したのは、
11名でした。
最初のRT-PCR検査の陽性判定から、
症状出現までの中間値は4日でした。
この11名は結果としては無症候感染者ではなく、
潜伏期間中に検査が陽性となった事例でした。
年齢が高くなるほど、
この潜伏期の感染であるリスクは増加していました。

検査は陰性であった、
感染者と同室の濃厚接触者32名のうち、
8名は観察期間72時間以内に、
RT-PCR検査が陽性となりましたが、
その全てが無症候性のまま推移しました。

結果としてRT-PCR検査が陽性になりながら、
その後全く症状が出ることなく、
RT-PCR検査が2回続けて陰性になった90名を解析すると、
最初の検査陽性から陰性2回までの期間、
すなわち感染していた期間は、
中央値で9日、3から21日の幅に分布していました。
15日以内に90%は治癒した、
ということになります。
治癒までの期間は、
年齢と共に長くなる傾向を示していました。

このデータはほぼこれまでの知見と一致するものですが、
無症候性感染者の経過を追ったデータとしては、
おそらく最も大規模なもので、
日本発の知見として意義のあるものだと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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アジスロマイシンとクラリスロマイシンの出血系合併症比較 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
アジスロマイシンとクラリスロマイシンの出血系合併症比較.jpg
2020年のJAMA Internal Medicine誌に掲載された、
抗菌剤の使用が抗凝固剤の使用に与える影響についての論文です。

心房細動というのは、
生涯で5人から3人に1人は発症する言われるほど、
年齢と共に多く見られる不整脈です。

この不整脈が持続することによる一番の問題は、
心臓の中で血栓が出来やすくなり、
それによって起こる脳塞栓症などの塞栓症の発症です。

この脳塞栓症などの予防のために、
抗凝固剤と呼ばれる薬剤が使用されています。

また、下肢などの静脈の血栓塞栓症があると、
こちらは肺の動脈に血栓が飛んで、
肺塞栓症という病気になり呼吸困難などが起こることがあります。
このため、こうした病気の時にも抗凝固剤は使用されます。

経口抗凝固剤というのは、
血液が固まる仕組みの一部を抑えることによって、
脳塞栓症や肺血栓塞栓症などの、
血栓塞栓症を予防するために使用されている薬です。

歴史があり現在でも使用されているのがワルファリンで、
最近では直接作用型経口抗凝固剤として、
ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバンなど多くの薬剤が、
その利便性から広く臨床で使用されています。

こうした薬のリスクとして、
最も注意するべきなのは、
消化管出血や脳内出血などの出血系の合併症です。
特に高齢者では入院を要するような重篤の事例になることが多く、
75歳を超えると2倍に増えるという報告もあります。

この出血系の合併症のリスクは、
薬の代謝に影響を与えるような、
他の薬剤の使用で増加することが知られています。

直接作用型経口抗凝固剤の代謝は、
肝臓のCYP3A4という薬物代謝酵素と、
小腸や肝臓にあるP糖タンパク質(Pgp)という、
薬剤を細胞外に汲み出す薬物排出トランスポーターによって、
主に行われています。
直接作用型経口抗凝固剤のうち、
ダビガトランはCYP3A4では代謝を受けず、
主にPgpで代謝されます。
アピキサバンとリバロキサバンはCYP3A4で主に代謝されます。

クラリスロマイシン(商品名クラリス、クラリシッドなど)は、
上気道感染やピロリ菌の除菌などに、
広く使用されているマクロライド系の抗菌剤ですが、
CYP3A4とPgpの両者の阻害作用を持ち、
触接作用型抗凝固剤と併用すると、
その代謝を抑制することが知られています。
クラリスロマイシンの併用により、
抗凝固剤の血液濃度は、
20から100%増加した、というデータもあります。

そして、実際に抗凝固剤とクラリスロマイシンの併用により、
出血系の有害事象が増加することを示唆するデータも、
これまでに複数存在しています。

アジスロマイシン(商品名ジスロマックなど)は、
クラリスロマイシンと同じマクロライド系抗菌剤で、
ほぼ同じ用途に使用されますが、
その代謝はCYP3A4やPgpには拠らない、
という特徴があります。

仮にクラリスロマイシンの併用による出血リスクの増加が、
抗凝固剤の代謝を妨害しているためだとすると、
そうした作用のないアジスロマイシンの使用では、
そうしたリスクの増加はない筈です。

