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新規コレステロール降下剤ベンペド酸の効果と安全性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日で診療は午前中で終わり、
午後は産業医面談などで都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ベンペド酸の効果と安全性.jpg
2019年のJAMA誌に掲載された、
新規のコレステロール降下剤の、
第3相の臨床試験結果をまとめた論文です。

コレステロール降下薬として、
スタチンは画期的な薬剤ですが、
特に家族性の高コレステロール血症などにおいては、
高用量のスタチンを使用しても、
目標とするコレステロール値を達成できない、
というケースはしばしばあり、
スタチンに上乗せして使用可能な薬剤が求められています。

その候補としては、
現状コレステロールの吸収を抑えるエゼチミブと、
別個のメカニズムで強力にコレステロールを低下させる、
PCSK9阻害剤がありますが、
エゼチミブの効果は充分とは言えず、
PCSK9阻害剤は注射薬で使いにくい、
という側面があります。

今回臨床試験が行われているベンペド酸(Bempedoic Acid)は、
スタチンと同じコレステロール合成酵素の阻害剤ですが、
スタチンより上流の酵素を阻害する、
という性質を持っています。
更には飲み薬で1日1回の内服で済む、
という利点があります。

今回の第3相臨床試験では、
北アメリカとヨーロッパの91の医療施設において、
充分量のスタチンを使用していても、
血液のLDLコレステロールが70mg/dL以上である、
家族性高コレステロール血症のヘテロの患者もしくは、
心血管疾患を有している患者、
トータル779名を、
主治医や患者本人にも分からないように、
くじ引きで2つのグループ(実薬2に対し偽薬1)に分けると、
一方はベンペド酸を1日180mgで使用し、
もう一方は偽薬を使用して、
52週の経過観察を行なっています。

ただ、今回の試験での主な評価ポイントは、
使用後12週の時点でのLDLコレステロール値で、
全ての事例で52週を経過している訳ではありません。

いわば中間報告的なものです。

その結果、
12週の時点で偽薬に対して、
ベンペド酸はLDLコレステロールを17.4%
(95%CI: -21.0から-13.9)有意に低下させていました。
有害事象はトータルには差はなく、
尿路感染症や高尿酸血症はベンペド酸群において、
有意に高値となっていました。

このように、ベンペド酸に強力なLDLコレステロール低下作用があり、
スタチンへの上乗せ効果もあることはほぼ間違いがなく、
今後より長期の安全性と有効性の検証に、
課題は絞られたと言えそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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急性心筋梗塞後のコルヒチン使用の効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コルヒチンの急性心筋梗塞後の有効性.jpg
2019年のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、
痛風発作の古くからある治療薬を、
急性心筋梗塞後の予後改善に用いるという、
興味深い臨床試験の結果をまとめた論文です。

動脈硬化の発生と進行において、
組織障害から炎症性サイトカインなどで惹起される炎症が、
中心的な役割を果たしていることは間違いがありません。

そうであるならば、
動脈硬化の進行予防や心血管疾患の再発予防のために、
炎症を抑えるような治療が必要である筈です。

しかし、
実際にはスタチンや低用量アスピリンなど、
その主作用以外に抗炎症作用のある薬が、
治療に使用されていますが、
直接的に炎症を抑えることが主作用の薬剤が、
臨床に応用されている、
ということはありません。

炎症性サイトカインの代表である、
インターロイキン1βを阻害するカナキヌマブという薬剤を、
慢性の虚血性心疾患に使用した臨床試験の結果が、
2017年のNew England…誌に掲載されましたが、
心血管疾患による死亡と心筋梗塞などを併せたリスクは、
15%有意に低下したものの、
重篤な感染症のリスクを増加させており、
心血管疾患によるリスクの低下も、
主に非致死性の心筋梗塞の低下のみで、
満足のゆく結果とはなりませんでした。

コルヒチンという薬があります。

主に痛風発作の初期段階の治療に使用されている薬剤ですが、
この薬は細胞内にある微小管に呼ばれる構造の、
機能を低下させるという特殊な作用を持ち、
白血球の活動も低下させて炎症を抑制する働きがあります。

