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新型コロナウイルス肺炎425例の特徴(NEJM) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
新型コロナウイルス肺炎のまとめ.jpg
これは2020年2月5日付で、
the New England Journal of Medicine誌にウェブ掲載された、
新型コロナウイルス(2019-nCoV)感染肺炎425例の臨床像をまとめた、
中国発の報告です。

間違いなく現時点においては、
この病気の最もまとまった報告です。

これは2019年12月から2020年1月に掛けて、
遺伝子検査で確定診断された事例のみの解析です。

この病気を疑う基準としては、
38度以上の発熱があり、
レントゲンもしくはCT検査において肺炎像があって、
白血球数は正常もしくは低下しているか、リンパ球数が低下していて、
3から5日間の抗菌剤による治療に反応しない、
という臨床的ガイドラインが提示されています。

425例の患者の年齢の中央値は59歳で、
15歳から89歳の事例が報告されています。
15歳未満の肺炎事例はなく、
56%が男性です。

10人の患者の濃厚接触者を観察した結果、
平均の潜伏期間は5.2日(95%CI: 4.1から7.0)、
患者に接触してから感染症状が出るまでの期間は、
95%が12.5日以内です。
感染の広がりの初期において、
感染者が2倍になるまでの時間は7.4日で、
ある人の症状が出てから、感染した次の人に症状が出るまでの時間は、
平均で7.5日(95%CI:5.3から19)です。
何も対策を講じなければ、
概ね1週間で感染者が倍になる、
というイメージです。
ある1人の感染者から直接感染する二次感染者の数を、
the basic reproductive numberと呼びますが、
その数値(R0)(アールノートと言います)
は2.2(95%CI: 1.4から3.9)と計算されています。

このR0が1を超えている限り、
感染は拡大し続けます。
SARSのR0は3くらいと算出されていましたから、
現時点での感染力はSARSより低いという可能性が高いのです。
徹底した感染の封じ込めにより、
このR0が1を下回るようになると、
時間は掛かっても感染は終息することになる訳です。

現状の待期期間が14日とされているのは、
このデータが元になっているからです。
潜伏期間にある人は、
ほぼほぼ14日以内には症状が出ているからです。
この場合の症状というのは、
最初に定義された基準のことです。
つまり、38度以上の熱などの症状という意味です。
ただ、濃厚接触者においては、
症状が揃わなくても検査は行われています。

小児に感染事例がないと言う現象は、
まだその理由は不明ですが、
不顕性感染がある以上、
小児に感染しないということはほぼ有り得ないので、
おそらく小児では感染しても軽症で重症化はしにくい、
という何らかの理由があるように思われます。
ただ、ウイルスの性質が変われば、
この点はそのままとは限りません。

今回の論文では患者の基礎疾患などの情報はありません。
何となく情報を小出しにして論文数を稼いでいる、
というような印象もなくはありませんが、
それは編集部も容認している今回のみの特例です。
ともかく分かったことから論文化して発表する、
という姿勢は正しい在り方で、
今後もサーチを続けたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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