そこで今回の研究では、
カナダのオンタリオ州において、
66歳以上で直接作用型経口抗凝固剤の、
ダビガトラン、アピキサバン、リバロキサバンのいずれかを内服中に、
クラリスロマイシンを使用した6592名と、
アジスロマイシンを使用した18351名を抽出し、
その使用後30日以内の、
入院を要した消化管出血もしくは脳内出血の発症リスクを、
比較検証しています。

その結果、
抗凝固剤使用中にアジスロマイシンを使用した場合と比較して、
クラリスロマイシンを使用すると、
その後の出血系合併症で入院するリスクは、
アジスロマイシン群が0.43%に比較して、
クラリスロマイシン群は0.77%で、
クラリスロマイシン使用群の方が1.71倍(95%CI:1.20から2.45)
有意に増加していました。

このように、
それほど明確な差と言えるかは微妙ですが、
アジスロマイシンの使用と比較して、
クラリスロマイシンの使用は、
抗凝固剤による出血系合併症のリスクの増加に繋がっており、
その併用には今後はより慎重である必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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新型コロナウイルス感染のマスクやソーシャルディスタンスによる予防効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナに対するソーシャルディスタンスやマスクの効果.jpg
Lancet誌に2020年6月1日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染予防のための、
ソーシャルディスタンスやマスクなどの予防効果を検証した論文です。

新型コロナウイルス感染症(SARS-CoV2)の感染が、
東京ではまだ予断を許せない状況が続いています。
治療薬にも決定打がなく、
ワクチンがまだ開発されていない現状では、
人間同士の距離を取る、マスクやフェイスシールドをする、
などの原始的な方法しか、
感染予防の手段がないのが現実です。

それでは、
実際にソーシャルディスタンスやマスクなどには、
どの程度の予防効果があるのでしょうか?

ソーシャルディスタンス(physical distancing)については、
良く言われる1メートルの距離というのが、
元になっているのが1940年代の古いデータで、
コロナウイルスの飛沫は8メートル飛ぶという実験データもあるので、
無意味ではないか、というような意見もあります。

マスクについては、
感染者が周囲に広げることは予防出来ても、
健康な人がマスクをして感染が予防出来るかどうかは、
証明されていない、というような見解もありました。

今回の研究では、
これまでの臨床研究のデータのうち、
新型コロナウイルスと、
SARSの原因ウイルスなどの他のベータコロナウイルスのデータを抽出して、
ソーシャルディスタンスやマスク、ゴーグルなどの感染予防効果を、
これまでのデータをまとめて解析する、
システマティック・レビューとメタ解析という手法で、
科学的に検証しています。

その結果、
まずソーシャルディスタンス
(論文の表現ではphysical distancing)の効果は、
1メートル以上の距離を取ることにより、
それより距離を縮めた場合と比較して、
ベータコロナウイルス感染のリスクは、
82%(95%CI: 0.09から0.38)有意に低下していました。
この感染予防効果は、
その距離をより長くすることにより高くなっていました。

マスクやレスピレーター(これは防毒マスクのようなイメージです)の予防効果は、
トータルでは85%(95%CI:0.07から0.34)で、
N95マスクやそれに準じるサージカルマスクの有効性が高く、
医療現場での予防効果は、
一般社会での予防効果より勝っていました。

目を防御するゴーグルなどの予防効果は78%(95%CI:0.12から0.39)で、
ゴーグルなどの目の周辺の防御が、
マスクとは独立して有効性を持っていることが示されました。

このように、
比較的新しいデータの解析によっても、
ソーシャルディスタンスやマスク、ゴーグルの、
感染予防としての有効性は明確に示されていて、
それが100%ではなく、
気をつけていても感染は起こりうる、
という点には注意が必要ですが、
今後より良い予防策や治療法が開発されるまでは、
現状の予防法が最善のものであることは、
間違いがないと言って良いように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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「3-4x10月」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
3-4X10月.jpg
北野武監督の第2作で、
北野監督の作品としては、
個人的には一番好きな映画です。

高校生の時には「タモリのオールナイトニッポン」が愉しみで、
確か高校卒業前くらいに始まったのが、
「ビートたけしのオールナイトニッポン」でした。

毎週番組を生で聴くか、
テープに撮って次の日に聴くのが、
暗い学生時代の唯一と言っても良い愉しみで、
「フライデー襲撃事件」の時などは、
本当にショックを受けました。
あの時は高田文夫さんだけで、
どうにか数ヶ月繋いだんですよね。

それから映画の話になって、
「戦場のメリークリスマス」の裏話も、
楽しかったですし、
「その男、凶暴につき」の時や、
「あの夏、いちばん静かな海」の時は、
撮影のアイデアなどを、
喜々として話してくれるのが嬉しくて、
どんな映画になっているんだろう、
ととても愉しみにして映画館に出掛けました。