つまり、抗炎症作用のある薬です。

そこで今回の研究では、
急性心筋梗塞を起こして30日以内の患者さん、
トータル4745名を患者さんにも主治医にも分からないように、
クジ引きで2つの群に分けると、
一方はコルヒチンを1日0.5mg使用継続し、
もう一方は偽薬を使用して、
中間値で22.6か月の経過観察を行なっています。

その結果、
心血管疾患による死亡と心停止、心筋梗塞、脳卒中、
カテーテル治療を要する狭心症を併せたリスクは、
偽薬と比較してコルヒチン群では、
23%(95%CI; 0.61から0.96)有意に低下していました。

個別のリスクで見ると、
脳卒中のリスクが74%(95%CI: 0.10から0.70)、
カテーテル治療を要した狭心症が50%(95%CI: 0.31から0.81)と、
いずれも有意に低下していましたが、
それ以外のリスクは有意な低下はありませんでした。
コルヒチンの有害事象は主に下痢で、
感染症の発症については両群で有意差はありませんでした。

今回の検証では、
コルヒチンにより急性心筋梗塞後の、
急性期の狭心症や脳卒中のリスクが、
明確に低下していました。

これは通常のアスピリンやスタチンなどの薬剤は、
使用されている上での上乗せの効果ですから、
かなり画期的な効果と言って良いと思います。

ただ、この臨床試験においては、
1.9%の患者さんは最後まで経過を追えず、
19%の患者さんは途中で薬の使用を中断しています。
この高い中断率が結果に影響を与えた可能性は否定出来ません。

今後この知見は検証を重ねる必要がありますが、
古くからある安い薬に、
高価な新薬をしのぐ効果があるという結果は、
とても興味深いもので、
今後のデータの積み重ねに期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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降圧剤の種類と認知症リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
降圧剤と認知症リスク.jpg
2019年のLancet Neurology誌に掲載された、
高血圧の治療と認知症リスクについての論文です。

認知症と血圧との関係については、
これまでに多くの議論があります。

中年期以降の認知症発症前の高血圧が、
その後の認知症発症と強く結び付いていることは、
ほぼ実証されている知見です。

ただ、高齢になった時期の高血圧と、
認知症のリスクとの関係については、
血圧が低いとむしろリスクは高まる、
というような知見もあります。
しかし、有名なSPRINTという大規模臨床試験においては、
75歳以上の年齢層でも、
120mmHgを下回る目標値を設定した方が、
認知機能の低下も予防された、
という結果が得られています。

今回の研究は、
これまでのデータをまとめて解析したメタ解析ですが、
55歳以上の年齢における血圧値と、
その後の認知症リスクとの関係、
そして高血圧における降圧剤治療が、
認知症発症リスクに与える影響を、
降圧剤の種別ごとに検証しています。

登録時に55歳以上で認知症のない一般住民を、
7年以上観察した6つの疫学研究の、
トータルで31090名のデータをまとめて解析したところ、
血圧が収縮期で140mmHg以上もしくは拡張期で90以上あると、
降圧剤による治療をしている方が、
認知症の発症リスクは12%(95%CI:0.79から0.98)、
アルツハイマー病の発症リスクは16%(95%CI:0.73から0.97)、
それぞれ有意に低下していました。
この降圧剤治療による認知症予防効果は、
治療薬の種類による違いは認められませんでした。
また、血圧が収縮期で140未満かつ拡張期で90mmHg未満では、
降圧剤の使用による認知症発症予防効果は、
確認されませんでした。

このように、
比較的高齢の年齢層においても、
血圧が収縮期で140mmHg以上または拡張期で90mmHg以上の時には、
降圧剤の使用により、
一定の認知症発症予防効果があると考えられますが、
それは血圧を低下させることそれ自体によるもので、
使用する降圧剤には関係はないようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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チェイコフスキー「エウゲニ・オネーギン」(新国立劇場レパートリー) [オペラ]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
エフゲニ・オネーギン.jpg
新国立劇場のレパートリーとして、
チャイコフスキーの「エウゲニ・オネーギン」が、
久し振りに新演出で上演されました。

