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マスクは感染予防にどの程度有効なのか? [科学検証]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療に廻り、
その後産業医の訪問に廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
マスクの有効性.jpg
2011年のInfluenza and Other Respiratory Viruses 誌に掲載された、
マスクの感染予防効果についてのレビューです。

新型コロナウイルス肺炎の流行で、
医療機関でも医療用のマスクが手に入りにくい状態となっていることは、
先日のブログ記事でもご紹介しました。

マスクの有効性は、
実際に飛沫感染するような病気に感染していて、
咳などの症状が有る場合に、
その患者さんが着けることにおいては、
明確に実証されています。

無防備にしていれば、
周辺のかなりの範囲に、
咳の度にウイルスを含む飛沫が飛び散ることになりますが、
その患者さんがマスクをしていれば、
その飛沫の多くは飛び散らないで済むからです。

ただ、病気に感染していない人が、
マスクをすることによって、
感染している人と接近しても、
その感染を予防出来るかどうかについては、
そこまで明確な有効性が実証されている訳ではありません。

欧米では病気になっていない人が、
感染症の患者さんに対応する医療やケアのスタッフでもないのに、
予防のためにマスクを着ける、
というような習慣はあまりなく、
むしろ病気のサインのように思われて忌避される傾向がある、
とされています。

従って、
マスクの感染予防効果を検証したような研究は、
欧米ではあまりなく、
上記のレビューには、
これまでの8つの介入試験が紹介されていますが、
そのうちの3つは中国のもので、
1つは日本のもの、
アメリカが2つで、
オーストラリアとカナダのものが1つずつです。

そのうち5つの臨床試験においては、
マスクのインフルエンザ感染に対する予防効果は、
明確には確認をされていません。
残りの3つの臨床試験においては、
一定のマスクの有効性が認められていますが、
例数が少なかったり、グループ分けが適切でないなど、
その結果の信頼性はあまり高いものではありません。
以上は全てインフルエンザ感染についての検証です。

SARSの感染に対しては介入試験はなく、
観察研究が殆どですが、
マスク装着に一定の感染予防効果が認められています。
ただ、研究デザインにおける信頼性は、
それほど高いものではなく、
サージカルマスクとより感染防御効果の高いN95マスクとの比較では、
あまり明確な差は見られていません。

このように、
マスク装着により一定の感染予防効果が、
想定はされるのですが、
その有効性は臨床研究のレベルでは、
それほど明確に証明はされておらず、
こうした場合のマスクの機能による効果の差も、
明確ではありません。

従って、
マスクの必要性は個別に判断することが大切で、
マスクをしているから安心、
という考えにも、
マスクは無駄だ、
という考えにも、
あまり科学的根拠はない、
と言う点は確認しておく必要があると思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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