たけしさんにとっても、僕にとっても、
とても楽しい平和な時間でした。

ただ、この「3-4x10月」(3対4エックス10月)の時には、
あまりラジオでの話はなかったように記憶しています。
そのせいもあって、この映画はロードショーでは観ませんでした。
「あの夏、いちばん静かな海」を、
松本の縄手通りにあった今はもうない映画館で観て、
とても感動して驚いて、
たけしさんの才能が見事に開花していることが、
素直に嬉しかったことを覚えています。

それで、
そう言えば観ていなかったな、
と思って、
ビデオで「3-4x10月」を観たのです。

柳ユーレイさんが主役でしょ。
正直最初は手抜きじゃん、と思ったのですが、
いやいやそんなことはなくて、
この無為で透明なような若者を狂言回しにして、
ちょっとゴダールを思わせるように、
即興的な物語が予測不能の展開を見せてゆきます。

たけしさん、凄いじゃん。

素直にそう思いました。

テーマは「暴力」なんですね。
これは結局その後の多くの北野武作品において、
一貫したテーマでもあるのですが、
それを身近なレベルからプロの暴力集団のレベルまで、
縦横無尽に繰り出しながら、
その本質についての哲学的な考察を行っています。

かつて、人間にとって身近な「暴力」というものが、
ここまで緻密かつ深いレベルで考察されたことがあったでしょうか?
映画では勿論のこと、
文学など他のジャンルを併せて考えても、
ここまで深い暴力の考察はなかったように思います。

謎めいた題名は、
野球の9回裏の逆転劇の意味で、
オープニングからラストまで、
その才知が冴えに冴え渡った、
北野武監督の大傑作です。

その後焼き直しのような映画を、
北野監督は沢山作っているので、
今改めて観るとその新味を感じにくいのが少し残念ですが、
この作品が正真正銘のオリジナルで、
当時の最先端の映画であったのです。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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「アラビアのロレンス」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で、
午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
アラビアのロレンス.jpg
1962年に公開されたデヴィッド・リーンの代表作、
「アラビアのロレンス」です。

これは僕にとっては、
映画のオールタイムベストの1本。
小学校の時から大作映画やスペクタクル映画、
というのが大好きで、
「ベン・ハー」、「十誡」、「ポセイドン・アドベンチャー」、
皆70ミリかシネラマで渋谷パンテオンか渋谷東急、
テアトル東京あたりの映画館で、
母親と一緒に小学生の時に観ています。

その中でも、
最初に観た時から、
これはちょっと普通の歴史大作とは違うぞ、
と子供ながらに思ったのがこの「アラビアのロレンス」で、
それでも小学生が観て、
分かるような映画ではないですよね。
正直、あらすじは理解出来ても、
その言わんとするところは、
あまり理解はしていませんでした。

その後高校生くらいの時に観直して、
「これは傑作」と思って、
映画館のスクリーンで観たのは都合2回ですね。
その後は何度かビデオやDVD、テレビなどで観直しています。

これね、本当に堂々たる風格のある映画ですよね。
単にお金を掛けているというだけではなく、
美術品のような立派さがありますね。
大画面を意識した構図がね、
また堂々たるもので本当に素晴らしいですね。
こういう映画は今絶対に作れません。
今の映画は変にアップを入れるでしょ。
この映画はそういうことを全くしていないんですよね。
とても上品です。

脚本がね、非常に哲学的で文学的なんですよね。
きちんとリアルな歴史物語としての構造を保ちながら、
随所にちょっと抽象的で記号的な表現を入れているでしょ。
そうした台詞がキャストの言葉として、
決して浮いていない、という点がまた凄いんですね。
たとえば拳銃であるとか、
象徴的な小道具の使い方も非常に上手いですね。
この辺り名人芸というか、
映画脚本術の、歴史的に1つの頂点である、
という気がします。

特筆するべきは砂漠の自然を捉えた映像の美しさで、
最初のロレンスが消したマッチの炎から、
砂漠の地平線に上る朝日に繋げるショットの鮮やかさ、
オマー・シャリフが登場する、
地平線から陽炎が浮かび、それがみるみる近づく場面、
砂嵐や風紋、駆け抜ける駱駝兵の大群など、
思わず息を呑む美しさです。

炎から砂漠へのジャンプショットは、
その後の「2001年宇宙の旅」を呼び込んだと思いますし、
動物に跨がった群衆による砂漠の戦闘は、
「スターウォーズ」の原型になっています。
つまり、映像において、
この映画は多くのその後のヒット作の、
母であり父なのです。