これはいかにもロシア的な、
繊細でロマンチックで大人の味わいのメロドラマで、
今回はメインのキャストとスタッフを、
全てロシア出身のアーティストで固めて、
オーソドックスでロシアの香り漂うオペラに仕上げています。

これは、なかなか良かったですよ。

突出したところはなかったのですが、
歌手も丁寧な歌唱でしたし、
オケも繊細な響きでそれに応えていました。

セットもクラシックな美しさを狙ったもので、
以前と比べるとお金がないので、
「トスカ」や「アイーダ」のような豪華さはありませんが、
随所にセンスを感じさせる美しいものでした。

最近は大規模な引っ越し公演も減って、
新国立劇場も新制作は減りましたが、
新国立劇場に限って言えば、
むしろ質の高い舞台は増えているように思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごしください。

石原がお送りしました。
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別冊「根本宗子」第7号「墓場、女子高生」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で、
午前中は三宅医師が、
午後は中村医師が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
墓場、女子高生.jpg
根本宗子さんは、
今最も精力的に活躍している演劇人の1人ですが、
今回(と言っても先月ですが)は、
珍しく自作ではなく、
自身が役者として出演したこともある、
福原充則さんの、
「墓場、女子高生」を上演しました。

この作品は、
自殺した女子高生が、
同級生の黒ミサのような儀式で蘇生するのですが、
死の原因さえ分からないままに、
結局またすぐ自殺してしまう、
という皮肉でブラックなお芝居で、
いかにも小劇場的な大人数のキャストの、
ドタバタ的演技が、
作品の完成度を下げているという欠点はありながらも、
奇妙な味で得難い魅力のある作品です。

作者自身による演出の舞台は一度観ていますが、
リアルな墓場のセットで展開される、
結構泥臭い舞台でした。

それを今回の上演では、
かなりスタイリッシュで抽象的なセットを組み、
女子高生のアンサンブルには、
同性の演出家らしい繊細な工夫があって、
それでいて作品の勘所はしっかりと伝えているので、
主役の女子高生を根本さん自身が演じるのは、
「それはちょっと…」という感じはあるのですが、
まずは根本さんの演出力を、
見せつける、という感じのお芝居ではあったと感じました。

この戯曲の入門編としては、
ちょっと問題がありますが、
応用編としてはなかなかの水準であったと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原かろお送りしました。
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運動後の血圧低下に対するマウスウォッシュの効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日はクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療には廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
マウスウォッシュの血圧低下作用.jpg
2019年のFree Radical Biology and Medicine誌に掲載された、
運動後の血圧低下という生理現象と、
口内細菌とに関連があるのでは、
という面白い発想の研究についての論文です。

運動をするとその時は脈拍が増加して、
心臓から拍出される血液量も増え、
それにより血圧は上昇します。
その一方で、同時に血管は拡張し、
そのため運動をした後には、
脈拍が低下する一方で血管の拡張はしばらく持続するので、
今度は血圧が低下することになります。

この血圧の低下は、
血管の内皮細胞で産生される一酸化窒素が、
その原因であると考えられてきました。
しかし、最近の研究では血液中での一酸化窒素の産生を、
ブロックするような薬を注射しても、
運動による血管拡張作用は抑制されない、
というような結果も報告されています。

もしこれが本当であるとすると、
運動後の血管拡張には、
これまでとは別個のメカニズムが存在している、
という可能性が考えられます。

それはどのようなメカニズムでしょうか?

最近の研究によると、
血液中の一酸化窒素の25%は、
口の中で常在の細菌により産生される、
という報告があります。

それは事実でしょうか?

