「37セカンズ」 [映画]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
アメリカを拠点に活躍するHIKARIさんが、
脳性麻痺の若い女性の自立の物語を、
実際に脳性麻痺を持つ演技は素人の女性を主役に、
映画の魅力たっぷりに描いた力作です。
これは全体としては、
昔の羽仁進さんのドキュメンタリーや、
今村昌平さんの「人間蒸発」みたいなものに近いですね。
本物のバックボーンを持つ素人に演技をさせて、
虚構と現実のスレスレを狙う、
という感じのスタイルです。
ただ、昔はこういうキワドイ創作は男性監督が殆どでしたが、
今では女性監督の独壇場という違いがあります。
作品の内容としては、
過保護な母親に守られて生きていた脳性麻痺の女性の自立、
という極めてオーソドックスなものです。
途中で自分探しの旅に海外に行ったり、
ラストを母親の涙と、
前を向いた主人公の姿で締めくくるのも、
教科書通りという感じ。
ただ、そうした座りの良い、
八方美人的な設定でありながら、
障がい者の性の問題を生々しく過激に描いたり、
アニメやコスプレのポップカルチャーの中で、
ゴーストライターとして消費される様を描くなど、
かなり扇情的であざとい表現も途中に含まれています。
たとえば、最初に母親と2人で、
全裸になって入浴をする様子であるとか、
男を買って行為の途中で失禁してしまうとか、
これまであまり映画では取り上げられることのなかったような場面が、
驚くほど真正面から描かれています。
正直途中では少し暴走気味ではないかしら、
素人の役者さんに、
ここまでさせて大丈夫なのかしらと、
少し引いてしまうような気分になるのですが、
後半の自分探しの旅や母親からの自立という、
とても口当たりの良い感動的な結末が、
それまでの過剰さを全て掬い取ってしまうような感じがあり、
ラストまで観ると、
全て綿密に計算がされている、
ということが分かります。
ただ、今の映画はある種のあざとさや過剰さがないと、
評価されないし注目もされないというのは分かるのですが、
あまりに受ける要素や際どい表現を、
盛り込みすぎではないかしら、
という違和感はあります。
あまり物語上の必然性なく、
盛り込まれている部分も多いように思うからです。
そのために素直に好きな映画かと言われると、
そうも言いにくいのですが、
昔の日本映画の雰囲気を強く残しつつ、
新しい風をそこに注ぎ入れた力作であることは確かで、
内容にご興味のある方であれば、
是非一見をお勧めしたいと思います。
こういう映画を大スクリーンで観るという機会は、
あまりないように思うからです。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
アメリカを拠点に活躍するHIKARIさんが、
脳性麻痺の若い女性の自立の物語を、
実際に脳性麻痺を持つ演技は素人の女性を主役に、
映画の魅力たっぷりに描いた力作です。
これは全体としては、
昔の羽仁進さんのドキュメンタリーや、
今村昌平さんの「人間蒸発」みたいなものに近いですね。
本物のバックボーンを持つ素人に演技をさせて、
虚構と現実のスレスレを狙う、
という感じのスタイルです。
ただ、昔はこういうキワドイ創作は男性監督が殆どでしたが、
今では女性監督の独壇場という違いがあります。
作品の内容としては、
過保護な母親に守られて生きていた脳性麻痺の女性の自立、
という極めてオーソドックスなものです。
途中で自分探しの旅に海外に行ったり、
ラストを母親の涙と、
前を向いた主人公の姿で締めくくるのも、
教科書通りという感じ。
ただ、そうした座りの良い、
八方美人的な設定でありながら、
障がい者の性の問題を生々しく過激に描いたり、
アニメやコスプレのポップカルチャーの中で、
ゴーストライターとして消費される様を描くなど、
かなり扇情的であざとい表現も途中に含まれています。
たとえば、最初に母親と2人で、
全裸になって入浴をする様子であるとか、
男を買って行為の途中で失禁してしまうとか、
これまであまり映画では取り上げられることのなかったような場面が、
驚くほど真正面から描かれています。
正直途中では少し暴走気味ではないかしら、
素人の役者さんに、
ここまでさせて大丈夫なのかしらと、
少し引いてしまうような気分になるのですが、
後半の自分探しの旅や母親からの自立という、
とても口当たりの良い感動的な結末が、
それまでの過剰さを全て掬い取ってしまうような感じがあり、
ラストまで観ると、
全て綿密に計算がされている、
ということが分かります。
ただ、今の映画はある種のあざとさや過剰さがないと、
評価されないし注目もされないというのは分かるのですが、
あまりに受ける要素や際どい表現を、
盛り込みすぎではないかしら、
という違和感はあります。
あまり物語上の必然性なく、
盛り込まれている部分も多いように思うからです。
そのために素直に好きな映画かと言われると、
そうも言いにくいのですが、
昔の日本映画の雰囲気を強く残しつつ、
新しい風をそこに注ぎ入れた力作であることは確かで、
内容にご興味のある方であれば、
是非一見をお勧めしたいと思います。
こういう映画を大スクリーンで観るという機会は、
あまりないように思うからです。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。