内容的には歴史大作という体裁を取りながら、
この映画はロレンスというロマンチックな幼児性を持つ若者の、
別世界での冒険を描いた、
ファンタジーに近い構造を持っています。
「ネバー・エンディング・ストーリー」や「オズの魔法使い」と、
同じ構造の物語なのですね。
しかし、ファンタジーであれば、
ラストは元の世界に戻ってめでたしめでたしで、
置いて来た架空の世界のことを、
主人公は顧みる必要はありません。
しかし、この映画のアラビアは、
ロレンスの幻想ではなく生身の人間の棲む世界なので、
それを架空の冒険世界のように生きてしまったロレンスは、
映画のラストで当然の如く、
「アラブの現実」に復讐されるのです。

これまでにこのように厳しく、
男のロマンと現実との相克を描いた映画があったでしょうか?

その点が僕の考える、
この映画の最も素晴らしい点だと思います。

大学生の時に友達と一緒にテレビで観たら、
最初のアラブ人の道案内と2人でロレンスが旅をするところで、
食事を左手で食べる場面があるんですね。
海外に詳しい友達が、
「不浄な左手でイスラム教徒が食べる訳ないじゃん。いい加減だな」
と指摘したので、
「名画だよ」と言って見せた手前、
何か恥ずかしい気持ちになって、
最後まで観ないで止めてしまいました。

今回その場面を観直してみたのですが、
左手で食べたのは、
アラブ人ではなくてロレンスでした。
アラブ人は右手だけを使って食べています。
なので、現地の事情に詳しい筈のロレンスですから、
それでもおかしいと言えばおかしいのですが、
はっきり大きなミス、
というほどでもないのかな、
というようには思いました。

ただ、1962年としては、
しっかり時代考証をしている映画だと思うのですが、
当然の如くアラブ人も主要キャストは皆英語を喋っていますし、
リアルというのとはほど遠いですよね。

この映画のアラブというのは、
プッチーニのオペラで描かれる「ラ・ボエーム」のフランスや、
「蝶々夫人」の日本と同じように、
1つの異世界との交流を描くための道具立てであって、
リアルな世界とは違うと捉えるべきなのではないかと思います。

いずれにしても、
映画という藝術が最も文化の先端であった幸福な時代の、
最良の果実の1つと言って間違いのない名作だと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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高齢者の降圧剤減量の安全性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
80歳以上の高齢者の降圧剤減量.jpg
2020年5月26日のJAMA誌に掲載された、
高齢者の降圧剤の減量についての論文です。

高血圧のコントロールは、
若年層においてはなるべく厳密に、
正常血圧に近づけることが原則ですが、
80歳以上のような高齢者においては、
150/90を上回らない程度に、
緩やかにコントロールすることが推奨されています。

これは高齢者の血圧コントロールの目的は、
将来の心血管疾患の進行を予防することではなく、
その時点での急激な血圧上昇による、
予期せぬ事態の予防に力点があるので、
そのためには目標となる血圧が異なるのです。
更には80歳以上の高齢者では、
降圧剤の有害事象や副作用が起こりやすくなりますし、
低血圧は認知機能低下や転倒骨折などの原因にもなります。

そうした点を総合的に考えると、
高血圧の患者さんが降圧治療を継続したまま高齢になった時点で、
降圧剤の減量を図ることが妥当であると考えられます。

しかし、安定している状態の患者さんの場合、
減量により却って血圧が急上昇したり、
体調不良の原因となることはないのでしょうか?

実はこうした臨床上の重要な問題に対して、
精度の高い臨床研究はあまり存在していませんでした。

今回の研究では、
イギリスの69カ所のプライマリケアのクリニックにおいて、
2剤以上の降圧剤を使用継続していて、
収縮期血圧が150mmHg未満である、
80歳以上の患者トータル569名をくじ引きで2つに分けると、
一方はそれまでの治療を継続し、
もう一方は特定のアルゴリズムに基づき、
1種類の降圧剤を中止して、
その後12週間の経過観察を行っています。

その結果、
観察期間終了時に収縮期血圧が150未満であった比率は、
減量群とコントロール群との間で有意な差はなく、
有害事象においても差は認められませんでした。
その一方で減量により血圧値は平均で3.4mmHgは上昇しており、
この点は減量は慎重に行うべきであることを、
示しているように思われました。