今回の研究はそれを検証する目的で行われたもので、
23名の健康なボランティアをくじ引きで2つの群に分けると、
一方は殺菌作用のあるクロルヘキシジンを含むうがい液で、
口の中をゆすぎ、
もう一方は殺菌作用はないうがい液で同じように口をゆすいで、
その後に同じ運動を行って、
その後の一酸化窒素の産生能と血圧の低下率を測定しました。

その結果、
口の中を殺菌してから運動を行うと、
殺菌しない場合と比較して、
運動中の一酸化窒素の産生能が低下し、
血圧の低下も有意に抑制されていました。

つまり、運動による一酸化窒素の産生と血圧低下は、
口の中の細菌が関連している現象だ、
ということになります。

実は口の中の細菌は、
身体の環境の維持に、
大きな役割を果たしているのかも知れません。

面白いですね。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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食物繊維とヨーグルトの肺癌予防効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ヨーグルトの肺癌予防効果.jpg
2019年のJAMA Oncology誌に掲載された、
食生活と肺癌のリスクとの関連についての論文です。

食事習慣と癌との関連については、
色々な報告がありますが、
最近とみにい注目されているのが腸内細菌叢のバランスと、
癌予防効果との関連です。

食物繊維は便通を良くする効果ばかりではなく、
腸内細菌のバランスを調節するような働きがあり、
ヨーグルトの乳酸菌にも、
腸内細菌のバランスを改善するような作用があるとされています。

今回の研究は、
世界各地のトータルで1445850名という、
10の疫学研究のデータを集積して、
肺癌の発症リスクと食物繊維、およびヨーグルトの摂取との、
関連を検証したものです。

その結果、
食物繊維の摂取量を5分割して検証すると、
最も少ない群と比較して多い群では、
肺癌の発症リスクが17%(95%CI:0.76から0.91)有意に低下していて、
ヨーグルトを食べる習慣のない群と比較して、
多く摂る群では、
肺癌の発症リスクが19%(95%CI:0.76から0.87)、
こちらも有意に低下していました。

更に食物繊維が最も多く、ヨーグルトも多く摂っているグループは、
どちらも最も少ないグループと比較して、
肺癌リスクの低下が33%(95%CI: 0.61から0.73)と、
より低下幅が大きくなっていて、
食物繊維とヨーグルトの摂取の相乗効果が示唆されました。

こうしたデータはこれまでにも多く存在していて、
結果もそれぞれ違っているので、
何とも言えないところがありますが、
今回の疫学データはこれまででも最も大規模なもので、
今後腸内細菌叢と癌リスクとの関連は、
今まで以上に注目されることになりそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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非アルコール性脂肪肝炎の新薬の効果(レスメチロム) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
NASHの新薬の臨床試験.jpg
2019年のLancet誌に掲載された、
非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の新薬の、
第2相臨床試験の効果についての報告です。

非アルコール性脂肪肝炎というのは、
アルコール性の肝障害と非常に似通った病態が、
お酒を飲まない人にも生じるというもので、
従来の脂肪肝という概念とは異なり、
進行性で肝硬変に移行することも稀ではないのが特徴です。

その病態は内臓肥満やメタボと関連が深く、
高血圧や糖尿病、高脂血症などと高率に合併し、
インスリンの効きが悪くなってインスリンの濃度が高くなる、
インスリン抵抗性がその土台にあると考えられています。

非アルコール性脂肪肝炎というのは、
メタボの内臓に与える影響の1つの現れで、
単独でも肝硬変などの命に関わる病気に繋がる一方、
他の動脈硬化性疾患や糖尿病など、
メタボに関連する病気とも、
密接に結びついているのです。

さて、現時点で減量や運動療法などの生活改善以外に、
特効薬のような治療薬のない非アルコール性脂肪肝炎ですが、
ビタミンEやインスリン抵抗性改善剤であるピグリタゾンなどが、
一定の有効性があるという報告があります。
ただ、その効果は限定的で、
たとえばアメリカのFDAが、
現時点でその有効性を認めている治療薬はありません。

以前FGF19という一種の増殖因子の誘導体の新薬の効果を、
ご紹介したことがありましたが、
今回ご紹介するのはそれとは別個の、
レスメチロム(Resmetirom)という薬です。

この薬は甲状腺ホルモンのβ受容体の刺激剤です。
甲状腺ホルモンが細胞で働く時の、
受容体は窓口のようなものですが、
この受容体にはαとβの2種類があり、
それぞれの組織で少しずつその働きも違います。

