SSブログ

「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で、
午前午後とも中村医師が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ワンスアッポンアタイム.jpg
レオナルド・ディカプリオとブラッド・ピットがダブル主演を務めた、
クェンティン・タランティーノ監督の新作映画が、
今ロードショー公開されています。
その公開初日に足を運びました。

これは1969年のハリウッドを舞台にして、
ディカプリオ演じる落ち目のアクションスターと、
そのスタントマン役のブラッド・ピットの関係を軸に、
その時代のハリウッドの雰囲気をノスタルジックに描き、
そこに実際に起こったシャロン・テート惨殺事件を絡めた作品です。

タランティーノ監督としては原点回帰というのか、
かつての「パルプ・フィクション」に近い感覚の映画です。
ストーリーよりもこだわりのあるディテールや語り口が面白く、
緩急自在、真面目に見ていると、
「これ冗談でした」みたいに梯子を外されるような感じもあります。

今回の作品も、
今の映画のスピード感で編集すれば、
1時間半くらいで終わってしまうようなストーリーです。
それをわざわざ引き延ばして、
2時間40分にしてしまうのです。

そこが、いいじゃない、と感じるか、
ダラダラして詰まらん、騙された、
と感じるかは見る人によって分かれるところです。

宣伝の著名人の感想で、
「ラストに涙が出た」とか、
「ラスト13分の衝撃は映画史に残る」みたいなのがあるのですが、
それはちょっと言い過ぎではないかしら。
一般の人が泣けるようなラストではないですし、
面白いし愛すべき作品ではあると思いますが、
映画史に残るようなラストではないよね。
こんなことを言ってしまって、
後々恥ずかしくなることはないのかしら、と、
他人ごとながら心配してしまいます。

個人的なラストの感想は、
まあ「肩すかし」というか「拍子抜け」という感じです。

ただ、タランティーノ監督の、
これは1つの特質でもあると思うので、
お好きな方にとってはこれでいいのだと思います。

僕はラストはもう少し盛り上げて欲しいな、
それで2時間以上も伏線を張ってもったいぶっているんだから、
というようにはちょっと思ってしまう方です。
あの事件の段取りはあれでもいいと思うんですよね。
変化球は監督の持ち味だし。
でも、それでそのまま終わってしまうのはさすがになあ、
というようには思ってしまいました。
もう一押しはあって然るべきですよね。
物足りなくてお腹が余計空いてしまう、
という感じです。

ただ、ディテールはさすがと言うか、
本当に1969年に撮ったとしか思えないような、
画面の質感が素晴らしいですし、
車がハイウェイを疾走する感じもいいよね。
シャロン・テートが、
自分の出演している「サイレンサー破壊部隊」を、
ぶらりと訪れた映画館で見るところとか、
さりげないけれど楽しいですよね。
僕はこの映画はテレビで何度か見ているので、
本物の映像にシャロン・テートの部分のみマーゴット・ロビーをはめ込む、
細かい技巧も楽しめました。
ブルース・リーが指導したキャットファイトの場面とか、
監督のオタク趣味全開ですね。

シャロン・テートは抜群の美女ですが、
出演作には恵まれていなくて、
「サイレンサー破壊部隊」は、
007のパクリのB級スパイ映画ですが、
彼女はそこで主人公を助けるコメディエンヌとして、
結構印象に残る活躍をしています。
従って、ある意味この映画はシャロン・テートの代表作で、
こんな他愛のない映画が代表作であるという辺りに、
彼女の存在の切なさがあるのですが、
その辺りをタランティーノはさすがに巧みに掬い取っています。
映画館の前の本屋で「テス」の初版本を買うのですが、
これは当時ポランスキーが映画化をもくろんでいて、
その主役がシャロン・テートになる可能性があったのですよね。
結果的には別の主役でずっと後になって映画化されるのですが、
ここにも切なさが表れています。
ただ、こうした伏線を張っているのにラストがあれじゃな、
とどうしてもそう思ってしまいますね。
ブルース・リーの仰々しい登場も、
その扱いは神格化されている方にとっては、
違和感のあるものかもしれませんが、
僕は嫌いではない、という程度なので、
楽しんで観ることが出来ました。

また、2大スターの共演というのが、
単なる顔見世ではなくて、
がっちり4つに組んでの熱演なので、
その点も好感が持てました。

そんな訳でタランティーノ監督のファンであれば、
懐かしく楽しめる作品に仕上がっていたと思います。
ファンでない方にはきつい部分があります。
また、監督の最高傑作という評もあるのですが、
個人的には賛成はしません。
「パルプ・フィクション」の方が、
矢張りいいのじゃないかな。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(3)  コメント(0)