臨床においては、
慎重に降圧剤の種類を減らして様子を見ることは、
通常に行われていることですが、
その根拠が明確に示されたことは意義のあることで、
今後より詳細な検証が、
積み重ねられることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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新型コロナウイルス感染に伴う小児の川崎病様症状(フランスの報告) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナウイルスと川崎病フランス.jpg
British Medical Journal誌に2020年6月3日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症の併発症として最近注目されている、
小児の川崎病様症状についての論文です。

川崎病というのは、
1967年に川崎富作博士によって初めて報告されたことで、
この名前があります。

1歳前後をピークにほぼ5歳未満で発症し、
インフルエンザのような急な高熱が持続して、
目が充血し、手足の先や舌が赤く脹れ、
全身に湿疹が出て、首のリンパ腺が脹れます。
BCG接種後のお子さんでは、
その痕が赤く脹れるのも特徴です。

最初はインフルエンザや湿疹を伴う感染症と、
見分けることは難しいのですが、
数日で他の疾患とは経過の違うことが明らかになると、
この病気が疑われます。

その病態の特徴は全身の中小の血管の炎症で、
特に心臓を栄養する冠動脈という血管に炎症が起こると、
冠動脈瘤という血管のこぶを作る合併症が、
一番の問題となり、
入院の上アスピリンと免疫グロブリンによる治療が行なわれます。

経過は一部を除いて良好です。

さて、この川崎病の原因は今に至るまで不明です。

病状の経過は感染症を疑わせるのですが、
原因となるウイルスや細菌などは見付かっていません。
集団感染を疑わせるような事例はないのですが、
兄弟での発症事例などは報告されています。
また、地域的、時間的な流行のあることは明確で、
ある地域で流行した後で、
また別の地域で流行る、というようなことがあります。
ある年には非常に多い、
というようなこともあります。
何らかの環境要因や病因がなければ、
このような現象は説明が付きません。

この病気は日本に多く、
「流行」と言っておかしくはない形態を取りますが、
海外でも発症しているものの、
日本のような流行はしていません。
そこで何らかの体質的な関与があると考えられ、
発症し易さに関わる遺伝子の解析などが行なわれています。
この面では知見が少しずつ得られていて、
全てではありませんが、
遺伝的な素因で説明可能な部分があります。
幾つかの遺伝子のタイプも報告されています。

しかし、基本的には遺伝病ではありませんから、
別個の環境要因や病原体などの関与が
あることもまた間違いがありません。

真菌やウイルスの感染がその引き金になるのではないか、
という仮説も提唱されていますが、
現時点で明確に証明されたものはないようです。

さて、この川崎病様症状の血管炎が、
新型コロナウイルス(SARS-CoV2)の感染流行に伴って、
欧米で増加しているという報告が最近複数認められています。
アメリカ、イギリス、イタリアで事例が報告されていて、
今回のものはフランスでの報告になります。

フランスの単一の病院の小児科において、
18歳以下の21名が川崎病様症状を呈し、
そのうちの57%に当たる12名が、
心不全からショック症状を来す、
川崎病ショック症候群と呼ばれる重篤な状態となっています。
また、76%に当たる16名が心内膜炎を併発していました。
81%に当たる17名は集中治療室に入室しています。
かなり重篤な事例が多かった、
ということが分かります。
57%に当たる12名はアフリカ大陸出身の祖先を持っていました。
90%に当たる19名は、
SARS-CoV-2のIgG抗体が陽性で、
8名はRT-PCR検査も陽性でした。

このように、
新型コロナウイルス感染症に伴い、
川崎病様の血管炎が生じるケースがあることは、
複数の報告が世界の別個の地域から見られることより、
ほぼ事実と考えて良さそうです。

ただ、日本で多く報告されている、
オリジナルの川崎病と比較すると、
幾つかの違いが見られます。

古典的川崎病はアジア人種に多いのに対して、
今回の川崎病様症状はアフリカ系人種に多く、
年齢は古典的川崎病では6ヶ月から5歳が好発ですが、
今回の川崎病様症状は4から17歳が好発です。
古典的川崎病では消化器症状は稀ですが、
今回の川崎病様症状では嘔吐や下痢、腹痛などの消化器症状が、
全例で認められています。
重症例である川崎病ショック症候群は、
古典的川崎病では2から7%くらいの発症率ですが、
今回の川崎病様症状では57%という高率で認められています。
心不全を伴う心内膜炎が多いことも特徴です。

このように、
今回認められた新型コロナウイルスに伴う小児の血管炎は、
おそらく川崎病と同様の原因によるもので、
その原因を究明することにより、
川崎病自体の病因の解明にも、
繋がることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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