肝臓の細胞においては、
甲状腺ホルモンのβ受容体が多く発現していて、
その代謝に深く関連していて、
その発現が非アルコール性脂肪肝炎においては低下している、
という報告があります。

そこでその刺激剤に脂肪肝炎の改善効果があるのでは、
と推測されたのです。

そこで今回の臨床試験においてはアメリカの複数施設において、
肝生検にて非アルコール性脂肪肝炎と診断された、
84名の患者さんをくじ引きで2つの群に分けると、
一方はレスメチロムを1日80ミリグラム使用し、
もう一方は偽薬を使用して、
36週間の経過観察を行っています。

その結果、偽薬と比較してレスメチロム群では、
血液のトランスアミナーゼは有意に低下し、
肝臓内の脂肪含量にも有意な低下が認められました。
有害事象は下痢や吐き気が認められました。

この薬の有効性は、
まだ今後の臨床試験の進捗をみないと、
何とも言えないところがありますが、
甲状腺ホルモンの末梢の代謝を改善するという、
そのメカニズムは非常に興味深く、
他の疾患にも応用出来る可能性も秘めているように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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アメリカ医師会の大腸癌スクリーニングガイドライン [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
アメリカの大腸癌スクリーニング.jpg
2019年のAnnals of Internal Medicine誌に掲載された、
アメリカの大腸癌スクリーニングの基準についての論文です。

大腸癌検診としては、
便潜血検査と大腸内視鏡検査の有効性が、
世界的に認められています。

ただ、そうした検査をどのような組み合わせで行い、
どのような年齢層を対象として、
どのような間隔で行うのが適切か、
というような点については、
国や地域、推奨する組織においても、
それぞれ異なっているのが実際です。

今回のガイドラインはアメリカ医師会(the American College of Physicians)
によるものですが、
アメリカの大腸癌スクリーニングについての、
標準的な考え方を示しているものです。

これによると、
大腸癌のスクリーニングは、
平均的なリスクの成人では、
年齢は50から75歳を対象とし、
便潜血検査を2年毎に、
大腸内視鏡検査(S状結腸鏡を含む)を10年毎に、
施行することが適切であるとされています。

大腸癌の家族歴があったり、
長期の炎症性腸疾患に罹患していたり、
家族性腺腫性ポリープがあるようなケースは、
高リスクと考え別個のスクリーニングの基準を適応する、
となっています。

日本においては、
年齢はより広く適応し、
検査の間隔もより短くする傾向がありますが、
それはトータルに見て、
スクリーニングの有益性を低下させ、
過剰診断や過剰検査に結び付き易いという点は、
押さえておく必要があると思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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降圧剤の国際的効果比較 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

昨日から色々あって夜の更新になりました。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
降圧剤の第一選択薬は?.jpg
2019年のLancet誌に掲載された、
降圧剤の第一選択薬についての論文です。

アメリカの現行のガイドラインにおいては、
高血圧の薬物治療の第一選択薬は、
サイアザイド系利尿剤、ACE阻害剤、アルドステロン受容体拮抗薬、
そしてカルシウム拮抗薬のいずれかで、
そこに特に順番はもうけられていません。
ヨーロッパの主要なガイドラインにおいては、
そこにβ遮断剤が追加されています。

それでは、実際にこれらの薬の中で、
どの薬が最も患者さんへの有効性が高いのでしょうか?

今回の検証は、
世界規模で健康保険や医療データベースのデータを集積し、
トータルで490万人という大規模な高血圧患者のデータから、
急性心筋梗塞、心不全、脳卒中の予防効果に絞って、
その有効性を比較検証したものです。

その結果、
現在最も広く使用されている降圧剤は、
ACE阻害剤でしたが、
病気の予防効果において最も優れていたのは、
サイアザイド系の利尿剤でした。

副作用などの安全性においても、
利尿剤は脱水や高尿酸血症など、
有害事象が多いと考えられがちですが、
今回の大規模データにおいては、
最も安全性に優れていたのも利尿剤でした。

どうしても臨床医は、
より新しい薬を第一選択にしてしまいがちですが、
その使用法には検証が必要であるものの、
降圧剤として最も優れているのは、
利尿剤であるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。


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