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猛暑に扇風機は有効なのか? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。

少し和らいだもののまだ暑い日が続いています。

最近の猛暑はこれまでとは確実に次元の違うもので、
エアコンの使用は必須と言って良いのですが、
エアコンが嫌いという方もご高齢の方では多く、
そうした場合に活躍するのが扇風機です。

扇風機の活用は熱中症の予防に有効でしょうか?

これはまだ解決されていない問題です。

扇風機で身体に風を吹き付けることは、
発汗を促しその汗の気化も促進するので、
その意味では体温を下げるために有効であると思われます。
その一方で体温を大きく上回るような温風を、
身体に当てることは、
むしろ体温を上昇させることに繋がる、
というようにも思われます。

温度以外に問題となるのは湿度の影響で、
湿度が高くなると汗の気化は起こりにくくなるので、
それだけ体温は上昇しやすくなります。

それでは、42度というような高温の環境において、
扇風機は有効でしょうか、それとも無効なのでしょうか?

この問題を検証したレターが、
2015年のJAMA誌に掲載されています。
それがこちらです。
扇風機の猛暑での有効性若者.jpg
この研究では年齢が中間値で23歳の健康な男性8名を対象に、
温度が36℃と42℃の環境下で、
扇風機を使用した場合としない場合とで、
部屋の湿度を上昇させて、
どの湿度を超えると体内温度や心拍数が上がるのかを検証しています。

その結果、
42℃の環境下においても、
扇風機を使用することで、
深部体温や心拍数の増加は、
より高い湿度にシフトして認められました。

つまり、42℃という体温より高い環境でも、
扇風機を使用することにより、
熱中症に抵抗性になるということを意味しています。

猛暑においても扇風機には一定の有効性が認められたのです。

しかし、これは若い男性のみのデータです。

熱中症になりやすい高齢者においても、
扇風機には同様の効果が期待出来るのでしょうか?

2016年の同じJAMA誌に、
それについてのレターが掲載されています。
それがこちらです。
扇風機の猛暑での有効性高齢者.jpg
こちらは60歳から80歳の9名の男女を対象として、
42℃の環境下で湿度を上昇させたところ、
扇風機を使用することにより、
使用しない場合よりも深部体温も脈拍数も、
より低い湿度から上昇していました。

つまり、発汗量の少ない高齢者では、
42℃という高温において、
扇風機の使用はむしろの熱中症のリスクを上げ、
その予防には逆効果である可能性が高いと考えられます。

扇風機の体温より高い気温の猛暑における有効性は、
発汗量が多く代謝の活発な若者では一定レベルはあるのですが、
高齢者では逆効果なる可能性が高く、
ケースバイケースでその使用は慎重に行う必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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